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グリムスのニュース
―環境政策はコロナ禍克服に向けた新型公共投資、日米新政権が本格注力姿勢強める-
米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領の勝利がほぼ決まり、来年1月の米国の「パリ協定」復帰が確実となった。日本政府も2050年までに「温暖化ガス排出量の実質ゼロ」を掲げており、日米両国ともに脱炭素社会に向けて舵を切った。いまや、世界の環境政策は大きな転換点を迎え、市場では「再生可能エネルギー」関連株に対する関心は高まるばかりだ。世界的な株式市場の中核テーマとして浮上した再生エネ関連株の行方を探った。
●「温暖化ガス排出量ゼロ」へ石炭火力発電の政策も抜本的に転換
来年1月の発足が見込まれるバイデン新政権は、「環境」を目玉政策に取り上げており、超大国である米国のエネルギー政策が大きく変わる。それはすなわち環境意識がグローバルで高まることを示唆する。再生可能エネルギーとしては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などが注目されるが、太陽光発電などは省エネ技術で日本が先行したものの、今や太陽電池の世界トップは中国であり、風力発電なども海外勢が先行する。現時点で遅れを取っている日本においても、政府が成長戦略として再生可能エネルギーなどの技術革新や投資を促すことになる。
菅首相は10月下旬に召集された臨時国会において所信表明演説を行った。同首相は、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力することを表明し、50年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロとすることを宣言した。「温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要」と力説している。世界のグリーン産業を牽引し、経済と環境の好循環をつくり出すため、具体的には規制改革などの政策を総動員するほか、国と地方で検討を行う新たな場を創設する。石炭火力発電に対する政策も抜本的に転換し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることにより、安定的なエネルギー供給を確立するとした。
●「グリーンエネルギー投資」は成長戦略のひとつに
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)が公表している部門別の二酸化炭素の直接排出量の割合データを見ると、経済活動の中で最も二酸化炭素を排出するのは発電所などのエネルギー転換部門であることがわかる。しかし、日本の再生可能エネルギー導入比率は、諸外国に比べ高いとは言いがたいのが現状だ。
再生可能エネルギー導入比率が思うように高まらない一因には、発電コストが国際水準と比較して高いことが指摘されている。例えば、日本と欧州を比較してみると、非住宅向け太陽光発電システムの費用には2倍近くの差があり、発電コストの高さがネックというわけである。高コストの電源を使えば、当然企業や家計の電気代の増大につながり、経済成長の制約要因となる。菅首相は経済成長の制約にならないと述べているが、これは「積極的な温暖化対策が産業構造や経済社会の変革をもたらし、結果的に全体として大きな成長につながる」ということであり、そういった意味で「グリーンエネルギー投資」を成長戦略のひとつと捉えている。グリーンエネルギー投資は余剰地が豊富な地方で推進することが適している面もあるため、地方創生の起爆剤となり得るともみられている。
●「国策に売りなし」で環境関連は人気化へ
1930年代に世界恐慌で疲弊した経済を立て直すため、当時の米ルーズベルト大統領が「ニューディール政策」を実施したことは世界的に知られているところだ。菅政権が掲げた方針は、新型コロナウイルス感染症の拡大による経済危機を克服するための「日本版グリーンニューディール政策」と呼ぶ声も聞かれる。菅首相のグリーンエネルギー投資を新型の公共投資として、経済回復・成長の柱と捉えれば、相場の世界では「売りなし」とされる国策として、関連する企業には強い追い風が吹く格好になるだろう。
菅首相は関係省庁に対策の検討を指示しているところだが、現在伝わっているものとしては温暖化ガスの削減につながる製品の生産設備への投資に優遇税制を導入するほか、研究開発を支援する基金を創設するようだ。国を挙げて技術革新や「グリーン投資」を推進して次世代の成長につなげるとして、年末にまとめる21年度税制改正大綱や20年度第3次補正予算案などに盛り込むもようだ。
●太陽光関連では、フジプレアムやフィット、アストマクスなど
再生可能エネルギーのなかでも 太陽光発電については、農地法や農業振興地域法などで規制されている荒廃した農地を転用してパネル設置を可能とするほか、土地造成が不要な場所に設置が可能となれば、地方の耕作放棄地の有効活用にもなるため地方経済の活性化につながるだろう。
関連銘柄としては、太陽電池製造装置で新しい素材や構造への対応といった顧客ニーズにあわせた製造装置を提案しているエヌ・ピー・シー <6255> [東証M]のほか、アルバック <6728> は大型基板、多品種基板に対応し太陽電池生産ラインの成膜プロセスに対応した装置を手掛けている。グリムス <3150> [東証2]は環境や省エネなどを事業領域にしており、グループのグリムスソーラーにおいて、住宅用太陽光発電システムなどの再生可能エネルギー開発事業を行う。
フジプレアム <4237> [JQ]は超軽量太陽電池モジュール「希」をはじめとするモジュール製造、ウエストホールディングス <1407> [JQ]は再生可能エネルギーを軸としたトータルエネルギーソリューションを提供しているほか、フィット <1436> [東証M]は太陽光発電所やバイオマス発電所などの用地から設計施工管理まで企画開発を行う。霞ヶ関キャピタル <3498> [東証M]は太陽光などの自然エネルギーを対象とした開発・販売を手掛けており、アストマックス <7162> [JQ]は再生可能エネルギーなどを利用した発電及び電気の供給に関する事業を行っている。協和コンサルタンツ <9647> [JQ]は再生可能エネルギーの地産地消による地域活性化を支援する。
●洋上風力発電で川崎地質や東亜建、アジア航などに追い風
風力発電については、政府が今年7月に洋上風力の主力電源化を目指し、30年までに発電容量を原発10基分に当たる1000万キロワットとする目標を示している。再生可能エネルギー普及の切り札として期待されており、これから重要政策の実現に向けた技術開発が加速するだろう。現在は洋上風力発電の促進地域を対象に事業者を選定する作業が進められている。
国際石油開発帝石 <1605> は再生可能エネルギー事業を次世代事業の柱と位置付けている。太陽光発電や地熱発電などを手掛けており、風力発電事業に本格的に参入するほか、洋上風力についても参入を検討しているようだ。東亜建設工業 <1885> と大林組 <1802> は洋上風力発電所の建設を目的とした自動昇降式作業台船(SEP)の建造を18年に決定しており、23年完成予定となる。川崎地質 <4673> [JQ]は洋上風力発電の設計に必要な工学的基盤の分布などで音波探査を使った地盤情報を提供。千代田化工建設 <6366> [東証2]はプラントや社会インフラ整備などを手掛けており、洋上風力発電などの再生可能エネルギーの建設事業を強化。NTN <6472> では風力発電装置の心臓部で使われる主軸、増速機、減速機、発電機などを手掛けている。
アジア航測 <9233> [東証2]はコンサルティングサービスを提供しており、電力設備の計画や管理のための計測やシステムを提供しているほか、応用地質 <9755> は洋上風力発電市場における環境アセスと地質調査を手掛けている。五洋建設 <1893> は洋上風力発電の導入に際して幅広いソリューションを提供しており、風況シミュレーションから風車設置地点の適地選定、現地調査、洋上における風車の建設などをトータルで行う。駒井ハルテック <5915> では高い疲労強度と耐風強度を保持した風車を製造している。
●バイオマス関連でタケエイ、報国鉄、酉島など
バイオマス発電については、木質バイオマスでは国産の木を使うことによるエネルギー自給率の向上に加え、災害など緊急時の電力供給確保の面でも普及が期待されている。バイオマス発電所のほか、バイオマスなどの多様な燃料から電気、蒸気を作り出す発電設備やバイオマスボイラ、バイオマス発電ボイラ給水ポンプなどを手掛けている企業が注目されよう。
タケエイ <2151> は廃棄物の資源循環システムを構築しており、木くずを木質チップにしてバイオマス発電施設の燃料材としている。住友重機械工業 <6302> はバイオマス専焼発電設備を手掛けているほか、新報国製鉄 <5542> [JQ]はバイオマス発電ボイラ向けなどの部品を提供。また、タクマ <6013> や東洋エンジニアリング <6330> はバイオマス発電所建設を行っている。兼松エンジニアリング <6402> [東証2]はバイオマス再資源化装置を手掛けている。酉島製作所 <6363> ではバイオマス発電所で使われるボイラ給水ポンプを製造している。そのほか、これら発電設備においては関電工 <1942> 、北陸電気工事 <1930> などの設備工事のほか、電線やケーブルなどの需要が見込まれるため、古河電気工業 <5801> 、昭和電線ホールディングス <5805> 、東京特殊電線 <5807> なども注目されよう。
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