米雇用統計前に手控え、上値抵抗ゾーンで足踏み

著者:冨田康夫
投稿:2015/11/05 18:55

明日の東京株式市場見通し

 6日の東京株式市場は、米10月の雇用統計発表を目前にしていることに加え、週末控えのポジション調整も予想されることから、売り優勢の展開で日経平均株価は反落となりそうだ。

 前日に新規上場した郵政3社は、いずれも堅調な値運びを継続して全体相場を牽引するかたちとなっている。ただ、きょうまでの2日間で、日経平均株価は433円の大幅上昇となっており、高値警戒感から利益確定の売りが出やすい状態となってきた。

 市場関係者からは「きょうの上昇で8月28日高値(1万9192円)や10月30日高値(1万9202円)、200日移動平均線(1万9238円)などが上値抵抗線として意識されており、この水準を突破して本格反騰相場に突入するまでには、もう少し日柄が必要とされるのでは」との見方が出ていた。

 5日の東京株式市場は、主力株をはじめとして広範囲に買いが先行し、後場は高値圏で頑強に売り物をこなす展開で、売買代金は3兆円を超える活況を持続した。日経平均株価終値は、前日比189円50銭高の1万9116円41銭と続伸した。

5日の動意株

 味の素<2802>=後場急伸。
きょう午後2時に、発行済み株式総数3.38%にあたる2000万株、300億円を上限に自社株買いを実施すると発表した。同時に、16年3月期通期の連結営業利益を従来予想の820億円から860億円(前期比15.4%増)へ、純利益は同650億円から675億円(同45.2%増)へ増額修正。海外食品事業で、海外調味料がアジアでの販売が伸びたほか、加工用うま味調味料が貿易為替影響などにより好調に推移している。

 ユアテック<1934>=大幅高。
親会社である東北電力<9506>の設備投資増強を追い風に、省エネ改修工事の提案営業強化で需要を確保している。また、同社は首都圏の都市開発案件でも収益機会をとらえ受注も増勢だ。受注単価上昇で売上総利益率の改善も鮮明となり16年3月期営業利益85億円(前期比24%減)から120億円(同6.8%増)に大幅増額修正、一転増益見通しに変わったことを受け、波状的な買いが観測されている。

 ヤマダ電機<9831>=急反発。
同社は5日正午、16年3月期の連結業績予想の修正を発表。営業利益を416億2000万円から607億円(前期比3倍)へ、最終利益を254億円から331億円(同3.5倍)へ大幅上方修正しており、これが大きく好感される格好となった。消費増税の影響が一巡していることに加えて、不採算店舗閉鎖などの合理化対策が寄与して店舗効率が改善、育成中のスマートハウス事業も収益貢献するなど経営構造改革が軌道に乗ってきた。

 古河電気工業<5801>=急伸。
同社が4日取引終了後に発表した16年3月期第2四半期累計の連結決算は、売上高4281億5000万円(前年同期比3.2%増)、営業利益91億3900万円(同46.5%増)、最終利益19億6400万円(同69.8%増)と高水準の伸びを示した。営業利益は会社側の従来計画が65億円だったことから、大幅に上振れしたことを好感する買いが集中している。北米や中国で光ファイバーケーブルの需要が旺盛で収益を押し上げている。光ファイバー需要は世界的な需要拡大局面に入っており、世界屈指のメーカーである同社にとって中期的にも追い風が強い。

 淺沼組<1852>=急反発。
同社は4日の取引終了後、16年3月期の連結業績見通しについて、売上高を従来予想の1352億円から1392億円(前期比9.7%増)へ、営業利益を21億円から40億円(同53.4%増)へ上方修正したことが好感されている。足もとの工事が順調に進捗していることから売上高が想定を上回って推移していることに加えて、工事採算が改善していることが要因としている。

 イナリサーチ<2176>=ストップ高。
同社は取引開始前に、米国食品医薬品局(FDA)が2016年末から新薬申請の際に義務づける「非臨床試験データの電子化および標準化(SEND)」について、国内の受託研究機関として初めてトライアル申請に成功したと発表。これが材料視されているようだ。SENDは基本的に申請に使われる非臨床試験データとそのコンテンツ、用語などをすべて統一するもの。FDAは完璧なデータセットの提出を求めており、事前検証としてトライアル申請の実施を推奨している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想