同時テロの影響で続落、欧米市場の反応を懸念

著者:冨田康夫
投稿:2015/11/16 20:15

明日の株式相場見通し

 17日の東京株式市場は、フランス・パリの同時テロ発生が、世界経済にもたらすマイナス影響を見極めたいとの姿勢が継続することが予想され、売り優勢で日経平均株価は続落となりそうだ。
 市場関係者からは「現地時間13日夜に発生した仏同時テロの実体経済への影響について、欧米株式市場ではほぼ織り込まれておらず、16日の欧米株式市場の動向が懸念される。もし、大幅に下落するようなことになれば、あすの東京株式市場にも影響が及びそうだ」との見方が出ていた。ただ、過去のロンドンやスペインでのテロ発生時には、株式市場への影響は短期間にとどまったとの経験則もある。

 16日の東京株式市場は、日経平均株価終値が前週末比203円22銭安の1万9393円69銭と続落した。寄り付き前に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が、事前の市場予想を下回る内容となったことや、外国為替市場での円高進行を嫌気して一時、340円程度まで下落する場面もあった。しかし、その後は下落幅を縮小し、午前10時過ぎ以降は、ほぼ200円安水準での小幅な値動きに終始した。

 日程面では、9月の特定サービス産業動態統計確報、10月の首都圏・近畿圏マンション市場動向に注目。
海外では、EU総務相理事会、米10月の鉱工業生産指数、欧州10月の新車販売が焦点となる。

<動意株>=ユビキタス、KIHD、神鋼環境など

 ユビキタス<3858>=一時ストップ高。
同社はきょう、トレンドマイクロ<4704.T>とIoT(モノのインターネット)分野におけるセキュリティーソリューションを共同開発することで合意したと発表。これが材料視されているようだ。具体的には、IoT関連の管理装置に組み込む「セキュリティーソリューションのソフトウエア開発キット」の共同開発、安全なIoTクラウドプラットフォームの実現、自動車向けセキュリティーの共同研究の3分野で協業を開始する。

 KIホールディングス<6747>=ストップ高。
同社は前週末13日の取引終了後、タイ国際航空が航空機用座席の納入に遅延が発生したとして、英国高等法院に提訴していた訴訟について、同社が約64億8700万円を支払うことで和解したと発表。既に78億8600万円を支払っていたため、損害賠償引当金戻入により、10億6400万円を16年9月期第1四半期に特別利益として計上すると発表しており、業績上振れ期待が高まっているようだ。

 神鋼環境ソリューション<6299>=後場一段高。
前週末13日の取引終了後、ユーグレナ(食品原料)の製造・販売開始に向けて「営業開始届書」を神戸市保健所に提出したと発表しており、今後の事業展開への期待感が買いにつながっているようだ。同社では昨年9月に技術研究所内に閉鎖型の1立方メートルの培養槽を設置し、従属栄養培養方式によるユーグレナの生産性向上の検討を行ってきた。最近では、流加培養の採用により、ユーグレナの生産性を2倍化(同社比)させているが、今回、食品原料としての安定的な品質および安全性の維持を目的とした設備へと改造し、「営業開始届書」を提出。これまで協議を進めてきた企業へ、安定的に製造・販売できるようにするという。

 スマートバリュー<9417>=急騰。
同社は前週末13日の取引終了後、16年6月期の単独業績見通しについて、売上高を66億6700万円から68億4000万円(前期比6.4%増)へ、営業利益を1億9600万円から2億2900万円(同26.9%増)へ上方修正したことが好感されている。米アップル社の新型iPhoneの発売などで端 末販売が増加し、それに伴う手数料売り上げが計画を大きく上回っていることが要因としている。

 サクサホールディングス<6675>=反発。
パリ同時テロ事件を受けて、空港などの警備強化につながるとの見方が強まっており、顔認証装置を手掛ける同社にも事業機会拡大に対する思惑が働いているようだ。

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 株式の売買は自己責任に基づいて、ご自身でご判断ください。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想