問題は実体経済に波及するかどうか、上海銀行間取引金利に注目

投稿:2015/07/10 09:15

問題は実体経済に波及するかどうか、上海銀行間取引金利に注目

中国株暴落の原因は、もちろん短期的に行き過ぎた上昇という側面もありますが、当局の打ち出した数々の株価対策にあると思います。先週末時点で上海総合指数は50日線より19%以上も下げており、そろそろ自律反発が入ってもおかしくないところにありました。

しかしその期待を台無しにしたのが、基金による株価買い支え、空売りの監視、取引停止措置等々の株価対策だったと思います。このような株価対策が古今東西においてうまく機能したことなどありません。中国は日本や米国のバブル崩壊を周到に研究していると聞いていましたが、動揺したのか、理性が作用せず、衝動的に下手な手を出してしまったのだと思います。

中国本土では7日、8日と連日で数百もの企業が、自社株買いや従業員持ち株制度の準備などという、とても重要事項と思えない理由で売買停止を申請しました。当局の株価対策の一環と思いますが、最悪の結果を招いています。A株ではすでに上場企業の半数近く(1400社以上)が売買停止となっており、売るに売れない状況が、パニック心理を作り出しています。

持ち銘柄が売るに売れない時、パニックになった人々は他の売れる銘柄を先に売ってしまおうとするでしょう。

先週までは、中国本土株が大きく下がり、それにつられて香港株も少し下がるという具合でした。しかし本土で株価対策と取引停止銘柄続出した今週は、香港市場が本土の吐き出し口となった模様で、上海以上に香港で売り注文が出ている様子です。香港には一時的な買い支えもなく、ストップ安もないからです。

しかし、7月9日のコラム【中国株暴落のリスクをどのように考えれば良いか】でも書きましたが、短期的には7月9日が底となりいったん反発しました。

今後についての一番重要なポイントは、この株安が実体経済に影響を及ぼすかどうかです。その点の重要な指針となるのが上海銀行間取引金利(SHIBOR)です。2013年にシャドーバンキングが問題になったときは銀行の資金繰りが危機的な状況にあると考えられ、短期金融市場に緊張が走り、SHIBORが急騰しました。こうなると信用収縮が起こり、銀行からの資金供給に問題が起こるので実体経済に影響してきます。

ところが今回の株価急落ではSHIBORは落ち着いており、信用収縮が起きていません。つまり現在の中国の株式市場は個人投資家のギャンブルの場とみられており、実態経済への影響は限定的であるとみなされているのだと思います。

以上を考えると、日本株への影響は限定的だと思います。中国株急落は今のところ中国の実体経済にもちろんマイナスですが、実体経済への影響は前述のように限定的と思います。仮に経済への影響が大きくなってくるようであれば景気刺激策や金融緩和が検討されてくるため、日本企業の業績への影響も限られたものとなると思います。

もちろん、中国本土株は出来高が大きく膨らんだ中での株価下落なので、株価動向については今後も予断を許しませんが、基本的には、中国株が急落の影響で日本株が下がったところは買いを入れても良いのではないかと思います。
小池麻千子
グローバルリンクアドバイザーズ 株式アナリスト
配信元: 達人の予想