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―代替タンパク質の開発本格化へ、政府も新成長産業の育成に本腰―
先端技術を駆使して、まったく新しいかたちで食品や調理法などを開発する「フードテック」への関心が高まっている。背景には世界的な人口増加や低・中所得国の経済成長に伴う食料需要の拡大、フードロス、地球温暖化などによる気候変動、農業をはじめとした食に関わる就労人口の減少といった問題に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で食料の安定供給に対する不安が高まっていることが挙げられる。政府はさまざまな課題解決の可能性を秘めるフードテックを成長産業に育てたい考えで、関連銘柄のビジネス機会は今後一段と広がりそうだ。
●官民協議会で課題解決へ
農林水産省は2020年10月、フードテック分野での官民連携の推進を目的とした「フードテック官民協議会」を設立した。同年4月に立ち上げたフードテック研究会での議論の方向性を踏まえ、食・農林水産業の発展と食料安全保障の強化に資する資源循環型の食料供給システム構築や、高い食の質を実現する新興技術の基盤を確保するため、協調領域の課題解決の促進や新市場の開拓を後押しする。
持続可能な食料供給を可能とするフードシステムへの関心は世界的に高まっており、代替タンパク質については、欧州委員会が20年5月に「Farm To Fork(農場から食卓まで)戦略」を発表し、植物や藻類、昆虫などの代替タンパク質分野の研究開発を重要技術に位置づけた。また、米国ではバイオテクノロジーなどの新興技術が輸出管理対象になるなど、新たな国際秩序の競争が始まっている。フードテック投資は世界全体で年間2兆円を超えているが、先行する米国や中国、インド、英国に比べて日本の投資額はまだ少額。ただ、国内には優れた食品加工技術などがあり、今後の巻き返しが期待される。
●先導するシグマクシス
国内でフードテックのリーディングカンパニーといえるのがシグマクシス <6088> だ。同社は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するコンサルティング会社で、食・料理領域での新規事業の創造や立ち上げ支援も行っている。17年からは「食&料理×テクノロジー」をテーマとしたSmart Kitchen Summit Japan(スマートキッチン・サミット・ジャパン)を主催し、国内はもとより世界の有識者や最先端を進むキープレーヤーとともに活動しており、今後の動向に注目したい。
また、米国のベンチャーキャピタル、スクラムベンチャーズが20年9月に開始したグローバル・オープンイノベーション・プログラム「Food Tech Studio-Bites!」には、伊藤園 <2593> や不二製油グループ本社 <2607> 、ハウス食品グループ本社 <2810> 、カゴメ <2811> 、ニチレイ <2871> 、日清食品ホールディングス <2897> 、フジッコ <2908> 、大塚ホールディングス <4578> などがパートナーとして参画。このプログラムではテクノロジーを活用して食分野に新たな価値を創造するとともに、フードロスやプラスチックゴミといった社会課題の解決、環境保護のための植物性たん白の進化などに取り組むもようだ。
穀物粉砕や飼料配合に関する技術などを持つ明治機械 <6334> [東証2]は、20年12月からフードテック官民協議会に参加し、食に関する先端技術を追求する活動を開始している。
●代替肉市場は一段と拡大へ
動物愛護や地球温暖化の深刻化により、世界的に肉・魚を食べないベジタリアンや乳製品などの動物性食品を一切口にしないビーガンが増えているなか、国内でも健康志向の高まりを背景に植物性素材を使った代替肉が注目されている。既に日本ハム <2282> が大豆やこんにゃくなど植物由来の商品を販売しているほか、伊藤ハム米久ホールディングス <2296> やスターゼン <8043> も大豆ミートを手掛け、プリマハム <2281> は今年3月に大豆を原料としたTry Veggie(トライベジ)シリーズを投入する予定だ。
モスフードサービス <8153> やロッテリア、フレッシュネスバーガーといったファストフードチェーンが大豆肉の展開を進め、良品計画 <7453> が大豆ミートシリーズを提供するなど市場は活性化している。今後の更なる成長が見込まれるなか、味の素 <2802> 、きちりホールディングス <3082> 、兼松 <8020> は相次いで大豆由来の植物肉の開発・製造・販売を行うスタートアップ企業のDAIZ(熊本市)と資本・業務提携した。提携の背景には、人口増などで将来的にタンパク質の需要に供給が追い付かなくなる“タンパク質危機”が訪れる可能性が国連などで示唆されていることがあり、安定的かつ高品質な植物性タンパク質を市場に供給する狙いがある。
●人手不足の解消にも一役
フードテックによって解決が期待される課題には、食料問題のほかにも食に関する人手不足の解消が挙げられる。食品・外食産業はマンパワーによって成り立っており、少子高齢化による労働人口の減少で人手不足が常態化している。
こうしたことから、検査品質向上や人手不足などの課題解決を支援する人工知能(AI)画像判定サービス「MMEye」を提供しているYE DIGITAL <2354> [東証2]、配膳ロボットやセルフレジシステムを展開しているアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]、食品ハンドリング向けロボットハンドを手掛けるニッタ <5186> 、食品加工機械大手のレオン自動機 <6272> 、米飯加工機械を取り扱う鈴茂器工 <6405> [JQ]、食品業界向け電気チェーンブロックを展開するキトー <6409> などの商機が広がりそうだ。
このほか、ソニー <6758> がシェフの創造力や調理能力向上に貢献するレシピ創作支援AIアプリや調理支援ロボティクスの研究開発と、これら活動の礎となるコミュニティーによる共創活動を本格的にスタートしている。
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