短期的な過熱から一服、物色動向には安定感

著者:冨田康夫
投稿:2015/11/09 20:42

明日の東京株式市場見通し

 10日の東京株式市場は、きょうまでの日経平均株価4日続伸で、短期的な過熱感が強まっていることから、一服商状となりそうだ。

 4日続伸で日経平均株価は合計959円と、短期間に1000円近い急上昇となっている。25日移動平均線(1万8550円=9日)とのカイ離率がプラス5%を超えたのに加え、騰落レシオ25日移動平均は136.90%と買われ過ぎの水準に達している。

 市場関係者からは「前週末に発表された米10月の雇用統計の内容が予想を大幅に上回り、米利上げ観測が強まって、これが外国為替市場で円安・ドル安に拍車を掛けたことが輸出関連銘柄を中心に業績向上期待の買いにつながった」との見方が出ていた。

 週明け9日の東京株式市場は終始買い優勢の展開となり、日経平均株価は一時400円を上回る上昇をみせ、終値は前週末比377円14銭高の1万9642円74銭と大幅高で4日続伸となった。物色の矛先は輸出株だけでなく、銀行や保険などの金融関連株や建設などの内需株にも向かったことが注目を集めた。

9日の動意株

 イリソ電子工業<6908>=ストップ高。
同社は6日取引終了後、16年3月期第2四半期累計(4~9月)の連結決算を発表。売上高は194億7800万円(前年同期比7.4%増)、営業利益は31億5600万円(同7.6%減)、最終利益は23億4300万円(同9.4%減)だった。しかし、既に8月18日に4~9月期業績の下方修正を発表し株価は売られていた。今回の発表は下方修正時の計画ラインから上振れして着地したこともあって、一気に買い戻しが加速するかたちとなった。モルガンスタンレーMUFG証券やみずほ証券が6日付で強気の投資判断を継続していることも買い安心感につながった。

 椿本チエイン<6371>=後場一段高。
同社は6日取引終了後に、16年3月期第2四半期累計(4~9月)の連結決算を発表。経常利益は従来計画104億円を上回る113億6200万円(前年同期比9.1%増)と、減益見通しから一転増益で着地した。売上高は1014億8800万円(同9.2%増)と、従来計画の1000億円を上回った。日米欧で搬送用チェーンやケーブル・ホース支持案内装置の販売が伸びたほか、自動車エンジン用タイミングドライブシステムの販売も好調だった。なお、通期業績見通しは従来計画を据え置いている。

 テイカ<4027>=急伸。
界面活性剤を製造しているタイ連結子会社が好調なほか、化粧品向けの表面処理製品、コンデンサー用導電性高分子薬剤や無公害防錆顔料などが業績に寄与している。6日取引終了後、16年3月期の連結業績予想の修正を発表、営業利益を42億円から46億円(前期比20.9%増)へ、最終利益を25億円から32億円(同30.1%増)へそれぞれ増額しており、これがポジティブサプライズとなった。

 オリンパス<7733>=ストップ高。
同社は6日取引終了後、16年3月期第2四半期累計(4~9月)の連結決算を発表、売上高3957億7400万円(前年同期比11.5%増)、営業利益500億8000万円(同30.3%増)、最終利益358億1000万円(同60.4%増)だった。主力の医療機器部門で消化器内視鏡が好調で収益を押し上げている。為替の円安に伴う採算改善も寄与した。好決算を評価するかたちで買いが集中している。

 NTT<9432>=大幅高。
同社は6日取引終了後、16年3月期の連結業績予想の修正を発表。営業収益を11兆3500億円から11兆4000億円(前期比2.7%増)へ、営業利益を1兆2000億円から1兆2500億円(同15.3%増)へ、最終利益を6300億円から6550億円(同26.4%増)へ増額した。国内通信事業での合理化効果が収益に寄与している。また、買いの手掛かりとなっているのは、同社が同日保有する自社株の消却を発表したこと。発行済み株式数の7.8%にあたる1億7700万株を13日に消却することを発表、積極的な株主還元姿勢を評価する買いを呼び込んだ。

 日本写真印刷<7915>=急反発。
同社は6日の取引終了後、16年3月期の連結業績見通しについて、売上高を1200億円から1190億円(前期比0.2%増)へ下方修正した一方、営業利益を85億円から90億円(同2.9%増)へ、純利益を73億円から75億円(同33.3%減)へ上方修正した。上期におこなった生産体制の改善や生産効率の向上などが継続すると見込んでいることが要因としている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想