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―日本とベトナム両国の関係深化に向け政治も本格始動、日本企業の進出ラッシュに―
2022年10月にエービーシー・マート <2670> [東証P]がホーチミンにベトナム1号店をオープンしたほか、今年5月には森永乳業 <2264> [東証P]が育児用ミルクの販売拡大へ向けて合弁会社を設立。相鉄ホールディングス <9003> [東証P]は7月に直営ホテル「相鉄グランドフレッササイゴン」をホーチミンにオープンし、9月にはマツキヨココカラ&カンパニー <3088> [東証P]がベトナム国内7店舗目となるハノイ1号店を開業している。今回の特集では、足もとで日本とベトナム両政府が関係深化に向けて動き出したことをきっかけとして「ベトナム」関連にスポットライトを当てた。
●急速な経済成長で存在感高まるベトナム
23年の日本の名目GDP(国内総生産)がドイツに抜かれ、世界4位に転落する見通しになったことが各所で報じられたことは記憶に新しい。円安進行が大きな要因であることは間違いない一方、ただの円安要因に過ぎないと片づけられるほど、日本の置かれた状況を楽観視していいものではない。日本が直面している個別の課題は挙げればきりがないが、その背後に大きく横たわっている「若者の将来に対する希望や信頼感の喪失」という部分に手当てを行わなければ、日本を現在進行形で覆い続ける巨大な閉塞感から脱却することは永久にできないかもしれない。
一方、そんな閉塞感に悩まされている日本と異なり、未来へのエネルギーに満ちているのがアジアの国々だ。特に「ベトナム」は、その中でも急速な経済成長と変革を遂げたことで、世界の注目を集めている。1986年から市場経済導入を主とした経済再建政策「ドイモイ」を推進したことが現在の発展の端緒だ。また、2018年頃から本格化したいわゆる「米中対立」によって、中国からベトナムへの企業の拠点シフトが加速したことも発展を後押しし、ハイテク分野でも頭角を現している。
こうした一連の背景もあって、19年まで多少の波はありつつも、概(おおむ)ね前年比6%前後という高いGDP成長率をベトナムは維持してきた。もちろん日本も過去に国家としての成長期を同じように経験しており、経済発展が一巡している日本と現在進行形で発展中のベトナムは段階が異なるため単純比較はできないことはいうまでもない。しかし、人口構造や成長難易度の観点から見ても、日本よりも目先の成長持続が期待されやすいことは紛れもない事実だ。さすがに、ベトナムもコロナ禍で成長率は落ち込んだものの、各種規制から回復した22年は同8%とアジアの中でも高いGDP成長を示した。足もとでは、世界経済の不透明感や電力不足問題などで成長ペースが鈍化すると見られているが、中長期でみた潜在的な成長力の高さを否定することはできないだろう。
●ベトナムとの関係が深化する日本
足もとで日本とベトナムの関係深化の動きが見られることもポイントだ。今月3日にはベトナム・ハノイで、両政府による貿易や投資の拡大に向けた会合が開かれた。西村康稔経済産業大臣は「世界で地政学的な緊張が高まる中で、信頼できるパートナーであるベトナムとサプライチェーンをしっかりと構築していきたい」と述べ、ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工大臣も「双方の2国間貿易の発展などに貢献するように詳細な方向性を議論していきたい」とそれぞれ述べたことが伝わっている。
具体的には、未来を担う産業の創出やサプライチェーンの強靱化に向けたワーキンググループの設置について合意するとともに、インド太平洋経済枠組み(IPEF)などの協力、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じたエネルギートランジションの実現やレアアースの協力などについて議論を行い、両国の取り組みを更に強化していくことを確認している。ベトナムによる日本の水産物の輸入・消費拡大への期待についても言及があったもようだ。
また、ベトナムのボー・バン・トゥオン国家主席夫妻が27~30日の日程で来日する予定で岸田文雄首相との会談も行われる。日越外交関係樹立から今年でちょうど50年が経つが、これを機に友好関係を強め、政治的にも経済的にもベトナムは日本にとって大きな存在となることが期待される。
ベトナムには300を超える工業団地が存在し、既に多くの日系企業が進出している。住友商事 <8053> [東証P]など大手商社はもちろんのこと、トヨタ自動車 <7203> [東証P]、日産自動車 <7201> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]、キヤノン <7751> [東証P]、ヤマハ発動機 <7272> [東証P]、ファナック <6954> [東証P]、キーエンス <6861> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]などの主要企業も当然その中に入っており、業態問わず2000社ほどが進出していると言われている。ベトナム関連に位置付けられる銘柄は今後ますます注目度が高まることが必至であり、今回はその中から株高が有力視される7銘柄を選出した。
●ベトナムでの経営戦略に要注目の7銘柄
◆東ソー <4042> [東証P]~ベトナム南部のホーチミン郊外に、スポーツシューズ、フィットネスウェアなどに使われるポリウレタン原料「MDI」の蒸留分離設備を建設する計画であり、26年10月の商業運転開始を予定している。MDIの需要は東南アジア、特にベトナム市場で急速な成長を続けており、タイムリーな供給を可能とすることで現地の旺盛な需要を取り込む。
◆松屋フーズホールディングス <9887> [東証P]~今年10月にベトナムの国立ダナン外国語大学とインターンシップ協定を締結。少子高齢化・採用環境の悪化に苦しむ国内事業者への対応だけではなく、ベトナムの学生にも日本企業への就業機会の拡大など、産学連携による日本・ベトナム双方にメリットのある仕組みの構築を志向している。また、将来的に計画しているベトナム進出時における幹部候補生育成としても活用予定にある。
◆セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]~17年6月にコンビニエンスストア「セブン‐イレブン」のベトナム1号店をホーチミンに開いた。23年1月末時点で79店舗を運営しているが、グローバルCVS事業の成長戦略において、ベトナム事業への追加投融資を決定しており、出店を拡大させる計画である。
◆三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]~今年3月にベトナム大手民間商業銀行のVPバンクの普通株式15%を第三者割当増資によって取得すると発表した。VPバンクとのパートナーシップを通じ、ベトナムでの事業拡大を目指す企業へのサービス提供体制を強化する狙いである。
◆三井E&S <7003> [東証P]~今年10月にベトナム海運公社VIMC傘下のCHPから、大型岸壁用コンテナクレーン6基(三井パセコポーテーナ)及びタイヤ式電動門型クレーン(三井パセコトランステーナ)24基を受注。今回のクレーン調達・受注規模は、両社にとって、ベトナムにおいて過去最大規模となる。同社は01年と07年に日本の政府開発援助(ODA)の一環としてCHP向けに納入実績があるが、高品質なクレーンと評価され、今回の採用に至った。
◆コーナン商事 <7516> [東証P]~16年7月に、ホームセンター業態がまだ存在しなかったベトナムへ進出しており、現在は子会社KOHNAN VIETNAMが13店舗を運営する。プライベートブランドを中心とした日本品質の幅広い品ぞろえを追求しており、インテリア用品やキッチン用品、自転車やアウトドア用品などを販売している。
◆ニトリホールディングス <9843> [東証P]~家具・インテリア専門店を展開。ベトナムに2拠点の自社工場を有しており、05年から稼働開始したハノイ工場では主に家具を生産し、17年から稼働開始したバリア・ブンタウ工場では、家具のほかNクールや寝具も生産している。また、アジア地域への出店を加速させる計画であり、今月23日に韓国1号店をオープンするほか、新たにベトナム、インドネシア、フィリピンで初出店を計画している。
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