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日本電技 Research Memo(3):計装とエンジニアリングを併せ持つ

配信元:フィスコ
投稿:2019/07/05 15:03
■事業概要

1. 事業内容
日本電技<1723>の事業は、空調計装関連事業と産業計装関連事業に大別される。空調計装関連事業は、主にビルや工場、病院、クリーンルームなどを対象に空調に関する計装を手掛ける事業で、さらに建物の建設時に空調計装工事を行う新設事業と、既設建物のメンテナンスやリニューアル工事を行う既設事業に分けることができる。産業計装関連事業は、工場の生産ラインや搬送ラインなどに対する計装のほか、産業用ロボットの制御などへと事業領域を拡大している。2019年3月期の売上高に占める割合は、空調計装関連事業86.7%、産業計装関連事業13.3%となっている。

ちなみに、「計装(Instrumentation)」とは、ビルや工場の空調や生産ラインなど各種設備・機械装置を、計測・監視・制御の手法によって有機的に機能させることである。例えば、ビル空調計装であれば「最少のエネルギーで快適な環境を実現する」技術と位置付けられ、温度・湿度・圧力などを計測、計測された情報をコンピュータで監視、一定の環境を維持するために機器を制御しながら設備全体をコントロール、快適性や省エネ化を実現しているのである。計装そのものは戦後の石油産業復興の時代に始まったと言われるほどの「オールド・エコノミー」だが、近年は省エネ化に必須の技術として注目され、最新のIT技術を用いた計測・監視システムが開発されたり、「地域冷暖房」のコア技術として利用されたりするなど、「古くて新しい技術」として進化を続けている。一方、「エンジニアリング(engineering)」とは、部分最適に陥りがちな設備やユーティリティなどを、ユーザーにとって全体最適化する技術力を指す。こうした「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つ企業は世に少なく、「計装エンジニアリング」自体が同社の強みになっている。


ビルの自動制御をトータルプロデュース
2. 空調計装関連事業(ビルディングオートメーション事業)
空調計装とは、熱源制御、空調制御、動力制御、中央監視装置などによって、ビルの自動制御システムをトータルプロデュースすることと言うこともできる。最適なビルの自動制御システムにより快適なビル空間を実現、また、設備・機器の更新提案、建物のエネルギー管理の補助、省エネ化提案などを行うことで、顧客のライフサイクルコストの低減をサポートしている。同社の空調計装関連事業は、ビルシステム事業とソリューション事業に分けられる。

(1) ビルシステム事業
ビルシステム事業は同社の主軸であり、建物の建築時に導入される空調・給排水衛生設備などビルディングオートメーションシステムの設計、施工監理、引渡し前の試運転・調整、引渡し時の取扱説明をワンストップで行っている。また、建物が完成した後も、納入した設備・機器の保守・保全に携わることで、エネルギー使用量の管理・分析、省エネ化を目的とした設備改修・更新の提案をするなど継続的な支援を行い、顧客の建物資産の保全やライフサイクルコストの低減といったニーズに応えている。

空調自動制御システムは、空調自動制御システムそのものとビルマネジメントシステム、テナントサービスシステムで構成される。空調自動制御システムは、主に建物内の空調・熱源設備を制御・監視・管理することで室内の快適性と建物のエネルギー消費を最適化し、省エネ化やCO2削減を促進する。Webサーバによるシステム構成にすることで、汎用パソコンを監視端末として利用することができる。ビルマネジメントシステムは、エネルギー使用量の見える化などにより建物のエネルギー管理を的確にサポートするとともに、データに基づいたビルの状況把握によって建物の保全管理の改善や運用コストの低減など管理品質の向上を促進する。テナントサービスシステムは、テナントユーザー自らのパソコンからインターネットを通じて、温度設定の変更や空調及び照明のON/OFF、空調延長申請などの操作を行うことができる。最近では、東京ガーデンテラス紀尾井町や日本生命病院、さっぽろ創世スクエアなどで採用されている。

(2) ソリューション事業
開示上のセグメント区分ではないが、ソリューション事業では、空調計装関連事業(既設)のうち、施主やエンドユーザーなどと直接取引・契約をし、計装技術を用いて省エネ化などの課題解決を提案するビジネスである。建設業界において空調計装は下請けだが、ソリューション事業は言わば「元請け」のため採算がよく、同社として現在、最も注力している事業の1つである。

ソリューション事業は、ファシリティーソリューションと環境ソリューションに分けられる。ファシリティーソリューションは、メンテナンス、クラウドサービス、リニューアル提案で構成される。メンテナンスは、専門技術者が訪問や遠隔操作により保守点検作業を一貫して計画・実施し、建物の使用条件や環境に応じてビルの運用コストの低減や快適環境の維持を柔軟に支援する。クラウドサービスは、ビルや工場、店舗などの電力、ガス、温湿度といったエネルギーデータをクラウド上で一元管理するとともに、エネルギーの使用状況をグラフなどによって見える化し、最適な省エネ方法を提案する。リニューアル提案は、運用中のビルシステムの状況や課題をヒアリングして最適な運用方法を提案する。一方、環境ソリューションはESCO事業、エネルギーマネジメントサービス、エコチューニングに分けられる。ESCO事業は、快適性を確保しつつ省エネ化・省コスト化を実現するための最適なエネルギーシステムを提案する。エネルギーマネジメントサービスは、ビルや工場のエネルギー使用を効率化するための設備導入や最適運用を行う。エコチューニングは、快適性や生産性を損なうことなくビルや工場から排出される温室効果ガスを削減し低炭素社会の実現を目指す。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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配信元: フィスコ
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