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―デジタル庁発足・リモートワーク導入加速・バックオフィスAI化が導く新時代―
東京株式市場は大型連休を通過した5月第2週、強烈な嵐に見舞われる形となった。米国の景気回復への期待が高まる一方で、インフレ懸念が投資家心理を揺さぶり、米株市場と歩調を合わせて大きく下値を探る展開。日経平均は11日から13日にかけて3営業日で2000円を超える急落に遭遇することとなった。
しかし、目先はリスクオフの余韻が残るなかも、押し目を拾う動きが顕在化し、マーケットは落ち着きを取り戻している。インフレ懸念は一朝一夕に霧消するようなものではないが、これまでの米長期金利の動向を観察する限り、それほど慌てふためく局面でもないというコンセンサスが醸成されてきた。行き過ぎた振り子が戻るのと同じく、株式市場においても過剰なセンチメントの悪化が修正される局面が訪れそうだ。少し長い目で見れば、今回の“メイストーム”も絶好の拾い場を提供した可能性はある。
●DX関連が株高復活のステージに立つ
もっとも、こうした嵐が通過した後はしばしばマーケットの潮流が変わるケースが多い。極論すれば、足もとの市場で投資マネーが目指しているセクターは半導体関連でも市況関連でも脱炭素関連でもない。いわゆるハードではなくソフト、休養十分で売り物がこなれていたデジタルトランスフォーメーション(DX)関連が株高復活のステージに立っている。
新型コロナウイルスの感染拡大で変貌した世界。人流減少が業績を直撃する小売セクターなど、リアル世界におけるビジネスに傾斜している業態はかつてない厳しい収益環境を強いられた。しかし、現在はeコマースが日常化し、ビジネス世界でもリモートワークの導入が加速するなどバーチャル化(仮想化)された世界が現実空間と融合している。新型コロナはこの併走する二つの世界で、バーチャル世界側に人間を強烈に誘引し、大きなパラダイムシフトを発生させた。これまでには想定し得なかった形でのギアチェンジで、半ば強制的にデジタル社会の進展を加速させたことになる。そして、この「DX維新」ともいえる一連の変化は日本の政治の世界もアンシャンレジーム打破に向けたティッピングポイント(閾値)に導くことになった。
●菅政権の目玉「デジタル庁」は今秋スタート
菅政権ではデジタル政策における司令塔となる「デジタル庁」の創設を公約の一つに掲げていたが、このデジタル庁創設を目玉としたデジタル関連法案が12日の参議院本会議で成立した。9月にデジタル庁が500人規模で発足し、社会全体のデジタル化に向けた先導役を担う形となる。コロナ禍での給付金の遅れなどで浮き彫りとなったのが、アナログ行政の弱点と人材不足に伴う非効率性で、国際的尺度から日本の行政デジタル化の遅れが明確となり、世界へのキャッチアップが大きな課題として浮上した。これを受けてデジタル庁に強力な統括力を持たせ、横ぐしを通してデジタル改革を推進し、これまで問題視されていた縦割り行政による弊害からの脱却を図るというのが狙いである。デジタル庁に関連した21年度予算は1兆円規模に達するとみられている。
同時にこれまで省や自治体ごとに構築されていたシステムを統一し、 マイナンバーカードの普及加速、スマートフォンなどのモバイル端末を活用した行政手続き、これに付随した民間や公共部門のデジタル化などを推進する。また、高齢化社会が急速に進展する日本では国民のかなりの部分が「デジタル弱者」として取り残される可能性が出てくる。これに対して総務省はモバイル端末やマイナンバーカードの使用法を教示する「デジタル活用支援員」の仕組みを整備し、2025年度までの5年間の事業構想を開示している。
●クラウドサービス分野の整備・拡張も必至に
デジタル行政への取り組みは、インフラ面でクラウドサービスの拡張など、柔軟で機動性のある環境整備が必要となる。DXの推進はクラウドという土台なくしてはあり得ない。これは官庁や自治体のみならず、民間企業も同様である。クラウド分野は日本においても米アマゾン・ドット・コム
更に業界を問わず、企業にとってDXへの取り組みが必須となるなか、その際にはリモートワーク の導入やバックオフィスのAI活用など、一つ一つに全社的な経営判断が必要となる。意思決定をする際にはその道のプロフェッショナルの助言なくしてマネジメントは不可能である。したがって、システム構築にあたり、上流工程であるITコンサルティングの領域にビジネスチャンスが広がっている。こちらは野村総合研究所 <4307> を筆頭に、日本オラクル <4716> やベイカレント・コンサルティング <6532> などが大手企業として挙げられる。
●DX相場“第2幕”に乗り遅れるな
いずれにせよ、バーチャル分野を主戦場とするITソリューションやシステム開発を手掛ける企業に投資マネーの再攻勢が始まった。これは今回の21年3月期決算を振り返って、同分野に属する企業の収益性の高さが改めて確認されたからでもある。また、最近マーケットを不安定にしているインフレ懸念やそれと表裏一体の金利上昇懸念とは、次元を異にした成長シナリオが描ける強みを持っている点もポイントだ。
そして最後に、もう一つ言えることは、DXをテーマに第2幕の上昇相場が始まっていることをまだ多くの投資家は認識していない。チャプターとしてはまだ序章に過ぎず、中期的視点でじっくりと取り組むことが可能な投資対象となっている。今回のトップ特集では、今後本格化するであろうDX革命を担う有望企業にスポットを当て、大型株から小型株に至るまで、上昇パフォーマンスが存分に期待できる厳選株を一挙10銘柄エントリーした。
●好パフォーマンス期待の要注目10銘柄
【ブレインPはAI活用の先駆的存在で再脚光】
ブレインパッド <3655> は5月中旬に大幅調整を入れたものの、目先切り返し急。AIの活用では業界を先駆し象徴株に位置づけられる。企業のDXシフトでもカギを握る存在だ。法人向けビッグデータ分析などアナリティクス事業中心に、ソリューション及びマーケティングプラットフォームなど幅広く展開する。データサイエンティストなどデジタル人材育成でも強みを持つ。21年6月期営業利益は減益ながら従来見通しを上方修正し、レンジ予想上限は8億2000万円。アセットマネジメントOneによる株式買い増しなど需給面でも思惑を内包する。
【メンバーズはデジタル人材派遣が開花期】
メンバーズ <2130> は5日・25日移動平均線のゴールデンクロスを示現、信用買い残も軽く、早晩上値追い態勢に移行しそうだ。Webサイトのデザイン制作や運用などを主力業務とするが、デジタルクリエーター人材の育成・派遣業務に傾注しており、これがDX重視の企業経営にマッチする形で開花期を迎えている。21年3月期の営業利益は従来計画を上回り小幅ながら増益確保、22年3月期は前期比43%増の18億円を見込んでいる。更に年間配当は前期実績に6円増配の23円50銭と、これで初配当から実に10期連続の増配となる。
【クロスマーケは業績急変貌で上値追い本番】
クロス・マーケティンググループ <3675> の上げ足鮮烈、目先の押し目は強気に対処したい。祖業はネットリサーチだが、業容を広げ付加価値の高いDX分野を深耕中。また、企画・集計・分析までワンストップで対応できる展開力を強みとし、デジタルマーケティング分野で頭角を現している。21年6月期は6ヵ月の変則決算ながら、利益率改善が顕著だ。営業利益は1~3月期時点で8億4700万円と前期通期実績に対し86%の水準。1株利益は前期を上回る。継続的な買いが観測され、17年6月以来の1000円大台も視野に入る可能性がある。
【ALBERTはAI技術とDX人材の宝庫】
ALBERT <3906> [東証M]は底値圏からの切り返し初動にあり戻り妙味が大きい。ビッグデータ解析や自動運転技術といったAI絡みの開発案件で優位性を発揮するほか、AIを扱うデータサイエンティストなど人的資産でも圧倒的な厚みを誇る。直近は資本・業務提携するマイナビ(東京都千代田区)と共同で「DX人材育成サービス(仮称)」の開発を開始、新たな展開材料として株高を誘発した。トヨタ自動車 <7203> とも資本・業務提携関係にあり自動運転分野で実力を開花させそうだ。21年12月期営業利益は4億400万円と前期比6割増益予想。
【ソフトMAXは医療DXの推進役担う】
ソフトマックス <3671> [東証M]は大型連休明け後に急動意、一気に1300円台まで駆け上がり戻り高値を形成し、調整を挟み買い直される展開。直近の高値は通過点となりそうだ。クラウド対応Web型電子カルテを主力展開する医療情報システム開発会社。政府の後押しによる医療DX推進の動きを捉え、業績を大きく伸ばしている。非接触型電子カルテは新型コロナウイルス対策でも優位性を発揮する。21年12月期第1四半期の営業利益は前年同期比2.6倍の2億9000万円と高変化を示し、通期計画の4億7200万円は期中に上方修正の公算大。
【CTCは5Gと官公庁向けに抜群の実力】
伊藤忠テクノソリューションズ <4739> は5月に大陰線3本で75日移動平均線を下回ったが、目先売り物を枯らし再浮上の機が近づいている。高速通信規格5G関連で高収益案件を多数抱える。官公庁向けネットワーク関連でも抜群の実績。AI映像解析とセンサーデータを活用したIoTカメラソリューションを手掛けるほか、DX支援ビジネスにも積極姿勢を打ち出している。22年3月期営業利益は前期比11%増の485億円と2ケタ成長を見込む。上場まもない2000年には1万1250円(修正済み株価)の高値をつけた実績がある。
【サイバーリンクスは行政の電子化で活躍へ】
サイバーリンクス <3683> の1700円近辺は依然底値圏で買いチャンス。ITクラウド事業を展開し、食品流通業界や官公庁向けなどで実績が高い。マイナンバー関連としても注目され、総務省の「電子委任状を活用した各種行政手続の普及促進に係る調査」に電子委任状取扱事業者として参画している。また、ある日時における特定の電子データの存在及び改ざんの可能性を否定するタイムスタンプを展開しており今後に期待が大きい。21年12月期営業利益は従来予想の6億4900万円から7億9100万円(前期比14%減)に増額している。
【ソルクシーズは地銀再編テーマでも存在感】
ソルクシーズ <4284> はここ戻り足を強め、株価を4ケタ大台に乗せるとともに日足一目均衡表の雲抜けを果たし要注目となる。保険・証券業界向けを主力にシステムの受託開発を手掛ける。フィンテック分野にも傾注するほか、SBIホールディングス <8473> が16%の株式を保有する筆頭株主となっていることもあり、地銀再編のテーマでも存在感を示す。業績は拡大基調にあり、21年12月期最終利益は前期比8割増の10億7000万円を予想するが、関係会社株式売却などもあり1-3月期時点で5億6600万円を達成している。
【TISは世界展開にらみ最高値街道邁進】
TIS <3626> は連日の上場来高値更新で3000円大台をにらむ展開。青空圏で戻り売り圧力がない点が強みとなっている。独立系のシステムインテグレーター大手で金融向けに強く、クレジットカードなど決済システムで抜群の競争力を誇る。クラウド関連でも高い実力を持っている。主要顧客のDX投資が本格化しており22年3月期は最終利益段階で前期比16%増の322億円と2ケタの伸びを予想。世界展開にも余念がなく、東南アジア首位級のグラブ社と戦略的提携を目的に資本・業務提携を行い、決済サービスを協業で推進中だ。
【ITMはオンライン営業ニーズが追い風】
アイティメディア <2148> は調整一巡から出直りトレンドに移行、再び2000円台を地相場とする強調展開が期待できそうだ。ソフトバンク系でIT関連中心にネットメディアを運営する。ネット上でBtoBの「見込み顧客」を発掘して企業の営業活動を支援するリードジェネレーション事業が好調で高水準の収益成長を継続している。特にコロナ禍で営業活動のオンラインシフトが鮮明となっており、同社への追い風は強い。21年3月期は営業7割増益と急増、22年3月期も前期比18%増の23億8000万円と2ケタ成長を見込む。
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