中国経済指標前に手控え、乱高下によるリスク警戒

著者:冨田康夫
投稿:2015/09/10 22:03

個人投資家は “レバレッジ・インデックスETF”で対抗

 11日の東京株式市場は、週末に伴うポジション調整の売りに加えて、中国8月の小売売上高・鉱工業生産指数などの経済指標が13日の日曜日に発表される予定となっていることなどから、模様眺め気分となり買い手控え姿勢が強まりそうだ。

 市場関係者からは「日経平均株価が前日に1343円高と急騰した翌日に、一時800円を超える急落となるなど、相変わらず荒っぽ過ぎる相場が続いている。株価指数先物主導の乱高下相場について行けずに、個人投資家や機関投資家の一部は見送り姿勢を強めている」としている。

 東証1部のこの日の売買代金は、2兆5992億円と変動幅が激しい割には盛り上がりを欠いていた。乱高下に伴いリスクが強調される地合いとなっており、資金流入を阻害する結果となっている。

 10日の東京株式市場は、前日に日経平均株価が記録的な急騰をみせた反動に加え、米国株安も重なって売り優勢の流れとなった。日経平均株価終値は、前日比470円89銭安の1万8299円62銭と急反落した。

 ただ、そうしたなかで、東証1部上場の売買代金上位には「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>」や「日経平均ブル2倍上場投信<1579>」、「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>」といった、日経平均株の上下動と連動したり、さらにその2倍で変動するETFが連日名を連ねている。

 これについて市場関係者からは「明確な理由(材料)が見当たらないなかで、あまりに激しい乱高下相場で、多くの投資家は個別銘柄を売買する意欲が極端に後退しいている。そこで、MACDなどのテクニカル指標を利用しながらシステム的にトレンドフォロー(順張り)で売買するケースが一気に増加している」との見方が出ていた。

 “鶏が先か、卵が先か”というような話だが、株価指数先物のインデックス売買の関与率が増えれば、個人投資家もそうした動きに沿った投資行動をとざらるを得なくなり、それが、さらに無味乾燥な乱高下の波乱相場を助長することになる。

トピックス:郵政グループ3社が11月4日に東証上場、市場の活性化に期待

 日本郵政グループ3社が10日の取引終了後、東証への新規上場を発表した。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の上場日は11月4日。国内外で総額約1兆3876億円の株式売り出しを実施。NTTグループの売り出しに次ぐ、民営化企業の超大型IPO(新規上場)となる。

 新規上場の統括役となるジョイント・グローバル・コーディネーターは野村証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券、JPモルガン証券。ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の公開価格決定日は10月19日に対し、日本郵政は26日に決定される。

 想定発行価格は日本郵政が1350円、ゆうちょ銀行が1400円、かんぽ生命が2150円。売買単位はともに100株であり3社合計で49万円。今後、正式な公開価格の決定で金額は変わるが、NISA(少額投資非課税制度)向けの価格設定がされている。

 株式市場は全般相場の下落とともに、今後の行方を見定める展開となっているが、日本郵政グループ3社の上場は、「株式市場に新規資金を呼び込むビッグチャンス」(市場関係者)と意気込む声は多い。

 すでに、市場には関連株を物色する動きは強まっており、今後、郵政3社の新規上場に市場の視線は集中しよう。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想