大勢は「国策に売りなし」

著者:冨田康夫
投稿:2014/11/04 21:21

5日の日本株式見通し

 5日の東京株式市場は目先買い戻し一巡で、いったん押しを入れる展開となりそうだ。ただし、大勢トレンドは上向きで変化はなく、下値では買い直されて、早い段階で再浮上する局面が想定される。

 前週末の日銀の追加緩和決定は市場にサプライズを与えたが、これを単発で評価すると見誤るのではないか。政府の補正予算編成に向けたアナウンスやGPIFの株式運用枠拡大の動きなどとセットであり、消費増税10%への再引き上げ決定に向けて、足並みをそろえた政策サイドの決意が底流している。結果的に売り方のなりふり構わぬ買い戻しを誘発したが、「国策に売りなし」とすれば、これは反転上昇相場の第一幕に過ぎない。

 東証1部の騰落レシオは4日時点で87%台と過熱感には遠い状況にあるのも強みだ。うまく循環物色の流れが形成されれば、無理のない形で全体指数には浮揚力が働く。紆余曲折はあったが、強気派の掲げた上値の要衝である1万8000円ラインもようやく視界に入ってきた。

4日の動意株

 TDK<6762>=続騰。
10月31日取引終了後に15年3月期第2四半期(4~9月)の連結決算を発表。売上高5022億7500万円(前年同期比3.8%増)、営業利益279億2200万円(同63.9%増)と増収大幅増益を達成したことを受け、引き続き買い気が盛り上がっている。パソコンやゲーム機の需要増に伴い主力のハードディスクドライブが拡大、想定よりも円安が進んだことも売上高、利益を押し上げた。

 日特エンジニアリング<6145>=後場上げ幅を拡大。
前引け後に15年3月期の連結業績見通しについて、売上高を従来予想の190億円から205億円(前期比41.8%増)へ、営業利益を同21億円から23億円(同3.2倍)へ、純利益を同13億5000万円から15億円(同2.3倍)へそれぞれ上方修正したことが好感されている。従来の巻線機事業に加えて、FAを取り入れた設備売り上げの増加が見込まれることなどが要因としている。

 東洋ゴム工業<5105>=大幅高で4日続伸。
主力のタイヤ部門は収益基盤である北米向けを中心に好調、為替の円安進行や天然ゴム市況が引き続き軟調な動きにあることも心強いフォローウインドとなっている。米国ではピックアップトラックやSUVなど大型乗用車の販売が好調で、タイヤも高単価製品中心に需要を伸ばしており、14年12月期は営業利益455億円(前期比22.2%増)と従来予想から大きく上乗せされている。「

 宇徳<9358>=ストップ高。
同社は10月31日取引終了後に、15年3月期通期の連結業績予想修正を発表。営業利益見通しを従来の36億5000万円から42億5000万円(前期比48.3%増)に引き上げたことが好感されているようだ。通期の連結売上高見通しは485億円から500億円(同14.7%増)に増額修正。会社側では、橋梁工事などの追加・新規の工事や重量物輸送などの受注数の増加が見込めるとしている。

 竹内製作所<6432>が急伸。
外国為替市場で一時、1ドル=114円台前半へとドル買い・円売りの動きが加速し、急速に円安が進行している。建設機械の海外売上比率95%という同社にとって、円安による採算改善効果に期待した買いを誘っている。15年2月期通期の連結売上高は従来予想の596億円から670億円(前期比25.0%増)、営業利益は60億円から96億4000万円(同2.2倍)に大幅増額しているが、一段の上方修正への可能性も意識される場面だ。

 アサカ理研<5724>=ストップ高。
同社は10月31日に、エマルションフロー法を用いたレアアース・レアメタルのリサイクル研究開発成果が、日本原子力研究開発機構から発表されたことを公表。これが材料視されているようだ。エマルションフロー法は溶媒抽出と呼ばれる方法の一種で、同機構が開発を進めているもの。同社との共同開発研究で、光学ガラス廃材や低品位レアアース原料から酸処理などによって溶出されたレアアースを、低コストで高効率に純度99.999%まで分離・精製することに成功した。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想