強弱観対立も買い優勢か、ギリシャ情勢に注目続く

著者:冨田康夫
投稿:2015/07/07 19:34

明日の東京株式市場見通し

 8日の東京株式市場は、きょうの戻り足を引き継ぎ続伸となりそうだ。ギリシャ債務問題の動向を横にらみに依然として神経質な展開を強いられそうだが、強弱感対立のなかも、相場に具体的な方向性を与える材料が出なければ、買い戻しが優勢となりやすい。きょうの大引け時点で日経平均ベースの騰落レシオ(25日移動平均)は80.3%と売られ過ぎの領域にあることが、売り方にとっては不利な条件となる。

 ただし、ギリシャ国民投票の結果を受け、交渉が暗礁に乗り上げていることは事実である。日本経済への直接的デメリットは希薄とはいえ、株式需給面ではリスク許容度が低下した欧州投資家のキャッシュポジションを高める動きが、足かせとなりやすい。したがって、現在の相場は買い戻しによる上昇はあっても、積極的に実需買いを入れる環境にはなく、戻りの幅も限られそうだ。

 一方、東京市場は波乱に見舞われているようで、日経平均は13週移動平均線上にとどまる腰の強さをみせており、7月下旬以降の企業の4~6月期決算発表を前に先高期待は根強い。

7日の動意株

 スリー・ディー・マトリックス<7777>=急反発。
午後0時30分に国立がん研究センターと共同開発した新規siRNA核酸製剤「TDM-812」が、国立がん研究センター中央病院で第1相医師主導治験が開始されたことを発表した。今回の医師主導治験は、治療抵抗性の乳がんで体表から触知できる局所腫瘤(かたまり)を有する患者を対象とした、世界で初めて人へ投与するファースト・イン・ヒューマンの医師主導治験。

 TOWA<6315>=大幅高。
リーマン・ショック直前の08年7月以来7年ぶりの高値圏に到達した。中国でのスマートフォンのハイエンド機種の普及に伴い、後工程で使われる高精度のパッケージング機が収益に寄与している。高齢化の進展でファインプラスチック成型品も医療分野向けに伸びている。ROEが10.9%と2ケタ水準をキープしていることも評価材料。最近では6月25日に大和証券が同社の投資判断を最上位の「1」でフォロー、目標株価を1450円に設定しており、時価は引き続き上値余地大とみた投機資金の買いを誘導している。

 ジグソー<3914>=ストップ高。
同社は6日に、AR(拡張現実)技術を有する英Kudanの日本法人が実施した第三者割当増資に対する払い込みが完了したと発表。これを機に英Kudanとの共同世界展開をスタートしたことも明らかにしており、期待感が高まった。同社は出資により、IoTセンシング領域におけるARの活用および自動操縦・自動運転のコア技術である自動画像認識分野における技術共同開発や、IoT-OSとの連動によるグローバルクラウドインフラ連携およびビジネスフィールド拡大に伴う海外市場への進出、セキュアOSの開発などを推進するとしている。

 シー・ヴイ・エス・ベイエリア<2687>=一時ストップ高。
6日の取引終了後に発表した第1四半期(3~5月)連結決算が、売上高72億3400万円(前年同期比2.8%減)、営業利益8200万円(同84.7%増)、純利益5200万円(同48.9%増)と大幅増益となったことが好感されている。主力のコンビニエンスストア事業で、独自に展開している弁当で新規ベンダーとの取引を開始するなど競合店との差別化に取り組んだことが奏功したほか、前期までに不採算店の閉店や運営からの撤退を進めたことで採算が改善し、業績を牽引した。

 倉元製作所<5216>=ストップ高。
きょう付の日刊工業新聞でマグネシウム電池事業に参入すると報じられており、これを好材料視した買いが入った。記事によると、「防災機器や各種センサーなど、マグネシウム電池を使った産業用・民生用製品を開発・販売し、3年後をめどに月当たり1億円程度の売り上げを目指す」という。同社株は今年3月にも「マグネシウム電池を使ったスティックライトを開発した」と報じられたことを受けて急騰した経緯がある。

 HIOKI<6866>=大幅反発。
6日の取引終了後、15年12月期の連結業績見通しについて、売上高を従来予想の185億円から193億円(前期比13.0%増)へ、営業利益を同23億5000万円から29億2000万円(同48.2%増)へ、純利益を同15億円から19億1000万円(同41.7%増)へ上方修正した。また、従来20円を予定していた期末配当を30円に引き上げ、中間配当(15円)と合わせた年間配当を45円(従来予想35円、前期30円)にするとあわせて発表しており、これも好材料視された。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想