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―出生率1.20と過去最低更新で注目度アップ、女性の働き方改革に貢献―
厚生労働省は6月5日、2023年の「人口動態統計」を発表した。それによると、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は22年に比べて0.06ポイント低下し1.20となり、1947年に統計を取り始めて以降の最低を更新した。
出生率の低下は、未婚化や晩婚化をはじめさまざまな要因が影響している。これに対し、政府も「異次元の対策」として児童手当の拡充などに取り組んでいるが、効果のほどについては懐疑的な見方が強い。そうしたなか、 少子化対策の一環として「妊活」への関心が高まっており、関連銘柄に注目したい。
●出生率1.20で過去最低を更新
90年のいわゆる「1.57ショック」を契機に、政府は少子化対策に力を入れ始めた。「1.57ショック」とは、同年に公表された89年の合計特殊出生率が1.57と、「丙午(ひのえうま)」という特殊要因により1.58と過去最低を記録した66年を下回ったことから言われるようになった言葉で、これを契機に政府は、出生率の低下と子どもの数が減少傾向にあることを強く認識するようになったとされる。
94年には最初の総合的な少子化対策となる「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」(エンゼルプラン)が策定され、その後もさまざまな対策が打ち出されたが、出生率の低下傾向は続き、23年の出生率は1.20と8年連続で前の年を下回り過去最低を記録。特に最も低かった東京都では0.99と初めて1を下回り、出生率の低下のニュースに慣れてしまった人々の間でも衝撃をもって受け止められた。
前述のように、出生率の低下の要因は一つではなく、若者の結婚や出産に関する考え方の変化、育児や家事に対する女性の負担が大きいことや育児に対する経済的負担が大きいことなどが挙げられている。そのため、対策も多岐にわたる必要がある。
●児童手当の拡充などを打ち出すが
現在、少子化対策として政府が力を入れているのが、児童手当の拡充だ。奇しくも「出生率1.20」が発表されたのと同じ6月5日には、岸田文雄政権が今国会の目玉政策と位置づけていた改正子ども・子育て支援法などが参議院本会議で可決、成立した。同法では児童手当の支給対象を高校生年代まで延長し、所得制限を撤廃。また第3子以降の支給額は月3万円に倍増するなど経済的支援を手厚くする。
ただ、これらは従来型の対策の延長線上にあり、これまでの対策が出生率の引き上げなどに成果を上げてこなかったことを考えると、その効果には疑問が持たれている。このほか、少子化対策として親の就労の有無など保育の必要性の認定にかかわらず子どもを預けられる「こども誰でも通園制度」を26年4月から全国で開始するとしたが、こちらも同様に従来型対策の延長線上で効果のほどは薄いとの見方が一般的だ。
●フェムテックへの関心高まる
こうした状況下において、注目され始めているのが、フェムテックの活用により少子化対策推進の一環として注目される女性の働き方改革を促そうという動きだ。
「フェムテック」とは、「Female」(女性)と「Technology」(技術)を掛け合わせた造語で、女性の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのこと。女性のライフステージに沿った健康課題分野に応じて、月経、妊娠・不妊、産後ケア、更年期などいくつかの分野があり、近年では株式市場でも注目されているが、ここでは妊娠・不妊分野を中心にフェムテック企業に注目したい。
不妊治療については、少子化社会対策基本法において、「国及び地方公共団体は、不妊治療を望む者に対し良質かつ適切な保健医療サービスが提供されるよう、不妊治療に係る情報の提供、不妊相談、不妊治療に係る研究に対する助成等必要な施策を講ずるものとする」としており、少子化対策の重要な柱の一つとなっている。22年4月からは、それまで自費診療だった人工受精などの「一般不妊治療」や、体外受精・顕微授精などの「生殖補助医療」について保険適用にしており、その周辺市場である「フェムテック」関連市場も活発化している。
●アプリなどを展開する企業に注目
インタースペース <2122> [東証S]は、子会社4MEEEがヘルスケアアプリ「4MOON(フォームーン)」を展開している。「4MOON」は生理日管理から妊活、妊娠、更年期、その後まで生涯利用できるアプリで、ライフステージに合わせて、記録する項目や機能を自由にカスタマイズして、自分専用のヘルスケアアプリとして利用できるのが特徴。ダイエットの記録や日記などの機能も備えている。また、同アプリではフェムケア(女性の健康に関する製品・サービス全般)とのコラボレーション製品も展開している。
カラダノート <4014> [東証G]は、さまざまなライフイベントに合わせたアプリなどを展開しており、妊娠中の不安解消や軽減につながるアプリ「ママびより」、陣痛間隔計測アプリでシェアトップクラスの「陣痛きたかも」、入院準備や産後の育児に必要なグッズがわかる「出産・育児じゅんびリスト」などを展開。また、子育て中の授乳や睡眠、おしっこウンチなどを記録する「授乳ノート」、子どもの成長に合った食材を確認・記録できる「ステップ離乳食」なども運営している。
メドレー <4480> [東証P]は今年2月、エイチーム <3662> [東証P]子会社のエイチームウェルネスから「ラルーン」事業を承継し、女性向け生理予測・体調管理アプリ国内大手の「Lalune(ラルーン)」の運営を開始した。同アプリでは、体調の記録と管理ができるツールだけではなく、生理の周期や妊活に関する情報提供、ユーザー同士の交流ができるコンテンツなどの機能も充実しているのが特徴で、シナジー創出によるオンライン診療アプリなどのユーザー層拡大効果なども期待されている。
ベビーカレンダー <7363> [東証G]は妊娠・出産・育児の情報サイト「ベビーカレンダー」を中心に、女性のライフステージに合わせたメディアを複数展開し順調にページビュー(PV)数を伸ばしている。また、こうしたメディア事業とは別に、医療法人向け事業として産婦人科向けにさまざまなソリューションを提供している。
ユニ・チャーム <8113> [東証P]は昨年11月、生理ケア用品ブランド「ソフィ」から、独自に開発したバイオテスター技術によっておりもの内の「妊活おしらせ物質」を捉え「妊活タイミング」を知らせる「ソフィ 妊活タイミングをチェックできるおりものシート」を発売した。同社が運営する生理管理アプリ「ソフィ」と連動しており、利用者一人ひとりにフィットした「妊活アドバイス」を通知することもできるという。
エムティーアイ <9438> [東証P]が運営する女性のカラダとココロの健康を管理するアプリ「ルナルナ」は、2000年にサービスを開始したフェムテックの先駆け的サービス。一般ユーザー向けの生理日管理ツールとしてだけではなく、産婦人科や婦人科の受診サポートツールとしてのサービスも提供。更に企業向けにも女性の健康課題改善を目指すプログラムを提供している。同社は「ルナルナ」以外にも、母子手帳アプリ「母子モ」などを展開しており、フェムケア関連事業を幅広く手掛けている。
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