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―出生数の減少ストップ目指し“未来戦略”に注力、内容の充実と迅速な実行がカギ握る―
今年1月に岸田文雄首相が年頭会見で検討を表明し、株式市場でも話題を呼んだ「異次元の少子化対策」。これについては、最近になって「こども未来戦略方針」という形が示された。待ったなしどころか、遅きに失したという指摘すら聞かれるが、これまでにないスピードと大胆さをもって「少子化対策」 は今後進んでいくことが期待される。投資家としてもこの非常に重要な国策テーマにしっかりと着目しておくところだ。
●2022年に出生数が初の80万人割れ
世界中の国において、将来を担うのは「子どもたち」だ。しかし、日本では1947年から49年のいわゆる「ベビーブーム」期に260万人程度だった年間出生数が、その後大きく低下している。1971~74年の「第2次ベビーブーム」期にかけて一時出生数は、回復傾向を見せたものの、その後現在に至るまで基本的には緩やかな減少が続いている。
ちなみに、2022年の出生数は約77万人。日本の重要課題に掲げながら、どこか他人事で「政治」が適切な処置を施すことができないできたのは事実だ。時間だけがいたずらに過ぎるなか、新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態が追い打ちをかけたことで、統計を始めた1899年以降で初の80万人台割れという状況に至っている。
●「こども未来戦略方針」始動へ
そうしたなか、今年1月に岸田首相が年頭会見で検討を表明し、株式市場でも大きな話題となったのが、「異次元の少子化対策」である。同関連に位置付けられる銘柄にも盛んに物色する動きがみられ、重要テーマとして急浮上した。そして、政府は今月13日に「こども未来戦略方針」を決定。同方針の中で、明かされた「3つの基本理念」「加速化プラン」は、以下の通りだ。
3つの基本理念として、(1)若い世代の所得を増やす(2)社会全体の構造・意識を変え、育児負担が女性に集中している実態を変える(3)すべてのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する、と掲げられている。また、加速化プラン(具体的な施策)を一部抜粋すると、(1)児童手当の所得制限を撤廃し、支給期間を高校生年代まで延長(2)「出産・子育て応援交付金」(10万円)の制度化に向けて検討(3)貸与型奨学金の減額返還制度を利用できる年収上限引き上げ(4)授業料などの減免及び給付型奨学金を拡大(5)育休給付率を現行の67%から8割程度に引き上げ(6)育休を支える中小企業への助成措置を大幅強化(7)選択的週休3日制度の普及への取り組み、などが挙げられている。
●少子化傾向を反転できるか否かの瀬戸際に
こうした施策を推進するにあたって、当然重要となるのは予算である。これについては、こども家庭庁に新たな特別会計(こども金庫)を創設すること、徹底した歳出改革を進め、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す方針を示した。なお、加速化プランの予算規模は現時点でおおむね3兆円程度のようだ。
もちろん、この一連の内容に対して、「安定財源の確保に向けた道筋が不透明」「(子育て世代の所得を伸ばすもとになる)成長戦略の具体策が乏しい」などさまざまな批判もある。しかし、岸田首相は会見の中で「若年人口が急減する30年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ」と発言しており、今まで有効打をみせられなかった政治の世界において、これまで以上にこの「少子化」という国勢を左右する問題への責任感が増していることは間違いない。
●国策に乗って商機を捉える6銘柄を抜粋
今後の内容充実と迅速な実行に期待して、投資家としてもこの非常に重要な国策テーマに向き合っていきたいところだ。そこで今回は、「少子化対策」関連の銘柄に注目した。共働きが増えたことで、子育てと両立しやすい仕事選び、企業側の働き方改革、お金の問題などが挙げられるが、これらが解消に向かう過程で商機を捉えそうな銘柄を抜粋した。
◆ステムセル研究所 <7096> [東証G]~再生医療・細胞治療を目的に、「さい帯血」由来の幹細胞の分離・保管事業及び、幹細胞に関連する研究開発に取り組んでいる。へその緒や胎盤の中に含まれている赤ちゃんの血液である「さい帯血」は、低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺、自閉症スペクトラム障害などに対する再生医療において、研究が進められている。また、成人の細胞や不妊治療の分野において、卵子の保管に対するニーズが高まってくることが予想される。
◆あすか製薬ホールディングス <4886> [東証P]~「内科」「産婦人科」「泌尿器科」という3つの事業領域に特化し、ホルモン製剤のパイオニアとして、産婦人科領域に強みを持つ。経口避妊剤、緊急避妊剤や月経にかかわる薬剤をはじめ、排卵誘発剤などの不妊治療薬、子宮筋腫や子宮内膜症の治療薬、妊娠・出産時の管理のための薬剤など、女性の生活の質向上に貢献。
◆ベネフィット・ワン <2412> [東証P]~福利厚生だけではなく社員研修、健康経営、タレントマネジメントなど人事に必要なあらゆるサービスを提供している。企業側の働き方改革が求められるなか、従業員の満足度向上に向けた取り組みとして、健康経営やスキルアップを促進する総合型福利厚生サービスである「ベネフィット・ステーション」の導入企業が増えることが期待される。
◆くふうカンパニー <4376> [東証G]~毎日の暮らしやさまざまなライフイベントにおいて、生活者がより賢く、楽しく意思決定を行うためのサービスを展開。グループ会社において、ウェディング総合情報メディア「みんなのウェディング」や個人向け家計簿サービス「Zaim」、スーパー・ドラッグストアのチラシ掲載の「トクバイ」、子どもの社会体験(ごっこ遊び)ができるアプリ「ごっこランド」などを提供。
◆リクルートホールディングス <6098> [東証P]~小中高生向け学習サービス「スタディサプリ」やブライダル情報を掲載する「ゼクシィ」、ゼクシィから生まれた婚活サービスの「ゼクシィ縁結び」や妊娠・出産・育児期の女性をサポートする「ゼクシィBaby」を運営。また、隙間時間など、自由に働ける仕事が見つかるサービス「エリクラ」も手掛けている。
◆Globee <5575> [東証G]~今月14日に東証グロース市場に上場した。スマートフォン向けアプリ及びウェブ上で利用できるAI英語学習アプリ「abceed」、反転学習プラットフォーム「abceed for school」、AI英語スクール「ABCEED ENGLISH」の企画・開発・運営を手掛けている。政府の対策によってお金の不安が和らぎ、教育への資金が振り向けられるほか、育児との両立から、働きやすい環境を求めるための学び直しの需要を取り込む。
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