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参天製薬のニュース
*14:04JST 坪田ラボ Research Memo(4):近視進行抑制デバイスは2026年春に臨床試験の結果を発表予定(1)
■坪田ラボ<4890>のパイプラインの動向
1. 医療機器・医薬品
医療機器・医薬品の開発パイプラインについては現在、近視、ドライアイ、脳疾患領域を中心に11本(医療機器7本、医薬品4本)の開発が進んでいる。
(1) TLG-001
開発パイプラインの中で最も注目されているのが近視進行抑制デバイス(TLG-001)である。メガネにバイオレット光の光源を装着し、能動的に1日3時間程度、眼にバイオレット光を照射することで網膜内層にある非視覚型光受容タンパク質「OPN5」を活性化し、血流改善によって脈絡膜厚を維持することで、近視進行を抑制する。
過去に近視の小児を対象に実施した探索的臨床試験(6ヶ月間)で安全性が確認されたほか、有効性についても6ヶ月後の検査において眼軸長の進展が対照群と比較して39.8%抑制されたほか、調節麻痺下他覚的・自覚的屈折変化量においても対照群と比べて79.9%抑制されるなど良好な結果を得たことから、2022年6月より検証的臨床試験を開始した。試験方法は、弱度近視(-1.5D~-3.0D)を有する6~12歳を対象に160人を被験機器群と対照機器群に均等に割り付け、それぞれ12ヶ月間毎日装用する。その後12ヶ月間は機器を装用せずに経過観察を行い、2年間で合計9回の検査を行う。主要評価項目は、治験機器装用開始から12ヶ月時点における調節麻痺下他覚的屈折値の変化量を測定し、対照機器群と比較する。また副次的評価項目として、治験機器装用開始1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月のそれぞれの時点における眼軸長や脈絡膜厚の変化量なども調べる。同社では探索的臨床試験において6ヶ月間の短期間で統計学的有意差を確認できたこと、近視は時間の経過とともに進行する傾向にあることから、今回の臨床試験ではさらに良質な結果が得られるものと考えているようだ。
2023年10月に被験者の組み入れが完了し、2025年10月に経過観察が終了する。順調に進めば2026年春にも臨床試験の結果を発表できる見通しで、良好な結果を得られれば開発パートナーであるジンズホールディングスが医療機器としての製造販売承認申請を行い、2027年内にも国内で販売を開始できる可能性がある。小児の近視率上昇は社会問題化しており、近視が極度に進むと将来的に眼疾患リスクが高まるという統計データもあるだけに、販売を開始し近視進行の抑制につながれば、国内外で普及していくものと期待される。近視保有者の人口割合は2050年に世界で50%まで上昇するとの予測もあり(2010年は28%)、社会的意義の大きい事業と言える。
なお、2022年11月にアメリカ大陸を対象とした独占実施許諾契約を締結していたTwenty Twenty Therapeuticsが清算の準備を進めていることが判明しており、清算後はアメリカ大陸の事業化権利が同社に戻ることになっている。また、2021年9月に中国や韓国、タイ、フィリピンなどアジア主要国を対象とした独占販売実施許諾契約の締結に向けて基本合意していた参天製薬<4536>とも、相手先の戦略変更により2024年2月に解消されているため、同社はTLG-001の海外でのライセンス交渉を積極的に進めていく予定にしている。特に、中国では近視保有率が日本や韓国並みに高く、政府も近視人口の抑制を目標として掲げていることから研究開発が活発に行われている。同社の技術に関心を示す企業も多く、坪田社長が中国眼科学会で招待講演者として講演するなど、2024年3月期は計4回中国に出張し、今後の事業展開に向けて人的ネットワークを構築した。
中国での成長ポテンシャルは極めて大きく、2024年7月には中国における眼科医療の中心都市である浙江省温州市のEye Valley※に日本企業として初めてオフィスを開設。(当面は現地に常駐社員を配置せず、日本からの出張拠点とする)現地での情報収集を進めていくほか、現地企業との研究や臨床体制の関係構築も視野に入れた取り組みが今後も進むものと予想される。併せて中国眼科領域でトップレベルのアカデミアである温州医科大学眼科の招へいにより、坪田氏が同大学眼科客員教授として就任したことを発表した。今後それぞれの知見を融合することで、近視研究のさらなる発展に寄与していくものと期待される。
※2020年6月にオープンした世界初の目の健康科学、技術、人材、産業の複合施設。世界的な先進的リソースを結集して、目の健康産業の包括的な発展を促進し、技術研究開発、産業育成、学術交流、ハイエンドの医療サービス、イノベーション人材の集まりのための世界クラスのハブを構築している。現在、200社弱の企業が進出し、研究所も32社が展開している。
(2) TLM-003、TLM-007
近視抑制へのアプローチとして医薬品の開発も2本進めている。そのうちの1つであるTLM-003は、1日1~2回の点眼によって近視の進行を予防する点眼薬となる。近視は強膜※1小胞体ストレス※2がその発症・進行機序の1つと考えられており、小胞体ストレスの活性化により強膜が菲薄化することで眼軸長が伸長しやすくなり近視が進行する。このため小胞体ストレスの活性化抑制作用を持つ4-PBA(4-フェニル酪酸)を点眼投与することで近視進行が抑制できると見ている。既に近視モデルのマウスによる実験では近視進行抑制効果が証明されている。2020年10月にロート製薬と共同研究契約を締結し基礎研究を進めてきたが、2023年11月よりロート製薬にて第1相臨床試験を開始。2024年11月の終了を予定している。安全性が確認されれば第2相臨床試験に進むことになる。なお、4-PBAは経口剤として小児の腎疾患等に適用されているが、点眼薬としては初めての開発であり、用法特許も取得済みとなっている。
※1 眼球の外側の白色の被膜部分。
※2 小胞体は細胞内にある袋状の構造の小器官で、細胞内の物質輸送の働きをする。何らかの理由で小胞体内腔に正しく折り畳みがなされなかったタンパク質や正常な修飾を受けていないタンパク質が過剰に蓄積する状況を小胞体ストレスと呼ぶ。
また、海外市場では2022年12月にLaboratoires Thea※1と、欧米を中心とした地域において知的財産権の独占的実施許諾契約を締結※2しており、欧州で臨床試験の準備を進めている。また、中国企業からの関心も高いようで、海外におけるライセンス活動を引き続き進めていく。
※1 眼科領域における欧州の大手独立系製薬企業グループ。従業員数は1,600人以上で、世界75カ国で製品が販売されている。
※2 契約一時金とマイルストーン合計で41.5百万EUR+ロイヤリティ。
TLM-007は、血流増大効果がある緑内障の点眼薬「ブナゾシン0.01%」を適用拡大したもので、2024年2月から特定臨床研究を実施している。近視を有する6~15歳を対象とした21名の被験者数を、「ブナゾシン0.01%」「アトロピン0.025%」「アトロピン0.025%及びブナゾシン0.01%併用」の3群に割り付け(1日2回点眼)、近視進行抑制効果及び安全性を確認する試験となる。既に組み入れは完了しており、投薬開始から4週後、8週後、12週後及び24週後に観察、検査を行う。2024年12月に試験は終了見込みで、2025年の前半には結果が判明する見通しだ。ブナゾシン、アトロピンともに参天製薬が開発元であり、アトロピンについては2024年2月に近視進行抑制点眼剤として国内で販売承認申請を行っている。ブナゾシン単独もしくはブナゾシン及びアトロピンの併用でアトロピン単独の薬効を上回る結果が出れば、検証的臨床試験に進むものと予想されるが、その際にはパートナー契約も進める予定だ。用法特許は取得済みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 医療機器・医薬品
医療機器・医薬品の開発パイプラインについては現在、近視、ドライアイ、脳疾患領域を中心に11本(医療機器7本、医薬品4本)の開発が進んでいる。
(1) TLG-001
開発パイプラインの中で最も注目されているのが近視進行抑制デバイス(TLG-001)である。メガネにバイオレット光の光源を装着し、能動的に1日3時間程度、眼にバイオレット光を照射することで網膜内層にある非視覚型光受容タンパク質「OPN5」を活性化し、血流改善によって脈絡膜厚を維持することで、近視進行を抑制する。
過去に近視の小児を対象に実施した探索的臨床試験(6ヶ月間)で安全性が確認されたほか、有効性についても6ヶ月後の検査において眼軸長の進展が対照群と比較して39.8%抑制されたほか、調節麻痺下他覚的・自覚的屈折変化量においても対照群と比べて79.9%抑制されるなど良好な結果を得たことから、2022年6月より検証的臨床試験を開始した。試験方法は、弱度近視(-1.5D~-3.0D)を有する6~12歳を対象に160人を被験機器群と対照機器群に均等に割り付け、それぞれ12ヶ月間毎日装用する。その後12ヶ月間は機器を装用せずに経過観察を行い、2年間で合計9回の検査を行う。主要評価項目は、治験機器装用開始から12ヶ月時点における調節麻痺下他覚的屈折値の変化量を測定し、対照機器群と比較する。また副次的評価項目として、治験機器装用開始1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月のそれぞれの時点における眼軸長や脈絡膜厚の変化量なども調べる。同社では探索的臨床試験において6ヶ月間の短期間で統計学的有意差を確認できたこと、近視は時間の経過とともに進行する傾向にあることから、今回の臨床試験ではさらに良質な結果が得られるものと考えているようだ。
2023年10月に被験者の組み入れが完了し、2025年10月に経過観察が終了する。順調に進めば2026年春にも臨床試験の結果を発表できる見通しで、良好な結果を得られれば開発パートナーであるジンズホールディングスが医療機器としての製造販売承認申請を行い、2027年内にも国内で販売を開始できる可能性がある。小児の近視率上昇は社会問題化しており、近視が極度に進むと将来的に眼疾患リスクが高まるという統計データもあるだけに、販売を開始し近視進行の抑制につながれば、国内外で普及していくものと期待される。近視保有者の人口割合は2050年に世界で50%まで上昇するとの予測もあり(2010年は28%)、社会的意義の大きい事業と言える。
なお、2022年11月にアメリカ大陸を対象とした独占実施許諾契約を締結していたTwenty Twenty Therapeuticsが清算の準備を進めていることが判明しており、清算後はアメリカ大陸の事業化権利が同社に戻ることになっている。また、2021年9月に中国や韓国、タイ、フィリピンなどアジア主要国を対象とした独占販売実施許諾契約の締結に向けて基本合意していた参天製薬<4536>とも、相手先の戦略変更により2024年2月に解消されているため、同社はTLG-001の海外でのライセンス交渉を積極的に進めていく予定にしている。特に、中国では近視保有率が日本や韓国並みに高く、政府も近視人口の抑制を目標として掲げていることから研究開発が活発に行われている。同社の技術に関心を示す企業も多く、坪田社長が中国眼科学会で招待講演者として講演するなど、2024年3月期は計4回中国に出張し、今後の事業展開に向けて人的ネットワークを構築した。
中国での成長ポテンシャルは極めて大きく、2024年7月には中国における眼科医療の中心都市である浙江省温州市のEye Valley※に日本企業として初めてオフィスを開設。(当面は現地に常駐社員を配置せず、日本からの出張拠点とする)現地での情報収集を進めていくほか、現地企業との研究や臨床体制の関係構築も視野に入れた取り組みが今後も進むものと予想される。併せて中国眼科領域でトップレベルのアカデミアである温州医科大学眼科の招へいにより、坪田氏が同大学眼科客員教授として就任したことを発表した。今後それぞれの知見を融合することで、近視研究のさらなる発展に寄与していくものと期待される。
※2020年6月にオープンした世界初の目の健康科学、技術、人材、産業の複合施設。世界的な先進的リソースを結集して、目の健康産業の包括的な発展を促進し、技術研究開発、産業育成、学術交流、ハイエンドの医療サービス、イノベーション人材の集まりのための世界クラスのハブを構築している。現在、200社弱の企業が進出し、研究所も32社が展開している。
(2) TLM-003、TLM-007
近視抑制へのアプローチとして医薬品の開発も2本進めている。そのうちの1つであるTLM-003は、1日1~2回の点眼によって近視の進行を予防する点眼薬となる。近視は強膜※1小胞体ストレス※2がその発症・進行機序の1つと考えられており、小胞体ストレスの活性化により強膜が菲薄化することで眼軸長が伸長しやすくなり近視が進行する。このため小胞体ストレスの活性化抑制作用を持つ4-PBA(4-フェニル酪酸)を点眼投与することで近視進行が抑制できると見ている。既に近視モデルのマウスによる実験では近視進行抑制効果が証明されている。2020年10月にロート製薬と共同研究契約を締結し基礎研究を進めてきたが、2023年11月よりロート製薬にて第1相臨床試験を開始。2024年11月の終了を予定している。安全性が確認されれば第2相臨床試験に進むことになる。なお、4-PBAは経口剤として小児の腎疾患等に適用されているが、点眼薬としては初めての開発であり、用法特許も取得済みとなっている。
※1 眼球の外側の白色の被膜部分。
※2 小胞体は細胞内にある袋状の構造の小器官で、細胞内の物質輸送の働きをする。何らかの理由で小胞体内腔に正しく折り畳みがなされなかったタンパク質や正常な修飾を受けていないタンパク質が過剰に蓄積する状況を小胞体ストレスと呼ぶ。
また、海外市場では2022年12月にLaboratoires Thea※1と、欧米を中心とした地域において知的財産権の独占的実施許諾契約を締結※2しており、欧州で臨床試験の準備を進めている。また、中国企業からの関心も高いようで、海外におけるライセンス活動を引き続き進めていく。
※1 眼科領域における欧州の大手独立系製薬企業グループ。従業員数は1,600人以上で、世界75カ国で製品が販売されている。
※2 契約一時金とマイルストーン合計で41.5百万EUR+ロイヤリティ。
TLM-007は、血流増大効果がある緑内障の点眼薬「ブナゾシン0.01%」を適用拡大したもので、2024年2月から特定臨床研究を実施している。近視を有する6~15歳を対象とした21名の被験者数を、「ブナゾシン0.01%」「アトロピン0.025%」「アトロピン0.025%及びブナゾシン0.01%併用」の3群に割り付け(1日2回点眼)、近視進行抑制効果及び安全性を確認する試験となる。既に組み入れは完了しており、投薬開始から4週後、8週後、12週後及び24週後に観察、検査を行う。2024年12月に試験は終了見込みで、2025年の前半には結果が判明する見通しだ。ブナゾシン、アトロピンともに参天製薬が開発元であり、アトロピンについては2024年2月に近視進行抑制点眼剤として国内で販売承認申請を行っている。ブナゾシン単独もしくはブナゾシン及びアトロピンの併用でアトロピン単独の薬効を上回る結果が出れば、検証的臨床試験に進むものと予想されるが、その際にはパートナー契約も進める予定だ。用法特許は取得済みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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