押さば買いの強調展開、原油市況の方向性を注視

著者:冨田康夫
投稿:2014/12/02 22:44

3日の東京株式市場見通し

 3日の東京株式市場は、引き続き買い優勢の展開が想定される。

 米格付け会社ムーディーズの日本国債格下げはタイミング的にサプライズだったが、2日の東京市場は朝方こそ安く始まったものの比較的冷静に売りをこなし、その後日経平均はプラス圏に切り返す動きをみせた。この腰の強さは、当面の相場の方向性が押さば買いの強調リズムにあることを暗示している。

 ただ、テクニカル面で過熱警戒域にあることに変わりなく、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は2日引け時点で140%を上回るほか、25日移動平均線との上方カイ離も4.5%弱に達している。これが、原油安と円安という2大材料を拠りどころとした買いの矛先を、どの程度鈍らせるかは定かではない。足もと原油市況は反発したが、これがアヤ戻しで終わるのかどうか注視したいところ。

2日の動意株

 旭硝子<5201>=後場上げ幅拡大。
この日、東京工業大学が、同大応用セラミックス研究所の細野秀雄教授や稲葉誠二特任助教(現旭硝子)、伊藤節郎特任教授(元旭硝子)らの研究グループが、ゴムのように伸び縮みする酸化物ガラスの作製に成功したと発表しており、これを材料視した買いが入っている。室温では硬く割れやすい酸化物ガラスも、構造を工夫すれば高温でゴムのように伸び縮みする特性を発現できることを示したもので、有機高分子のゴムでは対応できない高温下や酸化性環境などでの応用が考えられるという。

 ミツミ電機<6767>=急伸。
11年5月以来3年7カ月ぶりの4ケタ大台復帰を果たした。世界的なスマートフォンの販売増勢が伝わるなかで、市場拡大を牽引する中国ではLTEサービスの開始などに伴い普及第2ステージに入っており、スマホも高価格機種へのシフトが進んでいる。同社はスマートフォン向け動画撮影用手振れ防止部品(アクチュエーター)で屈指のシェアを持っており、高価格機種の需要加速による恩恵が大きい。

 河西工業<7256>=3日続伸。
日産向けを中心にドアトリムやヘッドランニングなど内装部品を手掛けているが、顧客メーカーのモデルチェンジなどで収益機会が広がっている。景気回復が続く北米向けが引き続き好調に推移しているほか中国の伸びも顕著、海外展開加速とコスト競争力強化への取り組みが利益押し上げ要因として表面化している。PER7倍前後と指標面でも割安で4ケタ大台復帰をにらむ。

 東京製綱<5981>=大幅高。
2日は売り物が切れたのを見計らって改めて物色資金の流入が勢いを増した。ワイヤロープは国内で焦眉の課題となっている橋梁の補修需要などで追い風が強く、海外でも新興国のインフラ整備需要を中期的に取り込んでいくことが予想される。従来品と比べ軽く強度にも優れる炭素繊維を活用したケーブルの生産能力を増強し、高水準の需要をとらえる構えにある。

 アイロムホールディングス<2372>=ストップ高。
2日付の日本経済新聞で、国産初のエイズ予防ワクチンの人への安全性を確認したと報じられたことを材料視。記事によると、米国に本部を置く国際組織「国際エイズワクチン推進構想(IAVI)」による海外での治験で大きな副作用がないことが分かったとしており、近く有効性を確かめる第2段階の治験に移る予定だとあることから、製品化へ一歩近づいたとの期待から買われているようだ。なお、会社側では9時20分ごろに第1相臨床試験暫定的結果について発表しており、内容は南アフリカのケープタウンで開催されたHIV R4P会議で発表されているとした。

 ネットワークバリューコンポネンツ<3394>=急反発。
前週11月27日に、同社株に対する信用取引の臨時措置(委託保証金率50%以上、うち現金20%以上)が解除され、これを受けてストップ高に買われたが、その後はいったん目先筋の利食いに調整していた。しかし、個人投資家などの物色人気は旺盛、25日移動平均線を足場とする上昇波動は不変できょう改めて買い直されている。最近では海外からの政府機関へのサイバー攻撃も目立ち、2020年の東京五輪開催を控え、日本にとってサイバーセキュリティー強化は安全保障のうえからも国家的な課題となっている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想