982円
JPMCのニュース
■業績動向
1. 2023年3月期第2四半期の業績概要
いい生活<3796>の2023年3月期第2四半期累計(2022年4月−9月)の連結業績は、売上高で前年同期比10.2%増の1,287百万円、EBITDAは同23.4%増の307百万円、営業利益で同163.1%増の86百万円、経常利益は164.2%増の88百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は202.9%増の55百万円と大幅に増収増益となった。
売上高をサービス別で見ると、サブスクリプションが前年同期比5.8%増の1,072百万円、ソリューションが同39.2%増の215百万円となった。 売上構成比の83.3%をサブスクリプションであげている。サブスクリプションは月額利用料の収入など、解約の申し出がない限り毎月継続して発生する収益のため、安定した商品が売上構成比の大半を占めている。有料課金法人数は前年同期比プラス33法人の1,476法人、サービス利用店舗数は前年同期比プラス152店舗の4,489店舗と拡大している。同社のサービスを継続して利用している法人に加え、新規の受注が伸びている傾向がうかがえる。
(1)ARPUの増加とMRR解約率の低下による収益構造の改善
売上高をARPUとMRR解約率(金額ベースの解約率)という2つの指標で見てみると、2022年9月の月額ARPUは125千円と、前年同月比7千円増であった。ARPUは「Average Revenue Per User」の略で、1顧客当たりの平均売上額を示す(総売上高÷アカウント数))。ARPUの増加は利用料金の大きい新規顧客が増加していること、および既存顧客が新しいサービスを追加で購入していることを示している。同社の場合サービスを一元的に提供しているため、サービスの追加購入が起こりやすい。既存で使っているサービスをフックに新しいサービスを購入する顧客が増えていることを示している。サービスラインナップが増えれば増えるほどこの収益モデルは拡大していく仕組みとなっている。一方、MRR解約率はマイナス0.16%となった。同社で使用しているMRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)はサブスクリプション売上とイコールであるが、このMRRの金額ベースの解約率(2022年9月に失ったMRR÷2022年8月のMRR) がマイナスであるということは、当月に解約となった金額を、当月追加的に購入されたサブスクリプションが上回っていることを示しており、新規顧客獲得によるサブスクリプションの増加をカウントしない状態で既存顧客による売上が拡大していることを示す。こちらの指標も同社のサービスに対する顧客満足度が高いことを示している。
(2)人員構成
売上原価は前年同期比6.1%増の521百万円、販管費は前年同期比5.5%増の679百万円となった。旺盛な需要に対応すべくセールス&マーケティング人員の増強を図り、提供サービスの拡大によるエンジニア人材の採用を進めた。9月末時点の人員構成はセールス&マーケティング部門が71名となり、エンジニアリングにおける期末人員数は68名となった。今後も必要に応じて人員を増強していく方針である。人員規模の拡大を継続しながらも、売上の伸びに対し販売管理費の進捗率は前年並みの水準を維持している結果となり、同社のクラウドビジネスの特徴は売上高の伸びに比べて変動比率が低く、利益率が高まる構造になっていることが窺える。このため、確実で安定した収益を得やすく、顧客ニーズに合わせて素早く成長できるスケーラビリティ(拡張性)を持っているとも言える。
(3)市場環境
不動産業界における同社のターゲット顧客層は、中小企業から大手企業、地方の有力企業まで幅広い。今期、大手企業で同社のSaaSサービスの導入を決定した大手企業も複数ある。具体的に例を挙げると、(株)ハウスメイトパートナーズは、賃貸仲介件数で国内3位の(株)ハウスメイトショップのWeb予約・申込サービス「Sumai Entry」を導入している。JPMC<3276>(旧 日本管理センター)は、全国約106,000戸の管理物件に正確かつタイムリーに空室情報を配信し、入室予約・入居申込ができるサービス「ES-B2B賃貸」「いい生活Squqre」「Sumai Entry」を導入。(株)東急コミュニティーは、自宅住み替えサービス「たくす」において、同社の「いい生活Owner」の利用を開始した。このアプリにより、契約前から借主とのコミュニケーションの質が向上し、業務の効率化、生産性の向上に寄与している。東京大学生活協同組合では、提携する不動産会社を通じて様々な物件を紹介し、空き物件情報を効率的に管理し情報の鮮度を向上させるデータベースを構築している。また、同組合のホームページでは、タイムリーな情報更新を行い、問い合わせ件数をさらに増加させるための施策を講じている。
市場のリスク要因としては、景気悪化に伴う経済全体の需要減少に加えて、人口減少による需要の減少などが挙げられる。このような状況を想定した場合、同社は業界に特化したマルチプロダクト戦略をとることで物件の取り扱いデータを蓄積し、物件管理・営業支援・業者間プラットフォームなどの各種サービスと連携することで、新たな付加価値及び生産性の向上を実現することで対応していく。
一方、現在の同社を取り巻く不動産環境は、個人・法人ともに活況を呈している。不動産取引市場においては、テレワークなどによる在宅時間の長期化により、個人の住み替え需要が増加。また、円安や超低金利を背景に海外投資家のニーズは依然高く、今後も同社にとって追い風となり、事業拡大の機会になる。このような傾向が続けば、市場は今後も拡大することが予想され、同社には事業拡大の好機となると弊社では考えている。
同社は、DX推進をベースとした成長モデルの構築を不動産の賃貸や売買の領域で本格的に行ってきており、物件の取り扱いデータが蓄積されていくことと、物件管理・営業支援・業者間プラットフォームなどの各種サービスと連携することで新たな付加価値及び生産性の向上を実現していくことが強みである。既存サービスと新規サービスの融合により、不動産市場に付加価値の高いサービスを提供することを強みに、年間2桁成長を目指し、長期的に持続可能な成長を実現する。不動産領域特化よるバーティカルSaaSは、不動産取引のすべての工程をカバーするシステムであり、また電子契約のように、外部のベンダーとAPI連携で組んで提供しているサービスとなっており、ほぼすべての工程をカバーしている。日本情報クリエイト<4054>、GA technologies<3491>、SREホールディングス<2980>など、不動産テックを展開する同業他社に対する大きな差別化要因になると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)
<NS>
1. 2023年3月期第2四半期の業績概要
いい生活<3796>の2023年3月期第2四半期累計(2022年4月−9月)の連結業績は、売上高で前年同期比10.2%増の1,287百万円、EBITDAは同23.4%増の307百万円、営業利益で同163.1%増の86百万円、経常利益は164.2%増の88百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は202.9%増の55百万円と大幅に増収増益となった。
売上高をサービス別で見ると、サブスクリプションが前年同期比5.8%増の1,072百万円、ソリューションが同39.2%増の215百万円となった。 売上構成比の83.3%をサブスクリプションであげている。サブスクリプションは月額利用料の収入など、解約の申し出がない限り毎月継続して発生する収益のため、安定した商品が売上構成比の大半を占めている。有料課金法人数は前年同期比プラス33法人の1,476法人、サービス利用店舗数は前年同期比プラス152店舗の4,489店舗と拡大している。同社のサービスを継続して利用している法人に加え、新規の受注が伸びている傾向がうかがえる。
(1)ARPUの増加とMRR解約率の低下による収益構造の改善
売上高をARPUとMRR解約率(金額ベースの解約率)という2つの指標で見てみると、2022年9月の月額ARPUは125千円と、前年同月比7千円増であった。ARPUは「Average Revenue Per User」の略で、1顧客当たりの平均売上額を示す(総売上高÷アカウント数))。ARPUの増加は利用料金の大きい新規顧客が増加していること、および既存顧客が新しいサービスを追加で購入していることを示している。同社の場合サービスを一元的に提供しているため、サービスの追加購入が起こりやすい。既存で使っているサービスをフックに新しいサービスを購入する顧客が増えていることを示している。サービスラインナップが増えれば増えるほどこの収益モデルは拡大していく仕組みとなっている。一方、MRR解約率はマイナス0.16%となった。同社で使用しているMRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)はサブスクリプション売上とイコールであるが、このMRRの金額ベースの解約率(2022年9月に失ったMRR÷2022年8月のMRR) がマイナスであるということは、当月に解約となった金額を、当月追加的に購入されたサブスクリプションが上回っていることを示しており、新規顧客獲得によるサブスクリプションの増加をカウントしない状態で既存顧客による売上が拡大していることを示す。こちらの指標も同社のサービスに対する顧客満足度が高いことを示している。
(2)人員構成
売上原価は前年同期比6.1%増の521百万円、販管費は前年同期比5.5%増の679百万円となった。旺盛な需要に対応すべくセールス&マーケティング人員の増強を図り、提供サービスの拡大によるエンジニア人材の採用を進めた。9月末時点の人員構成はセールス&マーケティング部門が71名となり、エンジニアリングにおける期末人員数は68名となった。今後も必要に応じて人員を増強していく方針である。人員規模の拡大を継続しながらも、売上の伸びに対し販売管理費の進捗率は前年並みの水準を維持している結果となり、同社のクラウドビジネスの特徴は売上高の伸びに比べて変動比率が低く、利益率が高まる構造になっていることが窺える。このため、確実で安定した収益を得やすく、顧客ニーズに合わせて素早く成長できるスケーラビリティ(拡張性)を持っているとも言える。
(3)市場環境
不動産業界における同社のターゲット顧客層は、中小企業から大手企業、地方の有力企業まで幅広い。今期、大手企業で同社のSaaSサービスの導入を決定した大手企業も複数ある。具体的に例を挙げると、(株)ハウスメイトパートナーズは、賃貸仲介件数で国内3位の(株)ハウスメイトショップのWeb予約・申込サービス「Sumai Entry」を導入している。JPMC<3276>(旧 日本管理センター)は、全国約106,000戸の管理物件に正確かつタイムリーに空室情報を配信し、入室予約・入居申込ができるサービス「ES-B2B賃貸」「いい生活Squqre」「Sumai Entry」を導入。(株)東急コミュニティーは、自宅住み替えサービス「たくす」において、同社の「いい生活Owner」の利用を開始した。このアプリにより、契約前から借主とのコミュニケーションの質が向上し、業務の効率化、生産性の向上に寄与している。東京大学生活協同組合では、提携する不動産会社を通じて様々な物件を紹介し、空き物件情報を効率的に管理し情報の鮮度を向上させるデータベースを構築している。また、同組合のホームページでは、タイムリーな情報更新を行い、問い合わせ件数をさらに増加させるための施策を講じている。
市場のリスク要因としては、景気悪化に伴う経済全体の需要減少に加えて、人口減少による需要の減少などが挙げられる。このような状況を想定した場合、同社は業界に特化したマルチプロダクト戦略をとることで物件の取り扱いデータを蓄積し、物件管理・営業支援・業者間プラットフォームなどの各種サービスと連携することで、新たな付加価値及び生産性の向上を実現することで対応していく。
一方、現在の同社を取り巻く不動産環境は、個人・法人ともに活況を呈している。不動産取引市場においては、テレワークなどによる在宅時間の長期化により、個人の住み替え需要が増加。また、円安や超低金利を背景に海外投資家のニーズは依然高く、今後も同社にとって追い風となり、事業拡大の機会になる。このような傾向が続けば、市場は今後も拡大することが予想され、同社には事業拡大の好機となると弊社では考えている。
同社は、DX推進をベースとした成長モデルの構築を不動産の賃貸や売買の領域で本格的に行ってきており、物件の取り扱いデータが蓄積されていくことと、物件管理・営業支援・業者間プラットフォームなどの各種サービスと連携することで新たな付加価値及び生産性の向上を実現していくことが強みである。既存サービスと新規サービスの融合により、不動産市場に付加価値の高いサービスを提供することを強みに、年間2桁成長を目指し、長期的に持続可能な成長を実現する。不動産領域特化よるバーティカルSaaSは、不動産取引のすべての工程をカバーするシステムであり、また電子契約のように、外部のベンダーとAPI連携で組んで提供しているサービスとなっており、ほぼすべての工程をカバーしている。日本情報クリエイト<4054>、GA technologies<3491>、SREホールディングス<2980>など、不動産テックを展開する同業他社に対する大きな差別化要因になると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石灰達夫)
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