欧米株の調整に警戒感、日経平均上値に重さ増す

著者:冨田康夫
投稿:2015/06/08 19:25

明日の東京株式市場見通し

 9日の東京株式市場は、きょう前週末に比べて外国為替市場で円安・ドル高が大幅に進行したにもかかわらず、輸出関連の主力銘柄の動きが鈍かったことへの警戒感が尾を引いて、日経平均株価は続落が予想される。欧米株式市場が下落基調となるなかで、日本株に対する外国人投資家の参加姿勢低下に対して懸念が広がっている。

 8日の東京株式市場は、米雇用統計の内容が予想を大幅に上回ったことで、米利上げ観測が強まり1ドル=125円台に下落した円安・ドル高を好感し、プラス圏でスタートした。ただ買い一巡後は、欧米金利上昇への警戒を背景に利益確定売りも出て、方向感に乏しい推移となり、日経平均株価終値は、前週末比3円71銭安の2万457円19銭と小幅ながら続落した。

 市場関係者からは「1ドル=125円台半ばへと、13年ぶりの円安水準となっているにもかかわらず、トヨタ自動車<7203>に象徴される主力輸出銘柄の値動きが冴えず、軒並み値を下げた。NYダウ平均株価など海外株式市場が調整色を鮮明にしているなかで、日経平均株価の上値は重さを増している」との見方が出ていた。

8日の動意株

 山九<9065>=大幅高。
ここ新日鉄住金系の銘柄に物色の矛先が向いているが、これは鉄鋼や非鉄業界にとどまらず、同社など物流や機工事業を手掛ける業態にも波及している。高炉の大型更新工事などが収益に寄与するほか、物流事業は中国展開に経営資源を振り向け取扱量を拡大している。16年3月期は海外での物流事業が牽引し、最終利益段階で15.7%増益と2ケタ成長を確保する見通し。「国内外の複数の証券会社から強気の投資判断が相次ぎ、それを足場とした投機筋の大口買いに個人の短期資金が追随」(市場関係者)したもよう。

 山一電機<6941>=大幅続伸。
IC基板装置や検査装置に使うパッケージ挿入固定用のバーンインソケットが好調で売り上げを牽引している。信用取組はここにきて売り残が増加する一方、買い残が減少、需給関係の改善も味方している。法人間の玉集めの動きも注目。最近ではインベスコ・アセット・マネジメントが大株主に浮上したほか、直近では大和投信が再び買い増す動きをみせるなど思惑を呼んでいる。

 インフォテリア<3853>=一時ストップ高。
同社が展開するスケジュール管理や備忘録などに使うアプリ「lino」が6月3日から米アップル社が販売する「アップルウオッチ」でも管理・確認できるようになると発表したことが材料。「lino」は2008年4月から提供を開始、既にユーザー数は全世界で100万人を超えているという。直近は、6月4日の急騰で大株主のサン・クロレラが同社株の保有比率を大きく減らしたことが判明したが、むしろ株価を刺激する形となっている。

 薬王堂<3385>=急伸。
同社は5日取引終了後に、5月度の月次売上高速報を公表。既存店売上高は前年同月比15.1%増となり、2カ月連続で前年実績を上回った。 客数は同11.0%増、客単価は同3.7%増とともに2カ月連続のプラスとなった。また、全店ベースの売上高も同25.5%増と2カ月連続で前年実績を上回った。

 アールビバン<7523>=一時ストップ高。
同社は版画制作の展示販売を主力としているが、リゾート事業も手掛け伊勢志摩で「タラサ志摩ホテル&リゾート」を展開している。16年の日本での主要国首脳会議(サミット)が、三重県で開かれる「伊勢志摩サミット」となることが決定したことから、関連株物色の矛先が向かっている。

 データセクション<3905>=ストップ高。
同社はこの日、ファイブスター投信投資顧問(東京都中央区)と共同でビッグデータを活用した「株価予測システム」を開発したと発表、これを好感している。この「株価予測システム」は、ツィッターや為替、各種マクロ指標などの広範なビッグデータと、各銘柄の株価変動の相関性、因果性を統計的に解析するシステム。このシステムにより各銘柄の「最適な投資タイミング」を「迅速」に探知することが可能になるという。「株価予測システム」による日本株公募ファンド「FS・DSビッグデータ活用型ロングショートファンド(仮称、ビッグデータファンド)」を7月22日から募集を開始し、8月20日から運用を開始する予定。日本初のビッグデータファンドとなることから、その運用動向が注目されよう。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想