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―インバウンド需要復活が商機に、人手不足の解決策として注目度アップ―
新型コロナウイルス感染症の水際対策が各国で緩和されたことを契機に、訪日外国人(インバウンド)の需要が回復している。2023年1月の訪日外国人客数(推計)は149万7300人とコロナ禍前の19年1月比で56%の水準まで回復し、前月からは12万7300人増えた。こうしたなか、経済再開(リオープン)への期待が高まる一方、受け入れ側となる小売りはコロナ禍で人材を失ったことで以前から問題となっている人材不足が一段と深刻化している。そこで注目したいのが、小売り事業に先端テクノロジーを導入する「リテールテック」だ。2月28日~3月3日に東京ビッグサイトで「リテールテックJAPAN」が開催されていることもあり、関連銘柄をマークしておきたい。
●訪日客消費、25年に1人20万円目標
国土交通省観光庁は2月9日、交通政策審議会観光分科会を開催し、25年までの新たな観光立国推進基本計画の素案を提示した。観光立国の実現に関する目標について、質の向上を強調するとともに、今後の世界的な新型コロナの収束見通しが不透明であることを踏まえて「人数に依存しない指標」を中心に設定。今後の観光政策の方向性は「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3つのキーワードに特に留意するとしている。また、具体的な目標として25年までに、持続可能な観光に取り組む地域を100地域(22年は12地域)、インバウンドの1人当たりの消費額を20万円(19年は15万9000円)、1人当たり地方部宿泊数を1.5泊(同1.35泊)に拡大することを掲げている。
ただ、課題となるのが労働力不足の問題だ。厚生労働省が1月31日に公表した一般職業紹介状況によると、22年12月の小売業の新規求人(新規学卒者及びパートタイムを除く)は前年同月比6.8%増と全業種の3.1%増を上回っている。事業者によってはインバウンド需要が増えても人手不足で十分な対応ができておらず、このままでは機会損失になりかねないことから省人化ニーズが今後一段と高まることが予想される。
●小売業の省人化ニーズ支える企業群
ヴィンクス <3784> [東証S]は流通業界のシステムの企画、開発、保守、運用を一貫して手掛けるITのエキスパートで、POS(販売時点情報管理)システムやMD(マーチャンダイジング=商品計画・商品化計画)基幹システムなどを展開している。同社グループは「アジアにおける流通ITのリーディングカンパニーを目指す」ことを経営ビジョンとして、「ニューリテール戦略」「特定顧客化戦略」「グローバル市場戦略」「事業構造改革」を掲げており、23年12月期通期の連結営業利益は前期比3.1%増の31億9500万円となる見通しだ。
ラクス <3923> [東証P]は「ITサービスで企業の成長を継続的に支援する」をミッションにIT技術に関わる多角的なサービスで企業をサポート。交通費・経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」、販売管理業務システム「楽楽販売」などを提供している。足もとではクラウド事業が堅調に推移しており、23年3月期通期の連結営業利益予想は従来の14億2400万円から14億9800万円(前期比5.1%減)に引き上げられている。
プラスアルファ・コンサルティング <4071> [東証G]は、データ分析プラットフォームや可視化のクラウドサービスなどを展開している。顧客体験フィードバックシステム「見える化エンジン」ではテキストマイニングや自然言語処理技術を用い、テキストデータを解析するソリューションを提供し、問い合わせログ・チャットログや顧客満足度(CS)アンケート、SNS、レビューなど顧客の声を分析。幅広い業種で、累計1600社以上の導入実績を誇る。23年9月期第1四半期(22年10-12月)の連結営業利益は7億6100万円(今期から連結決算に移行したため前年同期との比較なし)で、通期では34億円が見込まれている。
ヤプリ <4168> [東証G]はアプリ開発・運用・分析をノーコード(プログラミング不要)で提供するアプリプラットフォーム「Yappli」を運営。導入企業は600社以上で、店舗やEコマースなどのマーケティング支援から社内や取引先とのコミュニケーションをモバイルで刷新する社内デジタルトランスフォーメーション(DX)、バックオフィスや学校法人の支援まで幅広い業界の課題解決に活用されている。プラットフォームの価値を高める成長投資が前期に一巡したことで、23年12月期の単独営業損益は2400万円の黒字(前期は8億1800万円の赤字)に浮上する見通しだ。
セキュア <4264> [東証G]はセキュリティーソリューション事業を手掛けており、直近ではヘッドウォータース <4011> [東証G]とリテールDX開発で協業を強化すると発表。両社が持つアセット、ノウハウ、人材などを活用した高いシナジーを追求し、コンビニエンスストアやドラッグストア、ファッション店舗などに最適化された売り場づくりを提案する人工知能(AI)ソリューションと多店舗へ展開可能なプラットフォームを構築し、全国導入に向けて協業を強化するという。なお、23年12月期通期の連結営業損益は1億円の黒字(前期は1億6900万円の赤字)に浮上する見込み。
シノプス <4428> [東証G]は需要予測・自動発注サービス「sinops」シリーズの開発・販売などを行っており、小売業向けの「sinops-CLOUD」は店舗の負荷を削減しながら、売り上げアップ、廃棄・値引きロスや欠品・機会ロスを緩和することができる。23年12月期はシェア拡大に向けて新規顧客獲得に注力する構えで、単独営業利益は前期比11.4%増の2億5000万円となる見通しだ。
スマレジ <4431> [東証G]は、あらゆる販売データの収集と活用を行う「販売データプラットフォーム運営事業」を展開。低価格で高性能なクラウドPOSレジ・システム「スマレジ」は基本レジ機能をはじめ、リアルタイム売り上げ分析や高度な在庫管理などが可能で、クレジットカード決済や電子マネー決済、バーコードリーダーやセンサー、RFIDなどによる商品読み取りなど、さまざまな周辺機器やサービスに対応している。なお、3月15日には23年4月期第3四半期累計(22年5月~23年1月)の単独決算を発表する予定となっている。
●東計電算、ウネリーなどにも注目
このほかでは、サイバーリンクス <3683> [東証P]の流通食品小売業向け基幹業務クラウドサービス「@rms本部システム」、データセクション <3905> [東証G]の店舗分析ツール「FollowUP」、スタメン <4019> [東証G]のエンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」、プレイド <4165> [東証G]の顧客体験(CX)プラットフォーム「KARTE」、テンダ <4198> [東証S]の自動マニュアル作成ツール「Dojo」、ウイングアーク1st <4432> [東証P]のPOSなどの大量のデータも高速に集計できるデータ分析基盤「Dr.Sum」、東計電算 <4746> [東証S]の店舗管理システム「Skymart-Retail」、unerry <5034> [東証G]の店舗集客効果を客観的に測定できる「ショッパーみえーる」、TBグループ <6775> [東証S]のPOSシステム、天馬 <7958> [東証P]のオンライン接客システム、大興電子通信 <8023> [東証S]の専門店向けPOS・MD・在庫管理システム「RetailFocus」などにも商機がありそうだ。
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