米の円安容認は、日本の存在感低下か

著者:冨田康夫
投稿:2014/10/05 18:09

米国における日本製品の輸入比率の低下も一因

3日の東京株式市場は、後場中盤までは売りに押されていたが、外国為替市場で円安・ドル高が進行したことで買い戻しが入り、結局小幅高ながら高値引けとなった。日経平均株価終値は、前日比46円高の1万5708円と反発した。
 黒田東彦日銀総裁が3日午後の衆院予算委員会で、「円安の進行は日本経済全体にとってマイナスではな」との認識を改めて示したことを受け、午後2時30分ごろから、外国為替市場で円安が進行し、これに連れて株価も上昇を加速した。

 ただ、このところ「円安・ドル高進行に連動した株価上昇の感応度が、やや鈍くなるなど、急速な円安に対して市場の警戒感が強まっている」(市場関係者)という見方が浮上している。
 その背景には、実際に円安が主力輸出企業にどれだけのメリットをもたらして、それが国民にどの程度還元されるかへの疑問ともいえる。いまのところ、かつてのような円安・ドル高を攻撃する米国からの圧力は表面化していない。
 米財務省は「強いドルは国益に適う」というのが一貫した表向きの姿勢であるのに加え、貿易赤字国となった日本に対して、円安に対して正面切ってクレームをぶつけるのが難しいことも確か。むしろ、円安維持で日本経済が再生するなら、その方がメリットもあるとの理論も成り立つ。
 ただ、実際には、米国の輸入額全体に占める日本製品の比率は、最も高かった1986年の約25%から、今や6%程度へと4分の1に低下している。もちろん現地生産が大きく増大した面もある。ただ、日本が、米国にとって円安状態を批判するにも値しない小さな存在となりつつあるという認識も持たねばならない。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想