米景気がサイクルトップとなるか否かの見極めに

著者:菊川弘之
投稿:2015/05/08 14:01

3年目の上げ相場は複雑な動き

 1―3月の米GDPは、0.2%の成長と市場予想を大きく下回り、在庫を除いた最終需要ベースでは0.5%のマイナスとなった。寒波の影響が0.5%、港湾ストの影響が0.3%あったとの試算もあるが、ドル高の影響で輸出が減ったことと、原油安の影響で石油関連の設備投資が半減したことも一因となっている。
 
 今週は4月の米雇用統計の前哨戦となる米ADP民間雇用者数が市場予想を下回ったことで、FRBの利上げ時期が遠のくとの観測が広がったが、強気となった新規失業保険申請件数を受けて雇用統計前のポジション調整絡みでドル買い戻しの動きとなっている。

 4月の米雇用統計は、前回雇用統計のネガティブサプライズが寒波や港湾ストによる一時的なものなのか、それとも米景気サイクルがトップを付けてダウンサイドに入りとなっているのかを見極めるポイントとなろう。
 
 雇用統計では非農業部門雇用者数や失業率だけでなく、いわゆるイエレンダッシュボードと呼ばれる他指標についての事前予想比で、まずはアップダウンしそうだが、相対的に弱気となった場合、ドル売り・NY金買いで市場は反応しそうだ。反対に、前回値(非農業部門雇用者数:+12.6万人)の上方修正を含めて強気の内容となった場合は、ドル買いで反応しそうだが、出口戦略の思惑が高まる事でNY株安となれば、リスク回避が意識されて、ドル円の戻りも限定的となるかもしれない。TPA法案を米議会で通過する必要がある中、米国内の保護主義勢力の反発を招きかねない極端なドル高・円安は日米ともに避けたい意向だ。ユーロの底打ち・ドルの頭打ちが意識されつつある状況。雇用統計が事前予想よりも多少良くても、ドル円の戻りは鈍くなるのではないか?米国は利上げしてもわずかな幅で、連続的なものにはならないとの認識が市場で徐々に高まる可能性もあるだろう。一目均衡表では雲の厚みが薄くなっており、下値支持としても上値抵抗としても、信頼性が落ち込む時間帯となっている点にも注意したい。
 雇用統計が強弱マチマチとなった場合は、引き続き、三角保合いが継続するだろう。2010年5月には、ギリシャ・ショックに端を発した「フラッシュ・クラッシュ」が起きた事もあり、週末要因と合わせて、翌日に控えた欧州財務相会合でのギリシャ支援体制の行方を見極めようとする動きとなるだろう。この場合、ギリシャ返済不能などの事態に陥らない限りは、保合いが継続見通しだ。一目均衡表では、NY金が5月24日前後、ドル円が5月20日前後に、雲のねじれが控えており、同日柄での変化に注意したい。ただし、この時期は、水星逆行期(5月18日~6月11日)にも当たり、テクニカル面からのダマシも多くなる時間帯だ。3年目の上げ相場は、やはり、複雑な動きを取りそうだ。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想