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きちりホールディングスのニュース
■今後の見通し
1. 2022年6月期の業績見通し
2022年6月期の業績は、コロナ禍の動向が依然不透明で合理的な業績予想の算出が困難なことから未定としており、適正かつ合理的な算出が可能となった段階で速やかに開示する方針としている。四半期ベースの業績推移を見ると、第2四半期は前年同期比で増収に転じたが、1月下旬にオミクロン株の感染拡大によるまん延防止等重点措置が主要都市で発出されたことを受け、再び不透明感が強まっている。きちりホールディングス<3082>においても対象エリアで「KICHIRI」などのディナー業態について営業時間の短縮や臨時休業を実施している。ただ、前年の同時期(2021年1月8日~3月21日)は緊急事態宣言が発出されたことで売上水準も低迷していたことから、前年同期比では増収となる可能性が高い。また、助成金制度も継続することから経常利益段階では黒字基調が続くものと弊社では見ている。
2022年1月の売上高は全店ベースで前年同月比92.7%増、既存店ベースで同80.0%増となっている。一時的に通常営業体制に戻ったディナー業態についても前年同月比で大きく回復したものの、コロナ禍前となる2020年1月の水準と比較すると7~8割の水準にとどまっている。宴会など団体客の予約件数が戻り切っていないことが要因と見られる。下期の出店計画については未定だが、商業施設業態については条件に適う物件が見つかれば前向きに出店を検討していく意向だ。商業施設業態については2021年6月期も売上高営業利益率で7%程度と高収益を維持しており、同社の収益ドライバーとなっているためだ。なお、2022年春の新卒採用者数も前年並みの水準を予定している。
既存事業の強化とフードテック企業としての進化に取り組む
2. 今後の成長戦略
(1) 既存事業の強化
コロナ禍が長期化し外食業界、とりわけ居酒屋業態は厳しい環境が続いており、店舗数の縮小や業態転換を図る企業も出てきている。同社においても「KICHIRI」を中心に営業時間短縮や臨時休業を強いられるなかで売上減少が続いている。売上高構成比で見ると、ディナー業態は2020年6月期の62.3%から2021年6月期は52.0%に低下し、2022年6月期第2四半期累計では50%を下回ったと見られる。一方で、商業施設業態については「いしがまやハンバーグ」を筆頭に収益力の高い業態を相次いで開発しており、コロナ禍でも堅調に推移している。
このため、飲食事業においては収益力の高い商業施設業態の出店拡大を図ることで、ディナー業態の低迷をカバーしていく戦略となっている。商業施設店舗の強みとしては食事が主体で酒類規制の影響を受けにくいことや、高単価メニューが受け入れられやすい点などが挙げられる。また、ショッピングモール等の郊外大型商業施設については引き続き開発が進められており、そのなかで出店する飲食店舗についても一定以上のブランド力を持っていることが求められている。このため「いしがまやハンバーグ」などを中心に同社店舗の出店機会も増えていくことが予想される。2021年12月末の商業施設業態の店舗数は49店舗で全店舗に占める比率は44%(前期末は38%)まで上昇しているが、今後もその比率はさらに上昇していくものと予想される。
一方、ディナー業態についてはアフターコロナを見据えた施策に取り組んでいる。酒類提供制限が解除された2021年12月下旬から2022年1月にかけて、ディナー業態の店舗売上はコロナ禍前の7~8割水準までにしか戻っておらず、コロナ禍が収束しても収益の回復が限定的にとどまるリスクがあるためだ。具体的には、宴会など団体客が減少することを想定して、少人数で利用する客層あるいは若年層・女性層をターゲットとした商品メニューの開発(デザートメニューやノンアルコールドリンクの拡充)、ならびに集客施策(若年層に訴求力の高い販促媒体に注力)に取り組んでいる。また、テイクアウトやデリバリーサービスなどを強化することで店舗の収益底上げも図っていく。
(2) フードテック企業としての進化
a) レストランX
コロナ禍でライフスタイルが大きく変化するなかで「食」に関しても個食化が進み、外食・中食・小売のボーダレス化が進む状況となっている。こうした環境下で新たな収益機会を求めるべく2020年に新設した子会社のレストランXにて、デリバリーやD2C事業を展開している。初台(東京都新宿区)にあるセントラルキッチンを拠点にして、デリバリー用の様々な業態メニューを開発し、そのなかで利用頻度の高い業態を磨き上げ、売上の獲得につなげている。配送業務については専門事業者に外注しているが、それでも一定の収益は確保できているようだ。
また、D2C事業では2020年5月に「CHAVATY」オンラインサイトを開設し、EC販売を開始している。製造は初台のセントラルキッチンで行っているため、量産効果も効きやすい。販売商品もCHAVATYだけでなく、スコーンやスイーツなど拡充を図っている。今後もEC販売が可能な商品の開発に取り組み、ECでの収益拡大も進めていく計画となっている。そのほかレストランXでは、デリバリーや既存店のナレッジを集約し、FC専用業態の開発にも取り組んでおり、店内飲食だけでなくテイクアウト、デリバリーなどと融合した業態を展開していく考えだ。
なお、レストランXについては事業規模がまだ小さいことから非連結対象会社となっているが、こうした取り組みが順調に進めば連結対象に加わる見通しだ。
b) ApplyNow
ApplyNowが開発・提供している録画型Web面接プラットフォーム「ApplyNow」については、オプション機能として電子雇用契約機能やAI評価機能を追加するなど利便性の向上を図っている。このうち電子雇用契約機能は、「ApplyNow」と組み合わせることで採用面接から雇用契約締結までワンストップで処理することが可能となり、業務のさらなる効率化を実現できる。また、電子雇用契約にすることで収入印紙が不要となり、契約書の保存コストも削減できるなどのメリットも享受できる。
外食企業のアルバイト採用ソリューションとして開発したサービスとなるが、直近では様々な業種の企業の新卒採用や自治体の採用試験等にも導入が進んでいる。利用料金は導入店舗数や利用オプション等によって異なるが、1社当たりで月額10~50万円と比較的リーズナブルな価格設定となっている。収益化の時期については、機能の拡充を今後も進めていくため未定だが、成長ポテンシャルは大きく比較的早期に連結業績に貢献してくるものと期待される。
c) PFS事業
PFS事業では、今後も独創的な技術やアイデアを持つITベンチャーとのCVCや業務提携を進めていくことで、自社店舗の生産性向上を図るだけでなく、PFSの顧客企業にも先進的なITサービスを提供していくことで収益基盤を拡大していく戦略となっている。現状はコロナ禍で伸び悩んでいるものの、アフターコロナにおいては導入企業も増加していくものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2022年6月期の業績見通し
2022年6月期の業績は、コロナ禍の動向が依然不透明で合理的な業績予想の算出が困難なことから未定としており、適正かつ合理的な算出が可能となった段階で速やかに開示する方針としている。四半期ベースの業績推移を見ると、第2四半期は前年同期比で増収に転じたが、1月下旬にオミクロン株の感染拡大によるまん延防止等重点措置が主要都市で発出されたことを受け、再び不透明感が強まっている。きちりホールディングス<3082>においても対象エリアで「KICHIRI」などのディナー業態について営業時間の短縮や臨時休業を実施している。ただ、前年の同時期(2021年1月8日~3月21日)は緊急事態宣言が発出されたことで売上水準も低迷していたことから、前年同期比では増収となる可能性が高い。また、助成金制度も継続することから経常利益段階では黒字基調が続くものと弊社では見ている。
2022年1月の売上高は全店ベースで前年同月比92.7%増、既存店ベースで同80.0%増となっている。一時的に通常営業体制に戻ったディナー業態についても前年同月比で大きく回復したものの、コロナ禍前となる2020年1月の水準と比較すると7~8割の水準にとどまっている。宴会など団体客の予約件数が戻り切っていないことが要因と見られる。下期の出店計画については未定だが、商業施設業態については条件に適う物件が見つかれば前向きに出店を検討していく意向だ。商業施設業態については2021年6月期も売上高営業利益率で7%程度と高収益を維持しており、同社の収益ドライバーとなっているためだ。なお、2022年春の新卒採用者数も前年並みの水準を予定している。
既存事業の強化とフードテック企業としての進化に取り組む
2. 今後の成長戦略
(1) 既存事業の強化
コロナ禍が長期化し外食業界、とりわけ居酒屋業態は厳しい環境が続いており、店舗数の縮小や業態転換を図る企業も出てきている。同社においても「KICHIRI」を中心に営業時間短縮や臨時休業を強いられるなかで売上減少が続いている。売上高構成比で見ると、ディナー業態は2020年6月期の62.3%から2021年6月期は52.0%に低下し、2022年6月期第2四半期累計では50%を下回ったと見られる。一方で、商業施設業態については「いしがまやハンバーグ」を筆頭に収益力の高い業態を相次いで開発しており、コロナ禍でも堅調に推移している。
このため、飲食事業においては収益力の高い商業施設業態の出店拡大を図ることで、ディナー業態の低迷をカバーしていく戦略となっている。商業施設店舗の強みとしては食事が主体で酒類規制の影響を受けにくいことや、高単価メニューが受け入れられやすい点などが挙げられる。また、ショッピングモール等の郊外大型商業施設については引き続き開発が進められており、そのなかで出店する飲食店舗についても一定以上のブランド力を持っていることが求められている。このため「いしがまやハンバーグ」などを中心に同社店舗の出店機会も増えていくことが予想される。2021年12月末の商業施設業態の店舗数は49店舗で全店舗に占める比率は44%(前期末は38%)まで上昇しているが、今後もその比率はさらに上昇していくものと予想される。
一方、ディナー業態についてはアフターコロナを見据えた施策に取り組んでいる。酒類提供制限が解除された2021年12月下旬から2022年1月にかけて、ディナー業態の店舗売上はコロナ禍前の7~8割水準までにしか戻っておらず、コロナ禍が収束しても収益の回復が限定的にとどまるリスクがあるためだ。具体的には、宴会など団体客が減少することを想定して、少人数で利用する客層あるいは若年層・女性層をターゲットとした商品メニューの開発(デザートメニューやノンアルコールドリンクの拡充)、ならびに集客施策(若年層に訴求力の高い販促媒体に注力)に取り組んでいる。また、テイクアウトやデリバリーサービスなどを強化することで店舗の収益底上げも図っていく。
(2) フードテック企業としての進化
a) レストランX
コロナ禍でライフスタイルが大きく変化するなかで「食」に関しても個食化が進み、外食・中食・小売のボーダレス化が進む状況となっている。こうした環境下で新たな収益機会を求めるべく2020年に新設した子会社のレストランXにて、デリバリーやD2C事業を展開している。初台(東京都新宿区)にあるセントラルキッチンを拠点にして、デリバリー用の様々な業態メニューを開発し、そのなかで利用頻度の高い業態を磨き上げ、売上の獲得につなげている。配送業務については専門事業者に外注しているが、それでも一定の収益は確保できているようだ。
また、D2C事業では2020年5月に「CHAVATY」オンラインサイトを開設し、EC販売を開始している。製造は初台のセントラルキッチンで行っているため、量産効果も効きやすい。販売商品もCHAVATYだけでなく、スコーンやスイーツなど拡充を図っている。今後もEC販売が可能な商品の開発に取り組み、ECでの収益拡大も進めていく計画となっている。そのほかレストランXでは、デリバリーや既存店のナレッジを集約し、FC専用業態の開発にも取り組んでおり、店内飲食だけでなくテイクアウト、デリバリーなどと融合した業態を展開していく考えだ。
なお、レストランXについては事業規模がまだ小さいことから非連結対象会社となっているが、こうした取り組みが順調に進めば連結対象に加わる見通しだ。
b) ApplyNow
ApplyNowが開発・提供している録画型Web面接プラットフォーム「ApplyNow」については、オプション機能として電子雇用契約機能やAI評価機能を追加するなど利便性の向上を図っている。このうち電子雇用契約機能は、「ApplyNow」と組み合わせることで採用面接から雇用契約締結までワンストップで処理することが可能となり、業務のさらなる効率化を実現できる。また、電子雇用契約にすることで収入印紙が不要となり、契約書の保存コストも削減できるなどのメリットも享受できる。
外食企業のアルバイト採用ソリューションとして開発したサービスとなるが、直近では様々な業種の企業の新卒採用や自治体の採用試験等にも導入が進んでいる。利用料金は導入店舗数や利用オプション等によって異なるが、1社当たりで月額10~50万円と比較的リーズナブルな価格設定となっている。収益化の時期については、機能の拡充を今後も進めていくため未定だが、成長ポテンシャルは大きく比較的早期に連結業績に貢献してくるものと期待される。
c) PFS事業
PFS事業では、今後も独創的な技術やアイデアを持つITベンチャーとのCVCや業務提携を進めていくことで、自社店舗の生産性向上を図るだけでなく、PFSの顧客企業にも先進的なITサービスを提供していくことで収益基盤を拡大していく戦略となっている。現状はコロナ禍で伸び悩んでいるものの、アフターコロナにおいては導入企業も増加していくものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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