買い手掛かり乏しく続落、業績楽観見通しは後退

著者:冨田康夫
投稿:2014/10/08 22:03

9日の株式相場見通し

9日の東京株式市場は、引き続き買い手掛かり材料が不足する地合いのなかで、売り優勢となり、日経平均株価は軟調な推移となりそうだ。米株式市場でNYダウ平均株価が下落基調を強めていることに加え、今月初めに一時1ドル=110円台を付けた円相場も、ここにきて一時1ドル=107円台まで円高・ドル安が進行する流れとなっており、採算悪化懸念から主力輸出企業を中心に、楽観的な業績見通しが通用し難い状態になりつつある。

 きょうは、日経平均株価が75日移動平均線(1万5548円=8日)に下値を支えられるかたちとなったが、あすは75日線をめぐる攻防となる可能性もありそうだ。

 8日の東京株式市場は、前日の米国株急落に加え、外国為替市場で円が買われたことから、リスク回避の売りが集中し、日経平均株価終値は前日比187円安の1万5595円と大幅続落した。国際通貨基金(IMF)が日本の14年度の実質経済成長率見通しを大きく引き下げたことなども嫌気された。

8日の動意株

 デジタルアーツ<2326>=堅調。
ここ急増傾向にあるサイバー犯罪への対策が重要視されるなかで、今週の臨時国会では「サイバーセキュリティ基本法案」の早期成立の可能性が高まっている。そのなか、デジタルアーツは閲覧制限ソフト開発を手掛け、Webフィルタリングやメールフィルタリングを提供しており、ベネッセ問題で個人情報漏洩問題が大きく取り沙汰されるなか、ファイル暗号ソフトへの引き合いが増勢となっている。

 ルネサスイーストン<9995>=急反発。
9月26日に東証2部市場から東証1部市場へ指定となったが、それに伴い今月末にはTOPIXに組み入れられることから、TOPIX連動ファンドなどの需要期待から買われているようだ。また、東証1部指定に伴い、15年3月期末に記念配当2円を実施し、期末一括配当を12円にするとしていることも評価されているようだ。

 SOL Holdings<6636>=大幅高。
7日の取引終了後、Oak キャピタル<3113>を割当先とする第三者割当で第1回無担保転換社債型新株予約権付社債と、第5回新株予約権を発行すると発表しており、これを材料視した買いが入っている。調達する差引手取概算額20億300万円については、インドネシアやタイでのスーパーソルガムを原料とするバイオ燃料や配合飼料向け事業への投資に充当させるとしている。

 ファーマフーズ<2929>=ストップ高。
同社はきょう、ニワトリ抗体作製技術による「高病原性鳥インフルエンザの診断・防除法の開発」プロジェクトが農業・食品産業技術総合研究機構の革新的技術創造促進事業に採択されたと発表。診断キットの開発促進などが期待されているようだ。このプロジェクトは、農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所との共同研究。同社と動物衛生研究所は、H5亜型鳥インフルエンザウイルスに対して特異的かつ網羅的に反応する抗体の作製技術を確立し、今年に特許出願を完了している。

 東宝<9602>=反発。
同社は7日の取引終了後、15年2月期業績予想を修正。通期連結営業収入で従来予想の1870億円から1970億円(前期比0.3%減)へ、営業利益で235億円から286億円(同0.6%増)へ上方修正し、これを評価する動き。主力の映画事業で「テルマエ・ロマエ2」に続き、夏休み映画ナンバー1の大ヒットとなった「STAND BY ME ドラえもん」や「思い出のマーニー」、「GODZILLA」などが好調に推移。これに加えて不動産賃貸事業や道路事業なども堅調で業績を押し上げている。

 東洋合成工業<4970>=ストップ高。
8月19日につけた年初来高値457円を上回っている。同社は7日、3D細胞培養システム「Cell-able」が世界最大の検査受託機関Eurofins Panlabsに採用されたと発表。これが材料視されているようだ。また、DILI(薬物性肝障害)予測試験用3Dヒト肝細胞培養プレート「Cell-able for DILI with PXB-cells」を研究用途向けに提供を開始することも公表。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想