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東洋建設のニュース
―EEZでも設置可能へ、「浮体式」拡大へのファンファーレ鳴り響く―
日本各地で洋上風力発電の開発・建設が予定されており、関連銘柄にとっては大きなビジネスチャンスが訪れそうだ。こうしたなか、岸田文雄首相とバイデン米大統領の日米首脳会談が10日に迫ってきた。読売新聞によると、クリーンエネルギーへの移行推進を目指し「浮体式洋上風力発電」導入での連携強化などを共同宣言に盛り込む方針だ。四方を海に囲まれた日本にとって、その高い潜在能力をいかんなく発揮できる発電方式でもあり、株式市場でも改めて注目される可能性がある。ただ、風力発電は欧米に加え中国製品のウェートが大きくなっており、エネルギー安保の観点から「国産」への代替が求められる状況にもある。官民挙げて反転攻勢を強める「洋上風力発電」関連株の動向を追った。
●「着床式」も案件加速化
“もしトラ”で再生可能エネルギー関連株にネガティブな見方が出ている。ただ、仮に米国でのエネルギー政策に変更があったとしても、資源の乏しい日本が、海外からのエネルギー供給に頼らない地産地消の再生可能エネ推進で足踏みをしている暇はない。混沌とする世界情勢を背景に、経済、エネルギー安保、それぞれの視点から待ったなしの状況だ。欧米では既に、洋上風力発電の導入拡大に向けた財政支援などの動きが加速しており、日本も遅れを取り戻そうと必死だ。日本各地で洋上風力発電の建設が推進されており、今後建設ラッシュを迎えることになる。
洋上風力発電には、海底に基礎構造物を設置してその上に風車を載せる「着床式」と、浮体の上に風車を載せて発電する「浮体式」がある。政府は3月、2050年カーボンニュートラルの実現のため、EEZ(排他的経済水域)においても海洋での再生可能エネ発電設備が設置できるようにする法改正案を閣議決定した。広大な設置場所が確保できることで「浮体式」への活躍期待が急速に高まっている。ただ、浮体式はコストの高さに加え大量生産に係る技術を確立していないなど課題も大きく、現在主流の着床式が重要なポジションを占めていることに変わりはない。
直近では、先月22日に「秋田県八峰町及び能代市沖」で公募していた洋上風力発電の事業者に、東北電力 <9506> [東証P]やENEOSホールディングス <5020> [東証P]の傘下企業、そしてスペイン電力大手イベルドローラの日本法人の3事業者が決まった。発電設備は「着床式」洋上風力発電で、29年6月の運転開始を目指す。
●日の丸風車メーカー存在せず
海洋国家ニッポンの利点を生かした洋上風力発電の建設が相次ぐが、悲しいことに国内には肝心かなめの風車メーカーが存在しない。かつて大型風力発電機の開発生産では、日本製鋼所 <5631> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]など日本を代表する企業が事業展開を進めていたが、採算性の悪化などから事実上撤退している。海外勢もここにきて、設備費の高騰などが響き撤退が相次いでおり、この分野での事業展開の難しさも表面化している。
昨年11月に資源エネルギー庁が公表した「洋上風力発電に関する国内外の動向等について」でも、国内に風車メーカーや製造拠点が不在とし、欧米風車メーカーに主導権を握られざるを得ない非常に厳しい状況であることを指摘している。20年に官民協議会がまとめた「洋上風力産業ビジョン」では、産業界として40年までに国内部品調達比率60%の目標を掲げ、国内サプライチェーン形成を促進させようと懸命だ。洋上風力政策の今後の方向性については、40年目標の達成を見据え、「着床式」の案件加速化に加え、沖合での「浮体式」に着手する必要性を前面に押し出している。
●国内調達比率60%超達成
サプライチェーン構築では、資機材などの国内生産の動きが加速している。今年1月1日には、国内最大級といえる北海道の石狩湾新港洋上風力発電所が、商業運転を開始した。石狩湾新港プロジェクトでは、日本製鉄 <5401> [東証P]傘下の日鉄エンジニアリングによるジャケット基礎の建設に加え、清水建設 <1803> [東証P]のSEP船(自己上昇式作業台船)による施工などにより、国内調達比率60%超を達成。主要な部品で国内生産ができないものは、ついに大型風車のブレードのみとなった。
JFEホールディングス <5411> [東証P]は日本初となる洋上風力発電設備の着床式基礎(モノパイル式)製造拠点として笠岡モノパイル製作所(岡山県笠岡市)の稼働を今月1日に開始した。モノパイルは風車とタワーを海中で支える巨大な構造物で、25年度内にフル稼働を見込み、同社では「国産モノパイルへの期待に応える体制が整った」としている。
●攻勢強める五洋建、住友重
資機材の国内調達比率の拡大が課題となるなか、五洋建設 <1893> [東証P]は洋上風力発電分野で攻勢を強めている。22年に完成した北海道室蘭市の室蘭製作所新工場では、従来の橋梁の製作に加えて、拡大が期待される洋上風力発電建設に用いられる基地港での部材組立や、海上運搬のための架台などの仮設鋼構造物の製作を行っている。同年には、北九州響灘洋上風力発電事業において、共同企業体とともに風車基礎・海洋工事など大型受注を獲得。25年度に運転を開始する予定だ。
住友重機械工業 <6302> [東証P]は先月5日、洋上風力発電における基礎構造物や関連船舶事業の強化を目的とし、「洋上風力事業推進プロジェクト」を設立したと発表。グループ企業が着床式、浮体式いずれの基礎構造物製造にも転用可能な技術を多く保有しており、こうした技術を事業化に向けて統括していくことにしたという。同社は、2月14日に造船事業からの撤退を発表したが、事業拡大を見据え風力発電での展開力を強化する。
●頭角現す応用地質
洋上風力発電だが、さまざまな分野で多くの企業がしのぎを削る。こうしたなか、頭角を現しているのが地質調査大手の応用地質 <9755> [東証P]だ。3月には、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した令和6年度「洋上風力発電の導入促進に向けた基礎調査に係る業務」のうち北海道3案件の海底地盤(ボーリング)調査に応募し、実施予定者として採択されたと発表。昨年6月には、海上を対象とした測量・調査・コンサルタンティング事業を展開する日本ジタンの子会社化を発表。更に12月には、海洋調査などの環境総合コンサルタントを行う三洋テクノマリンの子会社化を発表しており、洋上風力発電市場におけるグループの優位性を一層高める構えだ。
●カナモト、東洋建などにも注目
北海道地盤の建機レンタル大手カナモト <9678> [東証P]にも目を配っておきたい。同社は、22年12月に商業運転を開始した能代港及び、昨年1月に運転を開始した秋田港での洋上風力発電プロジェクトで、20年の建設開始以来、仮設ハウスをはじめ敷鉄板、散水車、高所作業車など多数の機器を提供しており、再生可能エネの開発、導入促進に向けた取り組みを支援している。今後、洋上風力発電の開発が急速に進むことが想定されるなか、こうした実績を踏まえ活躍の舞台が広がりそうだ。
このほかでは、洋上風力事業で国内最大級の自航式ケーブル敷設船の建造と洋上風力事業本部の新設を決定した東洋建設 <1890> [東証P]、洋上風力発電でさまざまなタイプの基礎構造物を設計、製作、据付する技術を有している日立造船 <7004> [東証P]、また、変わったところでは、国内初となる風力発電機ブレードの100%リサイクルによる環境問題解決の取り組みを進めているイボキン <5699> [東証S]にも関連株の一角として注目しておきたい。
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