資本業務提携の効果を狙う!

著者:堀篤
投稿:2015/12/02 17:45

◆資本業務提携で期待できる銘柄

この11月以降、資本業務提携の発表が、目につくようになってきた。
第三者割当増資もあれば、市場での買い付けもあるが、事業的なインパクトと、市場での出来高インパクトを勘案すれば、投資価値があるものを見つけることができるだろう。

<2375>スリープロ <6025>日本PCサービス
発表日:11月25日
事業:法人向けと個人向けPSサポート

<7893>プロネクサス <9658>ビジネスプレイン太田昭和
発表日:11月24日
事業:開示実務支援と会計経営システム

<2764>ひらまつ <8933>NTT都市開発
発表日:11月4日
事業:レストランと開発会社

発表から少し時間が経った、ひらまつ(東証1部2764)とNTT都市開発(東証1部8933)の資本業務提携の発表後の株価は、双方にとってハッピーだった。
ひらまつは644円(発表前日)から高値:762円(11月26日)
NTT都市開発は1138円(発表前日)から高値:1248円(11月18日)
双方がホテル事業へ進出する、という連合軍的な事業を計画しており、まだこれからに期待も持てる。

日本PCサービス(名セ6025)とスリープロ(東証2部2375)は、規模こそ小さいが、業務提携の実務性と、過去の出来高から見れば、株式の持ち合いであるだけに、上昇余地は大きい。

スリープロは主に法人向け、受託型のPCサポートを行い、日本PCサービスは、家庭向けにPCフィールドサポート事業を行っている。
特に日本PCサービスは、今後進む家庭のスマートハウス化に対応するビジネスモデルへの展開が楽しみだ。マイナンバー関係のサポートなども含め、現在でも人手不足に陥りやすい業界だが、同時に、「技術とサービスの質」が、他社との差別化のキーだ。同社では、社内で独自に技術資格制度を設けており、今回発表された人的リソースなどの相互フォローで、そういった他社との差別化を益々進めていくことができるだろう。

プロネクサスとビジネスブレイン太田昭和は、もともと提携関係にあり、その強化なので、サプライズにかけるものの、特にビジネスブレインにとっては、メリットがあるように思える。

これら二つの提携は、まだこれから株価が動く余地があるだろう。


◆DeNAと任天堂のケース

海外機関投資家などから、日本企業の「株式持合い」が非難されてしばらくが経っている。今年から始まった、コーポレートガバナンス・コードでも、政策投資の株式について、その保有方針を説明するよう、求めている。

つい先週の東証・金融庁の会合でも、「株式持ち合いはガバナンスを歪めている」との主張がされたという。

しかし一方で、前述のようなケースだけでなく、今年3月の任天堂-DenA間で発表された資本業務提携では、明白な株式の持ち合いが発表され、それによって、株価は急騰した。
発表日前日(3月17日)の任天堂株価は、14080円。その後、発表とともに株価は急騰し、細かい調整を交えながら、8月11日には、株価は、26050円の高値をつけた。その後、市場全体の下落とともに調整しているものの、20000円近辺で上下をしている。
一方のDeNA株価も、発表日前日には、1407円だったが、発表後は急騰し、6月1日には2705円の高値を付けた。その後も2000円から2500円のレンジを動き、最近の市場下落で、久しぶりに2000円を切った。
つまり、市場や金融庁の思惑とは別に、株式持ち合いを、投資家は大きく評価した、ということが言える。


◆株式持ち合いは是か非か

アベノミクスで、海外投資家の投資奨励のため、日本企業には様々な圧力がかけられるようになった。ROE経営、社外独立役員、持ち合いの解消など、一見すると、これまでの日本的経営を否定するよう

な内容に見える。
また、国内の専門家でも、「失われた20年」の原因が、あたかもこれら日本経営にあった、という主張をする者も多くいる。
しかし、経営者は、そういった主張に惑わされることはない。
企業に問われているのは、それらについての考えを説明しなさい、ということであって、やってはいけない、ということではない。経営者の使命はあくまでこの日本という風土の中で企業価値を最大にすることなのだ。

特に、金融庁と取引所に言えることだが、海外からのメッセージを、そのままストレートに企業へ指導をしないほうが良い。海外のルールはその本質だけをとらえ、日本風に、取り入れれば良い。
株式の持ち合いでいえば、金融機関が保有するようなデス・ガバナンス的な持ち合いや、本質的に買収防衛的な意味合いであることを否定しにくいスキームは解消していくべきだろう。しかし、業務にその本質がある資本提携は、資本コストの軽減、引受先による市場へのメッセージ性など、逆に資本のルールに忠実な形でやれば、双方のメリットは大きい。企業側は、そのことをガバナンス報告書で積極的にアピールすべきだろう。
提携先同士の取引に利益供与が起こるなど、機関投資家は見当違いのガバナンス面での不安を言うが、そもそも投資家に経営やガバナンスの実務が本当に理解できるのか。ガバナンス優秀企業と言われ、委員会設置会社ですらあった東芝の件が、その答えを端的に表している。

このコラムでは趣旨が違うのでこれくらいにしておくが、機関投資家にあまりに信を置いた今の政策や仕組みが、その弊害を露呈し、それほど時間をかけずに崩壊する懸念を持っているのは私だけではないだろう。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想