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―生成AIで利便性アップ、観光・行政・医療をはじめマルチなシーンで大活躍―
「チャットボット」が飛躍期を迎えている。躍進を後押ししているのが、一大ムーヴメントとなっているチャットGPTをはじめとした 「生成AI」技術だ。深刻な人手不足も強い追い風となり、株式市場でも熱い視線が向かう。一般企業や自治体などさまざまなシーンでの活用が進んでおり、まさに日の出の勢いだ。 チャットボット関連株のいまを追った。
●覚醒のキッカケは「チャットGPT」
今更ながらだが、チャットボットとは「チャット」と「ボット(ロボット)」を合体させた造語で、人工知能(AI)を活用し、質問者の問いに自動で返答してくれる「自動会話プログラム」のことだ。「けっこう昔からあったじゃない?」と疑問を持つ人も多いと思うが、最近のチャットボットは以前とは一味も二味も違う。かつての痒(かゆ)いところに手の届かないモヤモヤ感が残るものとは違い、現在はAI自らが自然な文章を作成し適切な回答を行う「生成AI」技術が用いられたことで、利便性が飛躍的に向上した。
チャットボットに関しては、以前から株式市場でも注目されてはいたが、いま一つ盛り上がらなかった経緯がある。しかし昨年1月、マイクロソフト
●人手不足大国ニッポンに強力な助っ人
コロナ禍では、非対面業務へのニーズが高まり、チャットボットでの対応が急速に拡大した。また、少子高齢化が進み労働力が減少傾向にあるなか、訪日客の急増で人材不足に拍車が掛かっており、最近では「人手不足倒産」という言葉すら耳にするようになり、チャットボットは人手に代わる強力な助っ人としての存在感を高めている。AIが人間の代わりに、24時間、質問に対して適切な回答をすることで、 コールセンターやカスタマーサービス業務でのコスト削減に大きく貢献している。
チャットボットの利用は、観光業界をはじめ、行政から医療まで幅広い分野でここ急速に広がっている。例えば、インバウンド需要の急拡大で深刻な人手不足に陥っている観光業界では、観光案内をはじめ宿泊先の予約からプランの提案までチャットボットが活躍している。昨年10月には、大阪観光局が急増する訪日客に対応するため、公式観光情報サイトに日本初の20言語以上で対応可能な生成AIチャットボットを導入した。2025年に大阪・関西万博を控えるなか、更なる訪日客の増加が予想されており、既存のAIチャットボットを刷新し、大幅に機能拡充を行った。観光案内所やコールセンターでの多言語での問い合わせに対する利便性向上と、観光情報の管理業務の省力化の両立を図るのが狙いだ。
マイクロソフトのオープンAIへの追加投資をキッカケに始まった“生成AI狂騒曲”だが、これに絡むチャットボット関連株には、1年を経たいまもなお株式市場の注目度は高い。今月17日の取引終了後、ショーケース <3909> [東証S]が自社のAIチャットボットサービス「おもてなしSuite CX」が、ジェーシービー(東京都港区)の全社向けポータルサイトに採用されたと発表。これを好感し翌日にはストップ高となり、投資家の関心の高さをうかがわせるものとなった。ユーザーの疑問を迅速に解決・問い合わせの傾向を定量分析できる環境を提供することで、「社内問い合わせの工数削減」を目指すジェーシービーのニーズに応えるとしている。
●インフォネは“第2世代”で攻勢
インフォネット <4444> [東証G]もチャットボットシステムなどAI分野に、積極的に経営資源を投下している。Webサイトのデザインやコンテンツ管理・運営が主力だが、会話の分岐が可能な第2世代AIチャットボットのサービス提供など、この分野でも頭角を現している。株価は、昨年4月にオープンAIのサム・アルトマンCEOが来日し、研究開発の拠点を日本に設立する意向を示したことで、AI関連銘柄の一角がにわかに活気づくなかインフォネも上昇加速。6月には2870円の高値をつけたが、その後は調整し現在は高値から半値以下の1200円近辺で推移しており、値ごろ感も浮上している。24年3月期の営業利益は、前期比25.0%増の1億7700万円を計画しており、最高益更新の見通しだ。
●活躍領域広げるメタリアル
AI自動翻訳で株式市場でも注目されるメタリアル <6182> [東証G]だが、チャットボット分野にも注力している。昨年6月に子会社のロゼッタが、どのようなサイトにも簡単にAIチャットボットを設置できる「ChatM.AI」の提供を開始。10月にはロゼッタが東洋経済新報社(東京都中央区)と共同で、チャットGPTを活用し学習させた四季報の最新データを基に、ユーザーが求める回答をスピーディーに得られる「四季報AI」正式版の提供を開始するなど、活躍領域を広げている。24年2月期の業績は、営業利益段階で前期比43.1%増の7億3700万円と連続で最高益更新を予想する。また、東証がプライム市場の上場企業に重要情報の英文開示を義務化する案が伝わっており、翻訳事業を手掛ける同社も関連株の一角として思惑が高まっている。ちなみに、同社の決算短信はロゼッタの翻訳エンジンによる英文資料を開示しており、人間による訳文修正は行っていないという。
●ユーザーロカは採用相次ぐ
ユーザーローカル <3984> [東証P]は、ビッグデータ解析やAIを活用した業務支援ツールを提供しニーズを捉えているが、ここチャットボット分野でも活躍が目立つ。同社は昨年11月、東京都港区に庁内の問い合わせの対応効率化を目的として、総合行政ネットワークLGWANに対応した自動応答システム「サポートチャットボットfor LGWAN」の提供を発表。更に、12月には麺類や関連食料品の製造・販売を行うシマダヤ(東京都渋谷区)に、社内の幅広い質問に自動応答する同社のAIチャットボットを提供したことを発表している。業績も好調で、24年6月期は売上高、営業利益ともに2ケタ成長が続く見通し。株価は上昇一服も、当面は目が離せない展開が続きそうだ。
●サイネックス、自治体と強力タッグへ
地方創生支援ビジネスを幅広く展開するサイネックス <2376> [東証S]だが、自治体向けでは住民の質問にAIが自動応答する「AIチャットボット」での攻勢を強めている。自治体との連携を強めるなか、数多くの契約締結やサービス開始につなげている。24年3月期営業利益は前期比7.4%増の5億2000万円を計画しており増益基調を堅持。PBR0.6倍台と割安感もある。今年に入り、再び生成AI関連株に物色の矛先が向く状況で、同社株にも投資資金が流れ込み株価が急伸した。18日には、ストップ高の1038円まで買われたが、現在は800円台半ばで推移している。
●成長ロードを快走するトリプラ
tripla <5136> [東証G]は、宿泊予約エンジン「tripla Book」を中心に、会話ツールのAIチャットボットシステム「tripla Bot」などを提供し、旅行需要の回復を追い風に成長ロードを快走している。多言語対応が可能で、パソコンやスマートフォンの設定言語に従い、英語・日本語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語の中からユーザーに最も適切な言語を自動検知しチャットを開始できるという。海外M&Aにも積極的だが、今月24日にはシンガポールに本社を置き、宿泊施設向けの予約エンジンの開発・販売を手掛けるENDURANCE TECHNOLOGY SOLUTIONの株式を取得し子会社化すると発表。海外事業の拡大にも期待が高まっている。
●GENOVAは医療特化で差別化
医療情報サイトの運営を行うGENOVA <9341> [東証G]は、患者の問い合わせに24時間自動で回答するクリニック専用サービス「NOMOCa AI chat」を昨年7月にリリースするなど、チャットGPTを活用した取り組みを進めている。12月には、モルゲンロット(東京都千代田区)と共同開発したAIチャット「Medical DOC AI」β版の試験運用を開始したと発表。同サービスは、ユーザーが体の症状や病気、クリニックについて質問や相談をすると、同社運営の医療情報サイト掲載の記事から、AIが適切な医療情報や近隣にあるおすすめのクリニック情報をチャット形式で答えてくれる。まずはβ版で試験運用を開始し、改善しながらより良いサービスを目指す。24年3月期は、営業利益段階で前期比27.3%増の22億700万円を予想しており、連続で最高益を更新する見込みだ。
株探ニュース
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