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*13:05JST アイル Research Memo(5):DXを支援する「CROSS-OVERシナジー」戦略が特徴(3)
■事業概要
(7) 小売業へのオムニチャネル戦略
近年の小売業においては、リアル店舗とWeb店舗を融合して、あらゆるチャネル(販路、顧客接点)から顧客が同じように商品を購買できる環境・流通経路を実現するオムニチャネル戦略が注目されている。アイル<3854>は創業時から「リアル」と「Web」の融合を事業化し、一朝一夕では実現できない事業ノウハウ・事例を蓄積しているため、小売業におけるオムニチャネル戦略の進展に対しても、他社にはまねできない優位性を確立していると言えるだろう。
(8) 自社製品・サービス比率の高さ
同社は、価格変動に左右されやすく利益率も低いハードウェアなどといった、他社製品の売上に依存しない収益構造構築を経営方針の重要事項としており、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。
(9) パートナー戦略
新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、オフィス機器メーカー、コンサルタント、会計事務所など)からの高い信頼も特徴である。システムソリューション事業の新規受注高の販売チャネル別構成比(金額ベース、2023年7月期末)は、パートナー紹介が前期比2.5ポイント上昇して42.7%、ホームページを通じての引き合いが同0.3ポイント低下して38.1%、自社営業による開拓が同2.2ポイント低下して19.1%となった。顧客課題の本質に迫る提案に加えて、認知度アップも寄与してパートナー紹介及び自社ホームページを通じての引き合いといったPull型営業の比率上昇が営業効率化につながっている。また、パートナー紹介による大手層からの受注が増加傾向であり、全体としての受注単価上昇にもつながっている。
このように、業界・業務に精通し、基幹システムとWebの知識を備える人材を揃えている優位性やパートナー戦略の結果、システムソリューション事業の競合勝率は91.6%(2023年7月期)、ユーザーリピート率は98.4%(同)となっており、同社の競合優位性は高いと言える。
5. 生産性向上と売上総利益率上昇の好循環スパイラル
同社は収益性向上に向けて、製販一体体制による生産性向上及びストック売上拡大を推進している。受注段階での営業と開発の連携強化によってカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止に取り組むなど、総合的な品質・生産性向上によって売上総利益率上昇につなげるという好循環スパイラルを形成する戦略だ。さらに2020年7月期からは、組織変更によって営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)し、連携を一段と強化している。また、個別カスタマイズ対応を基本戦略とする一方で、カスタマイズを最小限に抑えてパッケージ機能に沿った受注の拡大や、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などの施策により売上総利益率の改善も推進している。
これらの結果、売上高は拡大基調、売上総利益率は上昇基調となっている。過去5期(2019年7月期~2023年7月期)の事業別の推移は以下のとおりである。全社ベースの売上高は2019年7月期から2023年7月期の5期間で51.3%増加した。売上総利益率は同の42.0%から同の54.5%へ12.5ポイント上昇した。特にシステムソリューション事業が同41.6%から同55.3%へ13.7ポイント上昇し、全体の売上総利益率上昇をけん引している。Webソリューション事業のうちCROSS事業は同54.6%から同55.8%へ1.2ポイントの上昇にとどまっているが、これは「BACKYARD(TM)」リリースに伴うサポート人員強化などにより人件費・開発費が増加したためであり、今後はストック売上高の拡大に伴って上昇基調が見込まれている。
また、全社ベースのストック売上高は2019年7月期から2023年7月期の5期間で75.4%増加、ストック売上総利益は81.4%増加した。ストック売上総利益(2022年7月期3,304百万円、2023年7月期3,682百万円)は、販管費のうちの人件費(2022年7月期3,271百万円、2023年7月期3,621百万円)をカバーできる規模に拡大している。なお、ストック売上高構成比及びストック売上総利益構成比は2023年7月期に低下したが、これはシステムソリューション事業において、メーカーのサーバー保守終了に伴うハード売上の増加という一時的要因によるものであり、ソフト改修・更新需要の掘り起こしやクラウドへの移行提案などを推進し、全体の売上総利益率は上昇基調を維持している。なお、ストック高の売上総利益率はおおむね50%台後半の水準で推移している。
6. ビジネスパートナーとの連携強化
同社は、さらなる売上成長と利益拡大に向けた施策として、様々な分野でのビジネスパートナーとの連携強化を推進している。2023年7月期のビジネスパートナーとの連携としては、システムソリューション事業の「アラジンオフィス」がマネーフォワード<3994>の中堅企業・上場企業向け会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計Plus」と連携(2023年4月)、「アラジンEC」がGMOペイメントゲートウェイ<3769>の総合決済サービス「PGマルチペイメントサービス」及びSMBC GMO PAYMENT(株)の決済サービス「SMBCマルチペイメントサービス」とそれぞれ連携(2022年8月)、「アラジンクラウド」が網屋<4258>のクラウドゼロトラストサービス「Verona(ヴェローナ)」と連携(2023年1月)、「アラジンオフィス for fashion」がロジザード<4391>のクラウド倉庫管理システム「ロジザードZERO」と連携強化(2023年4月)した。Webソリューション事業では「CROSS MALL」がRecustomer(株)の購入体験プラットフォーム「Recustomer(リカスタマー)」と連携(2022年9月)、(株)コマースロボティクスのeコマースクラウドWMS「Air Logi(エアロジ)」と連携(2023年1月)、(株)ソウゾウのeコマースプラットフォーム「メルカリShops」と連携(2023年4月)した。
なお、資本業務提携しているシビラに対しては、シビラと電通グループ<4324>の資本業務提携に伴い、出資比率を維持するため2021年6月に追加出資を行った。さらなる連携強化により、セキュリティと利便性が両立した新しいサービスを追求する方針である。
また2023年6月には、(株)みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズ(株)が取り組む法人顧客向けDX支援「みずほデジタルコネクト」に、パートナー企業として参画した。みずほ銀行の法人顧客における企業価値の向上を支援する。
7. リスク要因・収益特性と対策
情報システム・サービス産業における一般的なリスク要因としては、受注競合、案件大型化に伴う開発期間の長期化、個別プロジェクトの不採算化、技術革新への対応遅れ、人材確保などがある。ただし、同社の場合はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。一方で、顧客に適合した柔軟な個別カスタマイズによって競合他社との差別化を図っていることが特徴のため、開発・カスタマイズ時における工数増加やバグ発生などが利益率低下要因となるが、この対策として生産性向上を推進し、売上総利益率改善に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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(7) 小売業へのオムニチャネル戦略
近年の小売業においては、リアル店舗とWeb店舗を融合して、あらゆるチャネル(販路、顧客接点)から顧客が同じように商品を購買できる環境・流通経路を実現するオムニチャネル戦略が注目されている。アイル<3854>は創業時から「リアル」と「Web」の融合を事業化し、一朝一夕では実現できない事業ノウハウ・事例を蓄積しているため、小売業におけるオムニチャネル戦略の進展に対しても、他社にはまねできない優位性を確立していると言えるだろう。
(8) 自社製品・サービス比率の高さ
同社は、価格変動に左右されやすく利益率も低いハードウェアなどといった、他社製品の売上に依存しない収益構造構築を経営方針の重要事項としており、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。
(9) パートナー戦略
新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、オフィス機器メーカー、コンサルタント、会計事務所など)からの高い信頼も特徴である。システムソリューション事業の新規受注高の販売チャネル別構成比(金額ベース、2023年7月期末)は、パートナー紹介が前期比2.5ポイント上昇して42.7%、ホームページを通じての引き合いが同0.3ポイント低下して38.1%、自社営業による開拓が同2.2ポイント低下して19.1%となった。顧客課題の本質に迫る提案に加えて、認知度アップも寄与してパートナー紹介及び自社ホームページを通じての引き合いといったPull型営業の比率上昇が営業効率化につながっている。また、パートナー紹介による大手層からの受注が増加傾向であり、全体としての受注単価上昇にもつながっている。
このように、業界・業務に精通し、基幹システムとWebの知識を備える人材を揃えている優位性やパートナー戦略の結果、システムソリューション事業の競合勝率は91.6%(2023年7月期)、ユーザーリピート率は98.4%(同)となっており、同社の競合優位性は高いと言える。
5. 生産性向上と売上総利益率上昇の好循環スパイラル
同社は収益性向上に向けて、製販一体体制による生産性向上及びストック売上拡大を推進している。受注段階での営業と開発の連携強化によってカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止に取り組むなど、総合的な品質・生産性向上によって売上総利益率上昇につなげるという好循環スパイラルを形成する戦略だ。さらに2020年7月期からは、組織変更によって営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)し、連携を一段と強化している。また、個別カスタマイズ対応を基本戦略とする一方で、カスタマイズを最小限に抑えてパッケージ機能に沿った受注の拡大や、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などの施策により売上総利益率の改善も推進している。
これらの結果、売上高は拡大基調、売上総利益率は上昇基調となっている。過去5期(2019年7月期~2023年7月期)の事業別の推移は以下のとおりである。全社ベースの売上高は2019年7月期から2023年7月期の5期間で51.3%増加した。売上総利益率は同の42.0%から同の54.5%へ12.5ポイント上昇した。特にシステムソリューション事業が同41.6%から同55.3%へ13.7ポイント上昇し、全体の売上総利益率上昇をけん引している。Webソリューション事業のうちCROSS事業は同54.6%から同55.8%へ1.2ポイントの上昇にとどまっているが、これは「BACKYARD(TM)」リリースに伴うサポート人員強化などにより人件費・開発費が増加したためであり、今後はストック売上高の拡大に伴って上昇基調が見込まれている。
また、全社ベースのストック売上高は2019年7月期から2023年7月期の5期間で75.4%増加、ストック売上総利益は81.4%増加した。ストック売上総利益(2022年7月期3,304百万円、2023年7月期3,682百万円)は、販管費のうちの人件費(2022年7月期3,271百万円、2023年7月期3,621百万円)をカバーできる規模に拡大している。なお、ストック売上高構成比及びストック売上総利益構成比は2023年7月期に低下したが、これはシステムソリューション事業において、メーカーのサーバー保守終了に伴うハード売上の増加という一時的要因によるものであり、ソフト改修・更新需要の掘り起こしやクラウドへの移行提案などを推進し、全体の売上総利益率は上昇基調を維持している。なお、ストック高の売上総利益率はおおむね50%台後半の水準で推移している。
6. ビジネスパートナーとの連携強化
同社は、さらなる売上成長と利益拡大に向けた施策として、様々な分野でのビジネスパートナーとの連携強化を推進している。2023年7月期のビジネスパートナーとの連携としては、システムソリューション事業の「アラジンオフィス」がマネーフォワード<3994>の中堅企業・上場企業向け会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計Plus」と連携(2023年4月)、「アラジンEC」がGMOペイメントゲートウェイ<3769>の総合決済サービス「PGマルチペイメントサービス」及びSMBC GMO PAYMENT(株)の決済サービス「SMBCマルチペイメントサービス」とそれぞれ連携(2022年8月)、「アラジンクラウド」が網屋<4258>のクラウドゼロトラストサービス「Verona(ヴェローナ)」と連携(2023年1月)、「アラジンオフィス for fashion」がロジザード<4391>のクラウド倉庫管理システム「ロジザードZERO」と連携強化(2023年4月)した。Webソリューション事業では「CROSS MALL」がRecustomer(株)の購入体験プラットフォーム「Recustomer(リカスタマー)」と連携(2022年9月)、(株)コマースロボティクスのeコマースクラウドWMS「Air Logi(エアロジ)」と連携(2023年1月)、(株)ソウゾウのeコマースプラットフォーム「メルカリShops」と連携(2023年4月)した。
なお、資本業務提携しているシビラに対しては、シビラと電通グループ<4324>の資本業務提携に伴い、出資比率を維持するため2021年6月に追加出資を行った。さらなる連携強化により、セキュリティと利便性が両立した新しいサービスを追求する方針である。
また2023年6月には、(株)みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズ(株)が取り組む法人顧客向けDX支援「みずほデジタルコネクト」に、パートナー企業として参画した。みずほ銀行の法人顧客における企業価値の向上を支援する。
7. リスク要因・収益特性と対策
情報システム・サービス産業における一般的なリスク要因としては、受注競合、案件大型化に伴う開発期間の長期化、個別プロジェクトの不採算化、技術革新への対応遅れ、人材確保などがある。ただし、同社の場合はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。一方で、顧客に適合した柔軟な個別カスタマイズによって競合他社との差別化を図っていることが特徴のため、開発・カスタマイズ時における工数増加やバグ発生などが利益率低下要因となるが、この対策として生産性向上を推進し、売上総利益率改善に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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