原油安が金融不安の主因に

著者:菊川弘之
投稿:2014/12/16 12:37

117円の攻防戦

 金融市場で原油安がリスクオフの主因となってきた。15日のNY原油市場は、石油輸出国機構(OPEC)事務局長が供給過剰懸念にもかかわらず減産しないとしたことや、アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は、原油価格が1バレル=40ドルに下落しても、OPECは減産しないという決定を維持し、緊急会合を検討するのは、少なくとも3ヶ月間状況を見守ってからになるだろうと語ったことを受け55ドル台まで続落。原油価格下落は、日本のような輸入国にとってはプラス要因となる一方、原油輸出国にとってはマイナス要因になる。プラスマイナス両面がある訳だが、短期間にこれだけ大きく下落すると、国際金融市場に大きな影響を与える。

 5日の米雇用統計は強気の内容となったが、欧州、中国の景気回復が遅れている状況下、さらに新興国経済が急減速すると、米連邦公開市場委員会(FOMC)で注目されている低金利政策を「相当な期間」継続するとしている声明文の文言が外されにくくなってきたかもしれない。仮に「相当な期間」の文言を削除・変更したとしても、イエレン議長の会見でのフォローが予想される中、原油安でインフレ期待が下がっているため、金利上昇には繋がりにくい地合いで、ドル円の調整に注意したい。11月27日の十字線安値(117.20円)と重なる心理的節目117円を割り込むと、三尊天井が意識されてくる。この場合は、10月15日安値~12月8日高値までの上昇に対する38.2%押し(115.48円)、V=115.64円、N=114.78円なども視野に入ってくる。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想