3連休を前に買い手控え、円安シナリオに黄信号

著者:冨田康夫
投稿:2014/10/09 19:59

10日の株式相場見通し

 10日の東京株式市場は、3連休を前に手控えムードが一段と強まり、売り優勢となりそうだ。

 9日の東京株式市場は、前日の米株式市場でNYダウ平均株価が大幅反発したのを受け、買い優勢のスタート。前場は前日比100円を超える上昇幅となる場面があったものの、昼休み時間中に外国為替市場で1ドル=107円台後半へと円高・ドル安が進行したことから、後場は一転マイナス圏での推移となり、終値は前日比117円安の1万5478円と、8月8日以来、約2カ月ぶりに75日移動平均線(1万5550円=9日)を割り込んだ。

 市場関係者からは「前日の米国株上昇を買い手掛かりに上昇したものの、円高進行で逆に売りが優勢となるのは、円安を拠り所に買い上がった9月上昇相場の前提が崩れかけているという不安心理の表れ」との見方が出ていた。また、大阪取引所が9日引け後に発表した10月第1週の日経平均先物とTOPIX先物の投資部門別売買動向で、海外投資家は6923億円と大幅に売り越したことも懸念材料。この売り越し額は7年2カ月ぶりの高水準。

9日の動意株

 エンカレッジ・テクノロジ<3682>=後場一段高。
同社はきょう、NEC<6701>とセキュリティー分野で協業し、NECのクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」のID&アクセス管理サービスを共同開発したと発表。これが買い手掛かりとなっているようだ。このサービスは、ワークフローを利用した事前申請に基づくID発行・管理や未許可アクセスの点検などの機能を提供するもので、システム運用者による情報漏洩や不正行為を未然に防止することが可能。今年12月からの提供開始を予定している。

 日本アビオニクス<6946>=急伸。
世界的なエボラ出血熱の感染拡大への懸念が高まるなか、オバマ米大統領が航空機の乗客へのエボラ出血熱検査を検討している、と伝えられている。同社は発熱者を早期発見することに威力を発揮する赤外線サーモグラフィ装置を空港などに納入した実績を持ち、エボラ関連での今後の需要増への期待が膨らんでいる。

 日立金属<5486>=頑強推移。
同社は自動車向け鋳鉄製品など高級鋳物を手掛け、海外では鉄道など産業インフラ関連製品を中心に需要を取り込んでいる。また、レアアース磁石の製造では世界トップクラス。さらに、ノーベル賞で話題となった青色LED関連部材では、LEDの輝度を左右する窒化ガリウム基板で高水準の世界シェアを誇っている。

 エービーシー・マート<2670>=大幅反発。
同社は8日の取引終了後、15年2月期の連結業績見通しで、売上高を従来予想の2030億円から2130億円(前期比13.3%増)へ、営業利益を同358億円から406億円(同19.0%増)へ、純利益を同215億円から243億5000万円(同21.8%増)へそれぞれ上方修正したことが好感されている。上期にスニーカートレンドを受けて、国内外の既存店が好調に推移したことに加えて、下期もこの傾向が続くと予想されるなか、カジュアルスニーカーを軸にメンズではブーツスタイルの刷新を行い、レディースでは付加価値をつけた商品の提供で単価アップが見込まれることなどが要因としている。

 協和コンサルタンツ<9647>=一時ストップ高。
8日の取引終了後、14年11月期の連結業績見通しについて、売上高を従来予想の59億円から59億7000万円(前期比6.9%増)へ、営業利益を同1億6000万円から2億1000万円(同22.2%減)へそれぞれ上方修正したことを好感。第3四半期以降に発生を予定していた投資が、来期にスライドする見通しであるため販管費が減少することが寄与するという。一方、純利益は元従業員による不正行為に起因する特別損失を計上することなどで、同4000万円から500万円(同93.4%減)へ下方修正したが、これについては織り込み済みとの見方が強い。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想