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野村総合研究所のニュース
―菅政権の“本気”を映し出す「デジタル庁」新設、スマホ活用やマイナンバー普及に本腰―
直近の株式市場では「スガノミクス」と言われる銘柄が買いのオンパレードとなっている。なかでもひときわ目立つのは「デジタルガバメント 」関連だ。菅新政権で打ち出された方針においては、携帯電話料金の引き下げ、地銀の再編、電子署名による脱ハンコの推進などがキーワードとなっているが、目玉となるのは何と言ってもデジタル庁の設置である。
コロナ禍では4月の第1次補正予算の柱だった国民1人当たり10万円の現金給付に関して遅れや混乱が目立ち、行政システムの「非デジタルな実態」が明らかとなった。こうした現状を改善すべく、政府は行政のデジタル化を推進する「デジタル庁」を創設する方針を打ち出し、そのための法案準備室を立ち上げた。同庁には各省庁にある関連組織を一元化し司令塔機能を持たせるため、首相直轄組織にする新法制定などが検討されている。法案成立・施行となれば官民でデジタル投資が盛り上がり、社会変革にもつながるだけに、デジタルガバメントのもとで活躍する銘柄群に注目する必要がある。
●行政デジタル化の最初の一歩はマイナンバー普及
デジタルガバメントとは、デジタル技術を活用することで行政の効率化や利便性の向上などを図ること。政府全体では行政手続きを年間数億件行っており、これまでも数千億円規模の国費が投入され「電子化」が進められてきた。しかし、いざというときには縦割り行政のなかでシステム全体に責任を持つ者がいないことが露呈した。こうしたなか、政府は「デジタル庁」を設置し、国と自治体のシステムの統一・標準化のほか、マイナンバーカード の普及を図る。加えてスマートフォンによる行政手続きのオンライン化、オンライン診療やデジタル教育の規制緩和を推進する。なかでも、マイナンバーカードの活用を最優先の課題として取り組み、普及に向けた工程表も公表されている。
総務省によると、9月1日現在でマイナンバーカードの交付枚数は約2469万枚で人口に対する普及率が19.4%にとどまっているが、カードを使った新たなポイント還元策や、健康保険証、運転免許証などとして使える制度の導入を通じて、2023年3月末にはほぼ100%の普及率を目指すとしている。これまで政府がマイナンバーカードの具体的な普及目標について掲げてこなかっただけに、今回の政治主導による本格的な取り組みには期待がかかる。
●マイナンバーカード関連でITbookなど注目
マイナンバーカード関連銘柄としてはITbookホールディングス <1447> [東証M]に注目したい。同社は地方公共団体向けに「マイナポイント」の利用促進支援サービスを手掛けるが、11月に発表予定の第2四半期業績にマーケットの関心が高い。同社が8月に発表した第1四半期(4-6月)連結決算は営業損益4億8200万円の赤字(前年同期2億2000万円の赤字)と営業赤字が大幅に拡大し、これを受けて株価はいったん400円台まで売られたが、その後、菅内閣の政策発表を受けて株価は大相場を演じ年初来高値を付けた。仮に第2四半期の決算が悪ければ押し目買いのタイミングとなる。
キャリアリンク <6070> は、業務アウトソーシング案件請負であるBPO事業や人材派遣ビジネスなどを手掛けるが、民間企業だけでなく官公庁向けで強みを持っており、菅首相が打ち出した「デジタル庁」の創設では新たな需要獲得が期待されている。同社は9月25日、官公庁からの大型BPO案件が寄与するとして21年2月期の営業利益を従来予想の5億8500万円から17億9500万円(前期比2.6倍)への大幅な増額修正を発表しポジティブサプライズとなった。政府が普及に力を入れるマイナンバー分野でも定評があり、マイナポイント事業スタートを追い風に新たな受注開拓も視野に入る。ただ、25日移動平均線カイ離との解消を待って仕込みたい。
ほかには銀行・保険などの金融機関向け受託開発案件で強みを持つクロスキャット <2307> や、「特別定額給付金」の給付に関して、自治体業務をRPAにより一部を自動化するサービスの提供を開始したジャパンシステム <9758> [JQ]などが注目される。
●地方自治体に強みを持つ銘柄群は要チェック
デジタルガバメントの根幹となる官公庁のシステム更新に関して、ITベンダーで業界最大手のNTTデータ <9613> は本命銘柄として活躍余地が大きい。このほか主力銘柄では、NEC <6701> や富士通 <6702> 、野村総合研究所 <4307> などが挙げられる。更に、デジタル庁創設にあたって、基幹系システム、内部管理システムなどさまざまな情報システムが更新、構築されることから、自治体向けのデジタル化に強みを持つ銘柄群は要チェック。なかでも特筆されるのが、自治体向け総合行政システムに実績を持つアイネス <9742> だ。同社は自治体及び金融関連向けを主力とするが、保守点検などのアフターサービスも手厚く、案件獲得後は収益機会が継続的に高まる強みを持つ。
スマートバリュー <9417> は7月、自治体における申請手続きのオンライン提出を実現するためのアプリケーションサービスを提供。このサービスは、自社の住民ID基盤サービス「GaaS(Government as a Service)」上で稼働し、各アプリケーションの組み合わせだけでなく、全国で240契約の実績を持つ自治体専用クラウド型CMSである「SMART CMS」との連携を実現しており、今後の展開に期待がかかる。
●サイボウズはキントーンで活躍期待
グループウェアの開発を主力とするサイボウズ <4776> も関連有力株として目が離せない。8月度の月次業績で、売上高が前年同月比16%増の12億6600万円、営業利益は同16%増の3億1000万円となった。同時に発表したクラウド関連事業の8月売上高は前年同月比24%増の10億1700万円に伸び、今期に入り8ヵ月連続の2ケタ増収を達成した。同社が提供するクラウドサービス「kintone(キントーン)」は、プログラミングの知識がなくても、さまざまな業務アプリを開発できることが支持につながっている。大阪府は、キントーンを活用して「新型コロナウイルス対応状況管理システム」を構築し、患者情報の管理伝達の効率化をはかり、現場の負担を解消しつつ、新型コロナウイルス感染症患者への対応を進めた。こうした実績が、今後の官公庁のデジタル化でも生かされる可能性は高い。
株探ニュース
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