3日続落を受け自律反発、SQ通過で売り圧力和らぐ

著者:冨田康夫
投稿:2015/12/10 19:11

明日の東京株式市場見通し

 11日の東京株式市場は、きょうまでの3日続落で日経平均株価が合計651円安と短期間に急落していることに加え、心理的フシ目である1万9000円に接近していることもあり、自律反発の機運が高まりそうだ。

 市場関係者からは「11月上旬に上昇が加速した場面があり、やや買われ過ぎた分の調整段階といえる。株価指数先物との裁定取引に伴う現物株の買い残高が高水準だったため、解消売りへの警戒感が市場心理を悪化させた。ここにきて、原油価格の下落加速に伴いオイルマネーによる日本株売りも取りざたされるなど悲観要素が重なった」との見方が出ていた。ただ、あすのメジャーSQ(特別清算指数)算出日が通過することで、売り圧力が緩和される可能性もある。

 10日の東京株式市場は寄り付きから大きく売られ、その後は安値圏でもみ合う展開。日経平均株価は途中、1万9100円台に下げ渋る局面もあったが、大引けにかけて下げ幅を広げた。終値は前日比254円52銭安の1万9046円55銭と大幅安で3日続落。前日の欧米株安に加えて、外国為替市場で1ドル=121円台前半まで円高が進行し、輸出採算の悪化を懸念して精密機器、電機、機械などの主力株に安いものが目立った。

10日の動意株

 日本写真印刷<7915>=3日続伸。
大和証券は9日、同社株のレーティングを新規「2(アウトパフォーム)」とした。目標株価は3170円に設定した。「フォースセンサーによる収益拡大のポテンシャル」を指摘している。フォースセンサーとは、手指で押した圧力の強弱を検知し、端末を操作するセンサーのこと。今年に入ってからiPhone6sなど、新製品で同センサーの搭載が新たなトレンドとなっている。今後、「スマートフォンに加え、タブレットPCなどにも同センサーの採用が標準化してくる」と予想。

 日本水産<1332>=新値圏で上値指向が鮮明。
信用取組は直近、売り残を減少させつつも4日申し込み現在で信用倍率0.79倍と売り長状態をキープしており、需給関係の良さが上値の軽さに反映されている。海外養殖事業で実績を持ち、孵化したばかりのクロマグロの稚魚向け配合飼料を開発するなど技術力が高い。今月3日には大和証券が同社の投資判断を「3」から「2」に引き上げるとともに、目標株価を360円から500円に上方修正したことで上げ足が助長された経緯がある。

 いちごグループホールディングス<2337>=続伸で年初来高値を更新。
市場では、クリーンエネルギー事業などの成長を評価する見方が出ている。開発中の太陽光発電所が相次いで稼働を開始しており、2017年2月期の収益拡大が期待できる。また、先月からジャスダック市場から東証1部に上場しており、新たに投資対象に組み入れる動きも出ているようだ。

 キョーリン製薬ホールディングス<4569>=急伸。
同社は9日の取引終了後、杏林製薬が創製した「FPR2作動薬プログラム」に関するライセンスを米国ブリストル・マイヤーズスクイブ社に供与することを発表、これを好感する動き。今回の契約により、杏林製薬はブリストル・マイヤーズスクイブ社に対し、全世界での独占的な権利(開発権、製造権及び販売権)を供与し、ブリストル・マイヤーズスクイブ社から契約一時金(3500万ドル)及び、開発から承認までの進展に応じたマイルストンペイメント(最大で3億7000万ドル)、売上高に対する一定率のロイヤルティー及び販売マイルストンを受け取る。

 マルマエ<6264>=ストップ高。
同社は9日取引終了後、鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約を締結すると発表した。同社は液晶や半導体の製造装置向けに精密部品加工を手掛けるが、新中期事業計画において作業補助や各種ロボットを研究開発テーマとして掲げている。そのなか鹿児島大学とは、リハビリ装置の研究開発と作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指し共同研究契約を結ぶ。ロボットやリハビリ装置分野は安倍政権が掲げる新3本の矢である「介護離職者ゼロ」のテーマとも絡むだけに、短期筋の資金が集中した。

 そーせいグループ<4565>=ストップ高。
6月19日につけた年初来高値にツラ合わせとなっている。9日の取引終了後、同社が開発したNVA237(グリコピロニウム臭化物)の導出先であるノバルティス社が、NVA237を含有する新規3剤配合型吸入喘息治療薬QVM149の第3相臨床試験を開始したと発表しており、治験の順調な進展が好感されている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想