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【社長が語る業界の最前線】 スキマバイトサービスのリーディングカンパニー タイミー・小川嶺氏に聞く、マーケットの展望と戦略

投稿:2024/11/05 11:30

上場後に感じた変化

――まずは、上場おめでとうございます。上場前と上場後で何がどう変わりましたか?

小川嶺氏(以下、小川):やはり上場前は、「スポットワークという新しい働き方は、本当に世の中のためになっているのか?」とか、「悪の存在なんじゃないか?」とか、「危険なサービスなんじゃないか?」とか、疑いの目があったり、そういうふうに思われていたりした部分があったのかなと思うんですけど、上場したことによって、本当に認められた、きちんとしたサービスなんだというところで、安心感が皆さまに伝わったのかなと思います。

また、「じゃあ、タイミーさんにちょっと頼んでみようか」とか「巻き込んでみようか」というところで、多くの企業からお問い合わせをいただく機会が増えたというところは、やはり上場してよかったなと思う点です。

――変化については、どのようにお感じになりましたか?

小川:すごく大きな変化というよりは、あらためて大多数の株主の方々に入っていただいているので、上場企業としてしっかりと覚悟を持ちたいと思いました。

それ以外にも、コロナ禍から働き方が変わっているというところは、意識的に自分が変えていかなければいけない点だと思っています。自分の意識の変化は、その部分で起きているのかなと思っています。

スキマバイトの市場はこれから拡大していく

――最近は「スキマバイト」という言葉が世の中にけっこう浸透してきたかなとは思います。スキマバイトは拡大するマーケットなのでしょうか? それとも縮小するマーケットなのでしょうか?

小川:これからより拡大をしていくマーケットなのかなと思っています。

スキマバイト自体が、人手不足、少子高齢化という社会問題を背景に拡大してきています。やはり人手が足りないことによって過重労働になったり、残業時間が増えてしまったりという職場に、ちょっと時間が空いたスキルを持った人が手助けにいくことで、人手が足りなかった部分に対して、今まで眠っていた労働力を可視化して、潜在労働力を顕在化させていくということが、スキマバイトの大きなコンセプトになっています。

このような背景から、これから非常にニーズが高まってくるだろうと思っていますし、働き方改革で、副業解禁やリモートワークなど、余暇時間が増えるようになってくるので、その時間の有効活用というところでも非常に時流に乗っているサービスなのかなと思っています。

圧倒的No.1を維持する強みと戦略

――メルカリ、リクルート、ディップなど、いろいろ競合が台頭する中で、御社が勝ち残るためにはどうすればいいでしょうか? 競合と比較した時の強みや差別化のポイントは何になりますか?

小川:タイミーを創業してから今までも多くの競合が来ていたと思っていて、これから初めて競合の戦いが始まるわけではありません。今までもしっかり勝ち続けてきたと思っています。

なぜ勝つことができたかというと、まずタイミーのスキマバイトを使う企業さまにとっては、しっかり人が集まるというのが非常に重要で、「タイミーに募集をかければ、90パーセントぐらいの確率で人が集まるよね」ということを今までも証明してきています。

「スキマバイトをやろう」と思ったらタイミーを開くというブランドができていたり、一番仕事の数が多い(※)というところで、最初に開こうと思ってくれたり。

※求人掲載数 No.1
2024年5月期_スキマバイトサービスにおける市場調査
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2024年4月9日~2024年5月29日

ほかにも、バッジ機能みたいな、蓄積した経験やスキルが認定される機能があって、ロイヤリティが高まっている。こんなところを、6年間ぐらいずっと磨いてきています。だからこそ、いろいろな競合が来たのにもかかわらず、マーケットシェアで圧倒的No.1をキープしている状況なのかなと思っています。

もちろん、これからはより競争が激化してくるとは思っていますが、今言ったポイントをぶらさずに、よりブラッシュアップをしていくべきだと思っています。

あとはテクニカルな話ですが、併用リスクもあります。複数のスキマバイトサービスを使うとリスクが発生するので、構造的にもユーザーが何社も使っていくというのはなかなか難しく、最初に面を取っているタイミーが非常に有利なのかなとは思っています。

労働人口減少時代に向けたユーザー獲得戦略

――先ほど、課題として労働人口がこれからどんどん減っていくというお話があったと思います。今後、その労働のパイの奪い合いになることが予想されると思うのですが、その中でユーザーを獲得するために、どのような施策を考えられていますか?

小川:ちょっとした暇な時間帯に働けると思っていない人もまだ多いと思うんです。スキマバイトという存在が、自分が使うものではないと思っている方もまだまだいらっしゃると思うので、まずはダウンロード数をしっかりと伸ばすためにも、テレビCMなどでブランド認知を作っていくというのも1つだと思います。

アプリを開いてもらっても自分が働く仕事がないとなったら、やはり働かないと思っているので、より密集度を高めて、あらゆる業種・業態で、好きな時に好きな場所で働ける世界を作っていくということが、より多くの人がスキマバイトに一歩を踏み出すことにつながると思っています。

登録者数は900万人ぐらいですが、累積のアクティブワーカー率は約15パーセント程度という状況で、もっと高い値にするということに対して大きなハードルがあるかというと、そんなことはないんじゃないかなと思っています。

人材不足を超えたスキマバイトの新しい価値創造

――現段階で貴社が課題だと感じていることは何でしょうか?

小川:スキマバイトのサービスは、人手に困った時に使うサービスというイメージを持たれてしまっているなと思っています。

もちろん、サービスの基本はそうですが、例えば「売上を上げるためにどうやってタイミーを使おう」とか、「労働環境を改善するためにどうやってタイミーを使おうか」など、どうやってポジティブな思いでタイミーを使ってもらうかというのは非常に重要なテーマだなと思っているので、そういう事例をしっかりと伝えていかなければいけないですし、いろいろ作っていかなければいけないと思っています。

今までは、ギリギリ前日までいろいろな人に声をかけたけれど人が集まらないからタイミーを使うとか、人が足りないからタイミーを使うという事例が多かったのですが、売上を上げるために、「11時から14時の3時間だけ飲食店で皿洗いをやってくれたり、皿を下げてくれる人がいたら店の回転率が上がって売上が上がっていくよね」「じゃあタイミーを投資としていれてみよう」みたいな話をしてもらえるかどうかが非常に重要だなと思っています。

飲食、物流・小売業がしっかりと潤って、経済成長をしていくために自分たちがどうやって貢献していくのかというのは、非常に大きなテーマだなと思っています。やはり飲食業は、物価高とか、食材の高騰によって利益が非常に薄利になってしまう中で人件費を抑えてあまり人には投資しないようにしようとなってしまう。

トップラインや利益が出にくくなったのもそうなっているからだと思っているので、物流・小売・飲食の業界の成長を支援していくことが、結果的にはタイミーの成長につながっていくなと思っています。

不正利用に対する考え方

――上場をしたことで、新たに見えてきた課題はありますか?

小川:より注目度が上がっている中で、先日、報道があったように、不正利用などの観点でビジネスモデルとして大丈夫かなと心配されることもあると思います。

しっかりとした対策を取り、安心・安全に利用してもらえるサービスを提供していくことが重要だと思っています。

――不正利用の報道を受けて、株主が貴社に対する被害を懸念した結果、株の売りが優先になったタイミングがあったと思います。これについてはどのように考えられていますか?

小川:安心・安全に利用できるサービスを提供していく責務があるので、非常に厳しい姿勢で、対策を続けていき、株主のみなさまにも安心していただけるように努めます。

労働環境改善を目指すタイミーの役割と責任

――他に最近の業界の懸念事項や課題は何かありますか?

小川:タイミー経由で働いた場所の職場環境が、あまりいい現場じゃないような声も聞こえてくることもあって、やはりそれは、自分たちにも一定の責任があると思っています。

せっかく1,200人の従業員がいて、その中の半数近くが営業職(カスタマーサクセスマネージャー)なので、タイミーで来られた方に対して、どういう声掛けをしてほしいのかとか、なぜそれをしなくちゃいけないのかということを伝えるために、しっかりとマニュアルを作ったり、サポートしたりする中で、労働環境を一緒に作っていきたいですね。

第3四半期の決算発表後の株価変動についての考察

――第3四半期の決算発表後にちょっと株価が下がっていましたが、それについてはどう受け止めていらっしゃいますか?

小川:そもそも高い期待をいただいて、上場来、ずっと株が上がってきたというところがある中で、進捗がよくないんじゃないかというところを、投資家の方々から見られたのかなと思っています。そのあたりは真摯に受け止めなきゃいけないなと思っています。

やはり、グロース企業として株主の方々からは高い成長率を求められてると思っているので、しっかりと成長させていかなくちゃいけないなと思っています。

(次回へつづく)

配信元: ログミーファイナンス
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