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パイプドHDのニュース
―SaaSで飛躍する企業群、セールスフォースの株価はリーマン後55倍に大変貌―
週末4日の東京株式市場は前日の米国株市場の波乱展開を受けて、にわかにリスク回避の売りに晒される展開を強いられた。これまでコロナ禍にあっても、実体経済とは遊離した過剰流動性相場を満喫してきたが、高値圏で利益確定を急ぐムードが出てきたことは少なからず先行き警戒感を意識させる局面にある。ただ東京市場は、ナスダック総合指数やS&P500指数などの主要指標が最高値圏を快走している米国株市場と比較して、相対的に出遅れ感が顕著であった分だけ下値抵抗力も発揮しやすい。ここは目先の波乱に惑わされず、あえて中長期的視点で成長性の高いセクターに光を当て、株価の変貌余地の大きい銘柄の押し目を仕込むチャンスと前向きに捉えたい。
●クラウドサービスは成長企業の共通項
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大のなかにあっても、成長シナリオが決して色褪せることのない銘柄は日米ともに存在する。例えば、デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れに乗る銘柄はその有力対象といえる。そして、更に掘り下げると具体的に収益を伸ばしている企業には成長を示唆するいくつかの共通ワードがある。そのひとつが「クラウドサービス」だ。
クラウドサービスは、ハードやソフトを手元のコンピューターで「所有」するのではなく、インターネットを経由したサービスとして必要に応じて利用するというのが基本コンセプトだ。これは企業側に大幅なコスト効果をもたらすほか、迅速な導入を可能とし、日進月歩のIT業界の変化にも即対応できるというメリットがある。企業がコストをかけてそれらを自ら所有した場合、システムが陳腐化した時に頭を抱えることになるが、そのリスクから解放されるメリットは大きい。時はまさに、デジタル化によりビジネスモデルの根幹から改革を求められるDXの潮流が押し寄せている。これも経営システムのクラウド化推進を促す強力な背景となっている。
●セールスフォースの株価はリーマン後55倍に
クラウドサービス市場はIT先進国の米国で拡大が加速している。現在米アマゾン・ドット・コムの「AWS」がフロントランナーで全体の3割強のシェアを獲得しており、これをマイクロソフトの「Azure」、グーグルの「GCP」が後ろを追う形となっている。この3社で世界シェアの7割前後を占める状況だ。また、クラウド上にあるソフトをネット経由で活用する(完成済みのアプリケーションを利用する)サービスをSaaS(サース)と呼ぶが、これも新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に需要が喚起されている状況にある。
このSaaSの代表的企業といえば米セールスフォース・ドットコムだ。同社は法人向けクラウド型CRM(顧客管理)ソリューションビジネスを展開し、業務アプリケーションをクラウド上で企業に提供する。20年5-7月期はコロナ禍にあって、売上高が前年同期比3割増、最終利益が同29倍という爆発的な伸びを達成しマーケットの耳目を驚かせた。米国ではGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)と称されるITの巨人たちがひしめくが、セールスフォースもまた同じ時期に株価を大変貌させたDX時代の寵児である。最近ではダウ工業株30種平均に新たに採用されるなどで日本でも話題となった。
セールスフォースの株価は今月2日に284ドル50セントの上場来高値をつけたが、これは08年のリーマン・ショック直後の株価と比較すると実に55倍という大変貌を果たしている。今年に入ってからも、コロナショックによる急落で3月中旬に115ドル台まで売り込まれる場面があったが、そこからわずか5ヵ月半あまりで2.5倍近くに急騰、その上げ足の速さはGAFAMをも凌ぐ勢いだ。
●DX追い風にSaaS市場は急拡大へ
日本でもSaaS市場は急速に拡大傾向を強めている。完成済みのアプリケーションを利用するためカスタマイズの自由度は低いものの、従量課金でコストを低く抑えることが可能で、当然システム構築にかかるコストもない。場所を問わずネット経由で使用できるため、テレワーク時代に潜在的なニーズが一気に顕在化する可能性も指摘されている。また近年注目され始めた、人事・労務関係の仕事にITを採り入れるHRテックでも、SaaSが大きな役割を担っている。今からわずか3年後の23年にはSaaSの市場規模は国内で8000億円前後まで拡大するとの試算もある。
こうした成長市場において、サービスの供給側として商機を捉える企業は、今後東京市場でも注目の的となろう。DX投資は民間だけでなく官公庁も含め国が一丸となって進めていくべき課題だ。言い換えればAI・IoTやクラウド(SaaS関連)周辺の企業は、その国策に乗る出世株として存在感を浮き彫りとしていくことになる。今回は中期視野でその条件に適う、大化けの可能性を内包する有望5銘柄をピックアップした。
●株価変貌の可能性秘めるクラウド関連5銘柄
◎サイボウズ <4776>
グループウェアの提供で中小企業を中心に業務効率化ニーズを取り込み、パッケージソフト及びクラウドサービスを軸に業容拡大を急速に進めている。前19年12月期まで直近3期の営業利益伸び率は50%強という高さ。企業のDX投資では、大手に比べ中小が出遅れているだけに、今後も商品競争力の高い同社の収益成長期待は大きい。テレワーク導入加速の動きも同社の収益環境に強力な追い風となっている。20年12月期営業利益は前期比14~54%増の19億6900万~26億6900万円を計画するが、上期時点では16億3200万円に達している。今月24日にマザーズに新規上場するトヨクモ <4058> [東証M]の第2位の大株主である点もポイントで、上場時に20万株を売り出す予定。その含み益も注目されそうだ。
◎さくらインターネット <3778>
独立系データセンター大手でホスティングを中心としたクラウドサービスにも強い。同社のサービスは、顧客にとってコストパフォーマンスが高く、災害時の復旧やバックアップなどクラウド基盤の信頼性も高い。NTTデータ <9613> などと、教育機関向けクラウドサービス「edumap(エデュマップ)」を展開している。また、“脱ハンコ時代”に対応し、押印プロセスをオンラインで完結させる「電子契約プラットフォームβ」の提供も始めた。セキュアな状態でどこでも電子契約を行うことを可能とし、今後の需要開拓が期待される。また、ブロードバンドタワー <3776> [JQ]やテクノプロ・ホールディングス <6028> などと協業で、「3DCAD」を活用した技術者の在宅設計・生産を支援するシステム開発にも着手している。
◎パイプドHD <3919>
顧客情報管理ソフトをクラウドで提供。プラットフォームの「スパイラル」は大企業から中小企業に至るまで幅広く顧客層を獲得し、このスパイラルを軸に各種アプリケーションを開発し商機を拡大している。ビジネスモデルは月額のサブスクリプション型で安定した収益成長基盤が強みとなっている。業績は先行投資負担が重荷となっているものの、これは将来の成長の足場となる。業績は会社側の想定を上回って推移し、21年2月期の最終利益は非上場株式の売却に伴い前期比2~16%増の7~8億円に上方修正、従来の減益予想から一転して増益見込みとなった。上限でみた場合は前期比16%増益と2ケタ成長となる。バーチャル株主総会システムなどウィズコロナ環境下での注目材料も内包している。
◎ショーケース <3909>
スマートフォン向けWebサイト最適化技術をクラウドサービスで展開、国内外で取得の特許技術を活用した「ナビキャストシリーズ」を主力に需要を獲得している。また、Webサイトへの不正アクセスなどに対するセキュリティーを強化する「プロテックシリーズ」も提供、「Mail Checker」「License Reader」「ID Checker」などを展開し好評を博している。また、同社とプラップジャパン <2449> [JQ]との合弁会社で広報PRのDXを推進するプラップノードは、広報業務をデジタル技術で変革する新サービスを今月から開始した。新サービスは両社の知見や技術の融合で実現した広報PR業務をサポートする国内初のSaaS型ツールとして関心が集まっている。
◎インフォマート <2492>
企業間電子商取引のプラットフォーム運営を食材など中心に手掛ける。クラウドを活用して商談、受発注、規格書、請求書、見積書、契約書、業界チャンネルなどを網羅し、企業の生産性向上やペーパーレス化による時短やコスト削減、エコを実現。企業のテレワーク導入加速を背景に電子請求書を活用する動きが活発化しており、同社の収益機会を広げている。“請求業務完全ペーパーレス”をうたったテレビCMを関西圏で開始し認知度を高めている。サイバーエージェント <4751> は企業間の契約締結業務を完全電子化するため同社の「BtoBプラットフォーム契約書」の導入・運用を進めている。また、7月にはアステリア <3853> の主力商品「アステリア ワープ」とのAPI連携もスタートさせた。
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