郵政3社のIPOこなし上昇、好業績銘柄への物色継続

著者:冨田康夫
投稿:2015/10/30 20:13

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、文化の日(3日)の祝日を挟んで営業日は4日間となる。4日には、今年の国内株式市場最大のイベントとして注目を集める日本郵政3社が東証1部に新規上場する。

 8月下旬から急落に転じた日経平均株価も、10月入りと同時に反転上昇基調を強め1万9000円台を回復しており、大型の新規上場を迎える環境が整ってきた。一部で懸念された、郵政株購入資金を得るための換金売りによる需給悪化も杞憂となっている。

 郵政3社それぞれの初値形成やその後の株価推移によって、全体相場は左右される可能性がある一方で、佳境を迎えている4~9月期決算発表に伴う好業績銘柄への買いは継続しそうだ。日銀の金融政策は「現状維持」となったものの、次回以降の会合に追加緩和の期待感が継続し、株価の下支えとなる。

 日経平均株価の想定レンジは1万8800~1万9400円とする。ただ、イベント通過後の週後半は、週末の米10月の雇用統計を前にして買い手控え姿勢が強まる可能性もある。

30日の動意株

 そーせいグループ<4565>=後場一時ストップ高。
同社は午後1時30分ごろ、導出先のノバルティス社が開発したCOPD治療薬Utibron Neohaler(グリコピロニウム臭化物、開発コードQVA149)について、米国FDA(米国食品医薬品局)から、慢性気管支炎や肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく気道閉塞性障害の長期維持療法としての承認取得を確認したと発表しており、これを好感した買いが入っている。また、同社導出の単剤、Seebri Neohaler(開発コードNVA237)も同時にCOPDの適応で承認されたとあわせて発表した。

 トクヤマ<4043>=後場急伸。
同社は前引け後、16年3月期連結業績見通しの上方修正を発表。売上高は従来予想の3090億円(前期比2.3%増)から3060億円(同1.3%増)に引き下げたものの、営業利益は同180億円(同7.8%減)から200億円(同2.4%増)に、最終損益は同60億円の黒字から140億円の黒字(前期は653億4900万円の赤字)に引き上げている。国産ナフサ価格が想定を下回って推移したことにより、石油化学製品の損益が改善した。

 豊田自動織機<6201>=後場に入り一段高。
同社は11時40分ごろ、16年3月期の連結業績見通しについて、売上高を従来予想の2兆2000億円から2兆2300億円(前期比2.9%増)へ、営業利益を同1250億円から1300億円(同10.6%増)へ上方修正したことが好感されている。上期業績が中国・欧州向けカーエアコン用コンプレッサーの伸長や欧米向けフォークリフトトラックの増加などにより、計画を大きく上回って着地したことが要因。

 塩野義製薬<4507>=大幅高で6連騰。
30日付の日本経済新聞で、「インフルエンザを1日で治療できる世界初の新薬を2018年にも国内で実用化する」と報じられたことを好材料視した買いが入っている。インフルエンザ治療薬は現在、スイスのロシュが販売する「タミフル」など代表的だが、インフルエンザウイルスの増殖そのものを止める効果はない。記事によると新薬は、ウイルスの増殖を抑えて死滅させるとあり、画期的な新薬になるとの期待感から買われているようだ。

 野村不動産ホールディングス<3231>=急伸。
同社は29日取引終了後、16年3月期の連結業績予想の修正を発表。売上高を5850億円から5750億円(前期比1.4%増)へ減額したものの、営業利益を730億円から760億円(同5.7%増)へ、最終利益を380億円から400億円(同4.1%増)へそれぞれ上方修正しており、これを好感するかたちで買いが流入した。オフィスビルの空室率低下が追い風となっている。また、大型物件の売却益も寄与しており、最終利益は小幅減益見通しから増益に変わった。

 三機工業<1961>=急伸。
同社は29日の取引終了後、16年3月期の第2四半期累計(4~9月)連結業績予想の修正を発表。売上高を従来予想の760億円から754億円(前年同期比0.1%減)へ、営業損益を19億円の赤字から1億7000万円の黒字(前年同期27億500万円の赤字)へ、最終損益を12億円の赤字から2億5000万円の黒字(同13億2700万円の赤字)へ修正した。受注環境の改善に加え、原価管理の徹底など利益改善への取り組みが利益を押し上げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想