1,835円
オイシックス・ラ・大地のニュース
■今後の見通し
1. 2023年3月期の業績見通し
デリカフーズホールディングス<3392>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比16.9%増の46,500百万円、営業利益で380百万円(前期は397百万円の損失)、経常利益で450百万円(同242百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で390百万円(同746百万円の損失)と期初計画から上方修正した。売上高は3期振りに過去最高を更新し、各利益ともに3期振りに黒字転換することになる。
売上高についてはコロナ禍が続くなかでも外国人の入国規制が緩和されたこともあり、外食業界は下期も堅調な推移が見込めるため、計画の達成は可能と見られる。利益面では電気料金の値上がりや人件費増などコストアップ要因があるものの、引き続き売価改善や生産性向上に取り組むことで期初計画を上回る見通しだ。経常利益の通期計画に対する第2四半期の進捗率は25.4%と低く見えるが、中国ロックダウンの影響による輸入品の一時的な調達コスト増の影響があったこと、下期は上期に実施した売価改善の効果により利益率が高くなる予定であることから、計画の達成は可能と見られる。2022年10月の業績を見ると売上高は単月ベースで過去最高を更新しており、経常利益も過去最高を記録した2021年第3四半期を上回る水準でスタートしている。11月は電気料金の上昇や人件費増などで利益水準は前年同月をやや下回ったもようだが、第4四半期には大幅増益が見込まれる。
(一社)日本フードサービス協会が毎月発表している外食業界の月次売上動向について見ると、2021年12月以降前年同月比でプラスに転じ、2022年10月は外国人入国制限の緩和や旅行支援策の再開などによる客足の回復、並びに値上げの影響もあって14.8%増と11ヶ月連続のプラス成長となった。また、コロナ禍前の2019年との比較においても初めて上回った。11月以降は、コロナ感染者数が拡大傾向にあり予断を許さないものの、店舗でコロナ対策を徹底していることもあり、従来よりも影響は軽微にとどまるものと考えられ、売上高は増加基調が続くものと予想される。
同社の月次売上高はコロナ禍以降に事業ポートフォリオの変革を進めてきたことで、外食業界を上回るペースで回復し、売上高は既にコロナ禍前の水準を超えて推移している。2022年4~9月の外食業界の売上高伸び率が約18%増だったのに対して、同社の伸びは34.5%増と大きく上回っている。健康意識の高まりから外食店舗での青果物の消費量が増えている可能性もあるが、大半は既存顧客における取引シェアの拡大にあると弊社では見ている。同社の場合、大手外食チェーンはほぼ顧客になっているため、新規顧客開拓による売上拡大余地は小さくなっているものの、既存顧客での取引シェアを拡大することによる拡大余地は依然大きい。実際、既存顧客である大手ファストフードチェーンと2023年2月より九州エリアでの取引を新たに開始することが決まっており、年換算で2億円強の売上貢献が見込まれている。
なお、新規事業であるミールキット事業及びBtoC事業、冷凍野菜事業の取り組みについては以下のとおりとなる。
(1) ミールキット事業及びBtoC事業の展開
ミールキット事業は、OEMと自社ブランド「楽彩」の二軸で事業展開する計画となっている。OEMでの売上高も順調に拡大している。流通系企業からの引き合いも多く今後、製造能力の増強も進めながら拡大することにしている。また、自社ブランド「楽彩」については、一般消費者向けに「新たな食のライフスタイル」を提供することをコンセプトに、生鮮野菜による健康を意識したメニュー等を開発し、ターゲット層を絞ったうえでピックアップショッピングスタイルにより提供していく。ピックアップショッピングとは、購入者が事前に注文した商品を、帰宅途中に最寄りの駅の無人ロッカーやコンビニエンスストアなどのほか、レジャー先などで受け取れるショッピングスタイルを指す。
同社にとっては受注生産となる。宅配に比べて物流コストを効率化できるほか、製造面でもカット野菜工場の稼働率を上げることが可能になるためメリットが大きい。同社のカット野菜工場では外食企業からの注文を昼過ぎから夜にかけて受け付けし、深夜に製造して翌朝に配送するケースが一般的である。午前中から午後の早い時間は稼働率が低くなるが、ミールキット商品は注文された商品を午前中から午後の早い時間に製造し、夕方に配送するケースが中心となるため、工場の稼働率を引き上げる効果が期待できる。
ミールキット事業では、生協やヨシケイ開発(株)、オイシックス(オイシックス・ラ・大地<3182>)などが先行しているが、品質面の差が出る野菜の取り扱いに関して、同社は鮮度の維持管理から真空加熱野菜等の製造に至るまで豊富なノウハウを持っており、他社にない強みになると考えている。2022年4月以降、コンビニエンスストア「NewDays」の一部店舗やキャンプ場、フィットネスクラブなどで取り扱いを開始した。下期以降はWeb広告やイベント開催などのプロモーションを展開し、認知度の向上を図る予定である。また、現在受取店舗は首都圏のみに限定しているが、将来的には全国でサービス利用を可能にする考えだ。
なお、2022年3月期のミールキット事業の売上高は1,531百万円となった。2023年3月期の売上計画は期初段階で17億円としていたが、20億円を超えるペースとなっている。当面の目標としては50億円を掲げている。ミールキットの国内市場規模は、生活スタイルの変化を受けて現在の1,600億円規模から今後は2,000億円を超える市場に育つと見られている。同社はOEMと自社ブランドの2軸で事業展開することで同市場を開拓し、数年後には収益に貢献する事業に育つものと期待される。
一方、BtoC事業のうち野菜BOXの「青果日和」(EC販売)については、月次ベースで黒字化している。当面は現状を維持し「楽彩」につなげる取り組みを検討する方針である。また、百貨店などリアル店舗での販売についても、アンテナショップのような位置付けとして今後も継続する予定だ。
トピックスとして、楽彩の「野菜がおいしい ミールキット おすすめ3品」と「おうちで楽しむ青果まるごとスムージ」5色セット(1万円分の寄付)が、足立区のふるさと納税「ふるさとチョイス」に2022年10月より参画することを発表した。現在は製造拠点のある足立区のみだが、今後、関西やその他エリアにも製造拠点ができれば現地自治体のふるさと納税に参画する意向である。
(2) 冷凍野菜事業の取り組みについて
同社は冷凍野菜の量産に向けて、2022年4月に愛知事業所内に約3億円をかけて冷凍野菜工場を新設した。既に製造技術は確立済みで、冷凍弁当事業者など既に引き合いも多くきている状況にある。こうしたなかで、同社は高付加価値事業として育成すべく、優先順位を決めて試作を行っている段階にある。商品のイメージとしては、3~4品のカット野菜をパッケージングして商品化する方向にあるようで、2024年3月期中の量産開始を目標にしている。同社は野菜の商品形態として生野菜、カット野菜、加熱野菜を揃えているが、冷凍野菜も加わることですべての形態が揃うことになり、顧客開拓並びに既存顧客との一段の取引深耕が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SI>
1. 2023年3月期の業績見通し
デリカフーズホールディングス<3392>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比16.9%増の46,500百万円、営業利益で380百万円(前期は397百万円の損失)、経常利益で450百万円(同242百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で390百万円(同746百万円の損失)と期初計画から上方修正した。売上高は3期振りに過去最高を更新し、各利益ともに3期振りに黒字転換することになる。
売上高についてはコロナ禍が続くなかでも外国人の入国規制が緩和されたこともあり、外食業界は下期も堅調な推移が見込めるため、計画の達成は可能と見られる。利益面では電気料金の値上がりや人件費増などコストアップ要因があるものの、引き続き売価改善や生産性向上に取り組むことで期初計画を上回る見通しだ。経常利益の通期計画に対する第2四半期の進捗率は25.4%と低く見えるが、中国ロックダウンの影響による輸入品の一時的な調達コスト増の影響があったこと、下期は上期に実施した売価改善の効果により利益率が高くなる予定であることから、計画の達成は可能と見られる。2022年10月の業績を見ると売上高は単月ベースで過去最高を更新しており、経常利益も過去最高を記録した2021年第3四半期を上回る水準でスタートしている。11月は電気料金の上昇や人件費増などで利益水準は前年同月をやや下回ったもようだが、第4四半期には大幅増益が見込まれる。
(一社)日本フードサービス協会が毎月発表している外食業界の月次売上動向について見ると、2021年12月以降前年同月比でプラスに転じ、2022年10月は外国人入国制限の緩和や旅行支援策の再開などによる客足の回復、並びに値上げの影響もあって14.8%増と11ヶ月連続のプラス成長となった。また、コロナ禍前の2019年との比較においても初めて上回った。11月以降は、コロナ感染者数が拡大傾向にあり予断を許さないものの、店舗でコロナ対策を徹底していることもあり、従来よりも影響は軽微にとどまるものと考えられ、売上高は増加基調が続くものと予想される。
同社の月次売上高はコロナ禍以降に事業ポートフォリオの変革を進めてきたことで、外食業界を上回るペースで回復し、売上高は既にコロナ禍前の水準を超えて推移している。2022年4~9月の外食業界の売上高伸び率が約18%増だったのに対して、同社の伸びは34.5%増と大きく上回っている。健康意識の高まりから外食店舗での青果物の消費量が増えている可能性もあるが、大半は既存顧客における取引シェアの拡大にあると弊社では見ている。同社の場合、大手外食チェーンはほぼ顧客になっているため、新規顧客開拓による売上拡大余地は小さくなっているものの、既存顧客での取引シェアを拡大することによる拡大余地は依然大きい。実際、既存顧客である大手ファストフードチェーンと2023年2月より九州エリアでの取引を新たに開始することが決まっており、年換算で2億円強の売上貢献が見込まれている。
なお、新規事業であるミールキット事業及びBtoC事業、冷凍野菜事業の取り組みについては以下のとおりとなる。
(1) ミールキット事業及びBtoC事業の展開
ミールキット事業は、OEMと自社ブランド「楽彩」の二軸で事業展開する計画となっている。OEMでの売上高も順調に拡大している。流通系企業からの引き合いも多く今後、製造能力の増強も進めながら拡大することにしている。また、自社ブランド「楽彩」については、一般消費者向けに「新たな食のライフスタイル」を提供することをコンセプトに、生鮮野菜による健康を意識したメニュー等を開発し、ターゲット層を絞ったうえでピックアップショッピングスタイルにより提供していく。ピックアップショッピングとは、購入者が事前に注文した商品を、帰宅途中に最寄りの駅の無人ロッカーやコンビニエンスストアなどのほか、レジャー先などで受け取れるショッピングスタイルを指す。
同社にとっては受注生産となる。宅配に比べて物流コストを効率化できるほか、製造面でもカット野菜工場の稼働率を上げることが可能になるためメリットが大きい。同社のカット野菜工場では外食企業からの注文を昼過ぎから夜にかけて受け付けし、深夜に製造して翌朝に配送するケースが一般的である。午前中から午後の早い時間は稼働率が低くなるが、ミールキット商品は注文された商品を午前中から午後の早い時間に製造し、夕方に配送するケースが中心となるため、工場の稼働率を引き上げる効果が期待できる。
ミールキット事業では、生協やヨシケイ開発(株)、オイシックス(オイシックス・ラ・大地<3182>)などが先行しているが、品質面の差が出る野菜の取り扱いに関して、同社は鮮度の維持管理から真空加熱野菜等の製造に至るまで豊富なノウハウを持っており、他社にない強みになると考えている。2022年4月以降、コンビニエンスストア「NewDays」の一部店舗やキャンプ場、フィットネスクラブなどで取り扱いを開始した。下期以降はWeb広告やイベント開催などのプロモーションを展開し、認知度の向上を図る予定である。また、現在受取店舗は首都圏のみに限定しているが、将来的には全国でサービス利用を可能にする考えだ。
なお、2022年3月期のミールキット事業の売上高は1,531百万円となった。2023年3月期の売上計画は期初段階で17億円としていたが、20億円を超えるペースとなっている。当面の目標としては50億円を掲げている。ミールキットの国内市場規模は、生活スタイルの変化を受けて現在の1,600億円規模から今後は2,000億円を超える市場に育つと見られている。同社はOEMと自社ブランドの2軸で事業展開することで同市場を開拓し、数年後には収益に貢献する事業に育つものと期待される。
一方、BtoC事業のうち野菜BOXの「青果日和」(EC販売)については、月次ベースで黒字化している。当面は現状を維持し「楽彩」につなげる取り組みを検討する方針である。また、百貨店などリアル店舗での販売についても、アンテナショップのような位置付けとして今後も継続する予定だ。
トピックスとして、楽彩の「野菜がおいしい ミールキット おすすめ3品」と「おうちで楽しむ青果まるごとスムージ」5色セット(1万円分の寄付)が、足立区のふるさと納税「ふるさとチョイス」に2022年10月より参画することを発表した。現在は製造拠点のある足立区のみだが、今後、関西やその他エリアにも製造拠点ができれば現地自治体のふるさと納税に参画する意向である。
(2) 冷凍野菜事業の取り組みについて
同社は冷凍野菜の量産に向けて、2022年4月に愛知事業所内に約3億円をかけて冷凍野菜工場を新設した。既に製造技術は確立済みで、冷凍弁当事業者など既に引き合いも多くきている状況にある。こうしたなかで、同社は高付加価値事業として育成すべく、優先順位を決めて試作を行っている段階にある。商品のイメージとしては、3~4品のカット野菜をパッケージングして商品化する方向にあるようで、2024年3月期中の量産開始を目標にしている。同社は野菜の商品形態として生野菜、カット野菜、加熱野菜を揃えているが、冷凍野菜も加わることですべての形態が揃うことになり、顧客開拓並びに既存顧客との一段の取引深耕が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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