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―タイミー上場で人材関連に再脚光、時流を捉えた成長モデルの有望株をロックオン!―
東京株式市場は7月相場で波乱に直面した。今月上旬の日経平均株価の急騰パフォーマンスが嘘のように、11日を境に地合いが激変した。これまで上昇相場の牽引役を務めていた半導体関連株への苛烈な売りが投資家心理を冷え込ませ、マーケット全体をリスクオフ一色に染め上げている。
しかし、相場が急転直下でリスク回避モードへと変わり、大きくバランスを崩すケースはこれまで何度も繰り返されてきた光景でもある。逆境に見える場面で、投資家としては冷静になる必要がある。暴風に見舞われた時こそ個別の有望株を安く仕込むチャンスであり、ムードに流されずしたたかに対応できるかどうかが勝敗を分ける。今回は、為替市場や米国株市場の影響を受けにくい内需の成長株に着目。高齢化社会の進展でますます重要性が増す、特化型人材支援サービス企業にスポットを当ててみたい。
●7月前半と後半で何が変わったのか
全体相場は来週30~31日に日米の中央銀行による金融政策決定会合を控えていることもあり、どうにも買い気が盛り上がらない。しかし、世界を眺望してファンダメンタルズが7月前半と後半を比べ劇的に変わった形跡があるかと言えば、それは全くない。異常事態といえるほどの相場の弱さは、行き過ぎた上昇相場の反動にバイアスがかかり、日米で投資マインドが過剰に悲観に傾いていることが最大の要因である。
ここは逆張り狙いで半導体関連の突っ込み買いに動くのも一法だが、短期リバウンド狙いならばともかく、株式需給面を考えると中期スタンスで仕込むには得策とはいえない。米国株市場主導の大相場の直後で、戻り売りの壁が分厚いセクターに照準を合わせるよりも、ツレ安した内需の有望セクターに照準を合わせる方が実践的には期待値が高い。
●8月は内需系の成長株に視線を向ける時
週末26日の東京市場では日経平均の方向感が全く定まらず、前日終値を挟んでプラス圏とマイナス圏を右往左往する展開に終始し、結局200円あまりの下落でこの日の安値圏で着地したが、値下がり銘柄数は全体の5割にとどまり、半導体関連株への集中砲火的な売りを除けば見た目ほど弱気優勢の地合いとはいえない。
とりわけ内需株が集まるグロース市場指数は終始プラス圏で推移した。そうしたなか、グロース市場にこの日新規上場したタイミー <215A> [東証G]は“嵐の中の船出”にもかかわらず、公開価格を400円上回る1850円で初値を形成、その後は伸び悩んだものの、1600円台半ばでこの日の取引を終えている。タイミーはスキマバイト(隙間時間を活用した単発アルバイト)を仲介するという、いかにも時流に乗ったビジネスを展開し、将来的な成長期待を拠りどころにセカンダリーでも投資マネーを呼び込む形となった。このタイミーの成長期待の背景には、いうまでもなく日本国内において容易に解決の糸口が見えない慢性的な人手不足の問題が横たわっている。
●人手不足は需要と供給のミスマッチ解消が課題
少子高齢化が叫ばれて久しい日本だが、人手不足はこうした構造的な問題に加え、需要と供給のミスマッチ、つまり求人ニーズと働く側の需要が釣り合っておらず、この解消が課題となっている。そしてこれは人材支援サービスを手掛ける企業にとっては収益機会を高める環境にあることを意味している。
更に、特定分野に特化した人材サービス企業は、その分野における企業の求人に対して的確に対応できることで優位性を発揮しやすい。従業員1人当たりの生産性を高めることが企業側の経営課題としてクローズアップされるなか、1人当たりのコストが上昇しても必要な人材の確保が優先される。これは提供する側に立つ企業にとっては、この上ない追い風といえ、高利益率を担保するものともいえる。株式市場でも特化型の人材サービス会社に注目度が高まるゆえんである。今回のトップ特集では、建設、IT、医療・介護、コールセンターのほか、グローバル人材や士業(弁護士や公認会計士、税理士)など、これらの特定分野で活躍する人材サービス関連企業に照準を合わせた。
なお、人材サービス企業は、リーマン・ショック後に株価をテンバガー化させた銘柄が相次ぐなど大化け株の宝庫だが、最近は株主還元に対する取り組みも評価される企業が多くなっている。インカムゲインの期待が高ければ中期保有を促すことにもなり、結果として上昇トレンドが長く維持されることにもつながる。
●株高ストーリーに乗る人材関連6銘柄を追う
【ナレルGは建設業界の人材ニーズにフル対応】
ナレルグループ <9163> [東証G]は建設業界向け技術者派遣事業を主力とし、システムインテグレーターを対象にITエンジニア派遣なども展開する。建設業界は人手不足が深刻となっており、施工管理業務を手掛ける人材やCADオペレーターなどの技術者に対するニーズが旺盛で同社の商機を高めている。同社がカバーする領域は建築、土木、空調衛生、電気設備など広範にわたる。業績は売上高・利益ともに好調を極めており、24%増収、21%営業増益を達成した23年10月期に続き、24年10月期についても売上高が前期比21%増の218億3000万円、営業利益は同12%増の27億7000万円といずれも2ケタ伸長で過去最高更新基調を継続する見込み。
株主への配当政策に前向きな点は評価され、前期に年95円配当で初配当に漕ぎ着け、今期はそこから15円上乗せした110円配当を計画している。配当利回りは4%を超える。株価は7月中旬を境に調整を強いられたが、2500~2600円台は底値圏であり成長力も高いだけに絶好の仕込みゾーンといえる。
【UTはIT人材の戦力化進み飛躍的な成長へ】
UTグループ <2146> [東証P]は製造業派遣のリーディングカンパニーで、無期雇用派遣で業界を先駆している。半導体や自動車業界などを主要顧客にハイスペックな人材を派遣、大型案件の受注で収益拡大が急だ。半導体関連では100%子会社を通じて、半導体エンジニアのスキルを可視化して適正に評価する等級別スキル連動型人事制度「E-Pro制度」の運用を開始、顧客企業と連携して26年3月期までに半導体エンジニア1700人の配属及び、顧客企業での社員化300人を目指す計画にある。人材の戦力化が軌道に乗り、25年3月期売上高は前期比29%増の2150億円と大幅な伸びを予想。トップライン急増効果を利益にも反映し、営業利益は同46%増の136億円予想と大変貌を見込む。いずれも過去最高を大幅更新する見通しだ。
株価は21年11月に上場来高値4600円をつけているが、ファンダメンタルズや成長力を考慮すると、中期的にこの株価水準をクリアして青空圏に突入していく公算が大きいと判断される。
【トライトは米投資運用会社が純投資で買い増し】
トライト <9164> [東証G]は医療福祉分野に特化した人材や建設業界向けの人材を紹介する。医療福祉では介護・看護・保育領域で資格を有する人材の転職支援や派遣を手掛けるが、このうち保育領域の人材紹介では全体の約3分の1の市場シェアを確保するなど他社を圧倒、また介護分野でもトップシェアを誇る。更に、建設業界も人手不足が際立つ状況にあり、同社は旺盛な需要を獲得している。そうしたなか、米投資運用会社のティー・ロウ・プライス・グループの日本法人であるティー・ロウ・プライス・ジャパンが同社株を純投資目的で買い増す動きをみせており、株高に向けた思惑を内包している。また、同社はプライム市場への市場変更も視野に入れている。
業績は成長路線を快走。24年12月期営業利益は前期比26%増の95億円予想と前期同様の高い伸び率で100億円大台乗せが目前。株価は400円台と値ごろ感があり、PERもわずか8倍前後と割安感が顕著だ。大底圏離脱から4月11日の年初来高値772円奪回に向け仕切り直す展開へ。
【ジェイエイシはグローバル&ハイクラスに特化】
ジェイエイシーリクルートメント <2124> [東証P]は語学力を有するグローバル人材や、幹部級などハイクラス人材の高額案件紹介で強みを発揮し、外資系企業との取引実績も豊富。また、国内にとどまらず、アジアを中心に世界11カ国でビジネス展開を図っている。コンサルタントの増員を積極的に進め、人材紹介分野の展開力に厚みを加えるなか、業績成長路線をまい進している。24年12月期は2ケタ増収効果を反映し、営業利益が前期比15%増の94億5000万円と過去最高利益を連続で更新する見通しにある。更に25年12月期もトップライン・利益ともに拡大基調に陰りはみられず、営業利益は2ケタ成長を続け、110億~120億円まで水準を高めそうだ。
株主還元にも抜かりなく、配当利回りは3.8%前後と高い。株価は6月17日に631円の年初来安値を形成した後は戻り足が鮮明。早晩年初来高値810円の奪回から、青空圏突入の公算が大きい。中長期スタンスなら4ケタ大台での活躍も十分に見込めそうだ。
【MSジャパンは士業の人材に特化し異彩放つ】
MS-Japan <6539> [東証P]は弁護士や公認会計士、税理士といった各種士業及び一般企業の管理部門に特化した人材紹介ビジネスを展開する。人材紹介はマッチング精度の高さが強みで、同社に登録された求職者と採用企業のニーズをマッチングさせるコンサルタントを増員した効果もあって、足もとで収益機会が高まっている。また、コミュニケーションサイトを運営し広告収入を得るメディア事業も展開しており、管理部門向けの非テック系領域の充実に尽力し業績向上に取り組んでいる。25年3月期は豪子会社の寄与でトップラインの伸びが際立ち、前期比80%増の82億4700万円を予想。また、営業利益は同27%増の20億5500万円とピーク利益更新となる見通しだ。
今期の年間配当は前期と同様56円を計画。配当利回りに換算して5%を超えることは特筆される。株価は7月中旬を境に軟化し、時価は1000円トビ台に位置するが、1000円大台ラインを下限に買い下がり、中期で年初来高値1275円奪回を目指す。
【ベル24HDは生成AI活用でCRM新展開へ】
ベルシステム24ホールディングス <6183> [東証P]はコールセンター(CRM)受託大手で、伊藤忠商事 <8001> [東証P]が発行済み株式の4割強を保有する筆頭株主。また、実質第2位株主には資本・業務提携を経てTOPPANホールディングス <7911> [東証P]が入っている。TOPPANとは協業体制で、業務プロセスを一括して受託するBPO事業(DX支援)に傾注している。更に日本マイクロソフトなどと連携し、CRM向けに生成AIを活用したシステム開発をいち早く進捗させている点も注目で、業容拡大に前向きな姿勢は評価される。業績面では、25年2月期に営業利益段階で前期比9%増の125億円を見込んでいる。
株主還元姿勢も評価され、今期は前期と並びの60円配当を計画しているが、配当利回りは4%前後に達するなどインカムゲイン狙いでも十分に魅力がある。株価は直近1450円まで水準を切り下げたが、その後は2点底を形成、今は出直りの初動にある。滞留出来高の多い1500円台半ばを抜けたことで上値も軽くなりそうだ。
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