嵐の前の静けさ?ボラティリティ低下が示唆する予兆とは?

著者:小野山功
投稿:2014/06/14 17:26

失望売りに対する備えも必要

先週末、北海道を除く全国各地で、梅雨入りが気象庁より発表されました。今年は梅雨らしい、しとしと降るタイプの雨ではなく、バケツをひっくり返したような猛烈な雨が特徴のようです。

さて、株式市場。荒れ模様の天候とは打って変わって、退屈ささえ感じるほど平穏なムードにつつまれています。

日経平均株価は5月21日(水)の1万4,000円割れを底に、10日あまりで一気に1万5,000台まで駆け上がりましたが、その後、1週間ほどは、1万5,000円を挟んだ小動きに終始しています。

日経平均株価の将来の変動率を示す指数に「日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)」というものがあります。6月11日(火)、日経平均VIは一時18.69を付け、およそ1年5カ月ぶりに水準まで低下しました。

これは、平静な相場が今後も続くと考えている投資家が多いことを示しています。

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による国内株式の運用比率見直しや、6月下旬に発表される成長戦略への期待感が株価を押し上げましたが、内容が発表される前に買いも売りも入れづらいというのが、ボラティリティー低下の背景のようです。

このように、相場の手詰まり感が強い時に、ボラティリティーは低下しますが、膠着しているのは、なにも国内の株式市場だけではありません。

10日の通貨オプション市場で、ドル/円の1カ月物のインプライドボラティリティ(将来の予想変動率)が、5.25と過去最低を記録しました。為替も、ここ最近は1ドル=102円近辺で動いていません。

先週末、5月の米雇用統計を波乱なく通過し、米国の利上げ時期が早まったわけではないという安心感から、為替市場も平穏ムードです。

また、米国の株式市場も、VIX指数(予想変動率)が初めて11を割り込むなど小動きに終始しています。

このようなボラティリティーの低下は、市場が強気に傾いていることを示しています。近い将来、相場が急落する可能性が低いとみている人が優勢のためです。

市場が落ち着きを取り戻し、居心地の良い1万5,000円台で推移しているのは良いことですが、居心地が良すぎて、無防備になってしまってはかえって危険です。

昨年を思い出してみましょう。去年の6月5日、安倍首相がアベノミクスの本丸である成長戦略の講演を行いました。国内外の市場関係者が講演を固唾をのんで見守りましたが、市場はどう反応したか。「こんなもんか・・・。」失望感から日経平均株価が500円強急落すると事態に見舞われました。

昨年の苦い記憶があるため、今回は二の舞にならないように、市場(株価)を意識した内容が出てくるとみられますが、市場が楽観的に傾いている分、失望売りに対する備えも必要かもしれません。

信用取引をご利用でしたら、リスクヘッジとして、一部売りポジション(空売り)を持っておくことは備えとして有効です。

現物のみの方も、いまは相場が下落した際に基準価格が上昇する便利な金融商品があります。日経平均株価と逆相関する日経平均ベアETF〈1580〉は株と同じように市場で売買することができます。相場下落に備えた保険として。ポートフォリオの一部に組み入れておくと安心だと思います。

小野山 功
小野山功
株式会社SQIジャパン 金融コンサルタント
配信元: 達人の予想