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ウイルプラスホールディングスのニュース
■中長期の成長戦略
1. グループ戦略全体像
ウイルプラスホールディングス<3538>の成長戦略を理解するうえでは、輸入車ディーラー業界に特有の商慣習を理解しておく必要がある。その1つは前述の、インポーターとのエクスクルーシブ契約(専属・専任契約)の存在だ。Aという自動車ブランドの正規ディーラーになると、他のメーカーの正規ディーラーにはなれないということが一般的となっている(例外もある)。したがって取扱ブランドごとに事業会社を設立する必要がある。同社の持株会社制はその点では輸入車ディーラー事業に適した経営形態と言える。
もう1つは、輸入車ディーラーは基本的にエリアフランチャイズ制であるということだ。事業者ごとに商圏が割り振られ、その中での営業ということになる(顧客が他のエリアの店舗で購入すること自体はまったく問題がない)。エリアフランチャイズ制には功罪2つの側面がある。すなわち、やる気のある、経営力に優れた事業者にとっては足かせになる可能性があると言える。反対に、エリアフランチャイズに守られているため、景気動向や自動車のブランド力によって経営努力なしに運営が可能なこともある。
こうした輸入車ディーラーの商慣習のもと、同社は中長期的な持続的成長の実現に向けて、上場企業としてのガバナンスから店舗単位の収支状況まで経営全般について高い意識を持ち、1)マルチブランド戦略、2)ドミナント戦略、3)M&A戦略、の3つで臨んでいる。各戦略の詳細は以下に詳述するが、ポイントは3つの戦略自体が目的なのではないということだ。同社は、その時々の市場環境(地域、ターゲット顧客など)に応じて3つの戦略を組み合わせ、シナジー効果を生みだしてそれを収益拡大につなげることに心を砕いている。
本来、戦略とはゴールに至る手段・手法に過ぎないが、目的を見失い戦略自体が目的化することも往々にして見られる。同社はそうしたことなく堅実に経営を続けてきており、これこそが同社の強さの源泉だと弊社では考えている。
新型モデル投入時期の差異による販売サイクルへの影響を平準化
2. マルチブランド戦略
マルチブランド戦略は複数のブランドを取り扱うことでブランド間の新モデル投入時期の差による収益変動を平準化し、安定成長の実現を目指すことが主眼となっている。
同社は現在9ブランドを取り扱っている。この数字は一見するとマルチブランド戦略を十分実現できているように見えるが必ずしもそうではないと弊社ではみている。インポーター単位で括り直すと、同社のブランドは「アルファロメオ・フィアット・アバルト、ジープ」、「ジャガー・ランドローバー」、「BMW・MINI」、「VOLVO」の4グループに減少する。また事業会社単位で見ると、2017年実績ベースで、チェッカーモータースは台数シェアが1位(FCA傘下5ブランド計)だったのに対して、ウイルプラスモトーレンと帝欧オートはともに6位(ウイルプラスモトーレンはMINIの販売台数。BMWのシェアはもっと低いとみられる)だった。このように見てくると、同社としては、更なるマルチブランド化を推進して、収益安定性の厚みを増したいのが本音としてあると推測される。そのためにはM&A戦略の進展と合わせて、一段の取扱ブランドの拡大に期待したいところだ。特に、国内販売台数が多い大型ブランドの獲得が望まれる。
グループ内での人材流動化と顧客フォローの充実により利益最大化を目指す
3. ドミナント戦略
ドミナント戦略は特定の地域に店舗を集中的に出店する戦略を言う。しかしながらこれは、商圏が大きくエリアフランチャイズ制がある輸入車ディーラーでは簡単なことではない。
このハードルをクリアするのに貢献しているのが、同社のマルチブランド戦略だ。同社の3事業会社・9ブランドを組み合わせることで、1つの地域に5店舗〜10店舗をドミナント出店することを実現している。
2018年6月末時点では、全26店舗の内、13店舗を福岡県に、13店舗を東京・神奈川に出店している。東京の店舗は世田谷区や大田区の城南地区に集中させており(例外的に新宿、池袋に1店舗ずつ展開)、神奈川県と合わせて地域ドミナントを構築している。
こうしたドミナント戦略の狙いと効果として同社は、グループ内での人材の流動化・最適配置が可能になり、顧客を面でフォローできることを挙げている。面でフォローというのは1人の顧客に対して3事業会社の各ブランドの情報を提供し、グループとして当該顧客を囲い込むということだ。この点について弊社では、輸入車オーナーはブランドロイヤリティが高いのでワークしないのではないかと考えていたが、実際にはモデルサイクルの谷間に他のブランドに乗り換えたい、同タイプ(例えばSUV)の車で他ブランドのものを試したい、といったニーズは強く、同社のドミナント戦略は狙いどおりの効果を発揮しているとみられる。
弊社では人材の流動化・最適配置という点に注目している。同社は店舗のスクラップ&ビルドを競合他社よりも速いペースで行い、店舗をフレッシュに保つとともに店舗収益の黒字確保に注力している。これが可能である大きな要因がドミナント戦略であるとみている。同社はM&Aに際しても雇用維持を大原則に掲げており、それは既存店舗も同様だ。雇用維持と効率的な店舗展開を両立して利益最大化を図ることがドミナント戦略のポイントと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
1. グループ戦略全体像
ウイルプラスホールディングス<3538>の成長戦略を理解するうえでは、輸入車ディーラー業界に特有の商慣習を理解しておく必要がある。その1つは前述の、インポーターとのエクスクルーシブ契約(専属・専任契約)の存在だ。Aという自動車ブランドの正規ディーラーになると、他のメーカーの正規ディーラーにはなれないということが一般的となっている(例外もある)。したがって取扱ブランドごとに事業会社を設立する必要がある。同社の持株会社制はその点では輸入車ディーラー事業に適した経営形態と言える。
もう1つは、輸入車ディーラーは基本的にエリアフランチャイズ制であるということだ。事業者ごとに商圏が割り振られ、その中での営業ということになる(顧客が他のエリアの店舗で購入すること自体はまったく問題がない)。エリアフランチャイズ制には功罪2つの側面がある。すなわち、やる気のある、経営力に優れた事業者にとっては足かせになる可能性があると言える。反対に、エリアフランチャイズに守られているため、景気動向や自動車のブランド力によって経営努力なしに運営が可能なこともある。
こうした輸入車ディーラーの商慣習のもと、同社は中長期的な持続的成長の実現に向けて、上場企業としてのガバナンスから店舗単位の収支状況まで経営全般について高い意識を持ち、1)マルチブランド戦略、2)ドミナント戦略、3)M&A戦略、の3つで臨んでいる。各戦略の詳細は以下に詳述するが、ポイントは3つの戦略自体が目的なのではないということだ。同社は、その時々の市場環境(地域、ターゲット顧客など)に応じて3つの戦略を組み合わせ、シナジー効果を生みだしてそれを収益拡大につなげることに心を砕いている。
本来、戦略とはゴールに至る手段・手法に過ぎないが、目的を見失い戦略自体が目的化することも往々にして見られる。同社はそうしたことなく堅実に経営を続けてきており、これこそが同社の強さの源泉だと弊社では考えている。
新型モデル投入時期の差異による販売サイクルへの影響を平準化
2. マルチブランド戦略
マルチブランド戦略は複数のブランドを取り扱うことでブランド間の新モデル投入時期の差による収益変動を平準化し、安定成長の実現を目指すことが主眼となっている。
同社は現在9ブランドを取り扱っている。この数字は一見するとマルチブランド戦略を十分実現できているように見えるが必ずしもそうではないと弊社ではみている。インポーター単位で括り直すと、同社のブランドは「アルファロメオ・フィアット・アバルト、ジープ」、「ジャガー・ランドローバー」、「BMW・MINI」、「VOLVO」の4グループに減少する。また事業会社単位で見ると、2017年実績ベースで、チェッカーモータースは台数シェアが1位(FCA傘下5ブランド計)だったのに対して、ウイルプラスモトーレンと帝欧オートはともに6位(ウイルプラスモトーレンはMINIの販売台数。BMWのシェアはもっと低いとみられる)だった。このように見てくると、同社としては、更なるマルチブランド化を推進して、収益安定性の厚みを増したいのが本音としてあると推測される。そのためにはM&A戦略の進展と合わせて、一段の取扱ブランドの拡大に期待したいところだ。特に、国内販売台数が多い大型ブランドの獲得が望まれる。
グループ内での人材流動化と顧客フォローの充実により利益最大化を目指す
3. ドミナント戦略
ドミナント戦略は特定の地域に店舗を集中的に出店する戦略を言う。しかしながらこれは、商圏が大きくエリアフランチャイズ制がある輸入車ディーラーでは簡単なことではない。
このハードルをクリアするのに貢献しているのが、同社のマルチブランド戦略だ。同社の3事業会社・9ブランドを組み合わせることで、1つの地域に5店舗〜10店舗をドミナント出店することを実現している。
2018年6月末時点では、全26店舗の内、13店舗を福岡県に、13店舗を東京・神奈川に出店している。東京の店舗は世田谷区や大田区の城南地区に集中させており(例外的に新宿、池袋に1店舗ずつ展開)、神奈川県と合わせて地域ドミナントを構築している。
こうしたドミナント戦略の狙いと効果として同社は、グループ内での人材の流動化・最適配置が可能になり、顧客を面でフォローできることを挙げている。面でフォローというのは1人の顧客に対して3事業会社の各ブランドの情報を提供し、グループとして当該顧客を囲い込むということだ。この点について弊社では、輸入車オーナーはブランドロイヤリティが高いのでワークしないのではないかと考えていたが、実際にはモデルサイクルの谷間に他のブランドに乗り換えたい、同タイプ(例えばSUV)の車で他ブランドのものを試したい、といったニーズは強く、同社のドミナント戦略は狙いどおりの効果を発揮しているとみられる。
弊社では人材の流動化・最適配置という点に注目している。同社は店舗のスクラップ&ビルドを競合他社よりも速いペースで行い、店舗をフレッシュに保つとともに店舗収益の黒字確保に注力している。これが可能である大きな要因がドミナント戦略であるとみている。同社はM&Aに際しても雇用維持を大原則に掲げており、それは既存店舗も同様だ。雇用維持と効率的な店舗展開を両立して利益最大化を図ることがドミナント戦略のポイントと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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