低位材料株が躍動!

著者:冨田康夫
投稿:2014/06/05 10:13

100~300円台の銘柄に物色資金流入

4日の東京株式市場は前日の米株安などを受けて利益確定売り圧力が強まったが、一方で為替の円安進行を拠りどころに押し目買いも厚く、日経平均株価は前日終値近辺で強弱拮抗する展開となった。個別には値動きの速いLINE関連やゲーム関連株の上昇が際立っているが、返す刀で低位材料株を物色する動きも顕在化している。投機性の強い個人投資家資金を巻き込み、新たな物色の流れを形成しつつある。

 低位株への物色ニーズが旺盛だ。その先陣を切って存在感を際立たせるのが、日本カーバイド工業<4064>である。同社株は、昨年6月から7月にかけ特定資金の介在思惑を底流に794円の高値に駆け上がった。1日に2000万株を超える高水準の商いと合わせ、強烈な上昇パフォーマンスはまだ記憶に新しいが、その後、大量の信用買い残を抱え調整、「下落過程の厳しさのほうが身に染みた」(中堅証券営業体)というマーケット関係者も多い。

 しかし、ここにきて切り返し波動が鮮明、目先戻り相場の要衝となっている3月11日高値282円払拭を目前にとらえており、崩落前の因縁玉を迎えに行く動きに注目が高まっている。

 そしてこれに歩調を合わせるように低位株の一群がうごめき出した。

今の東証1部の低位株の動意には伏線がある。「マザーズやジャスダック市場のゲーム関連やLINE関連を中心としたモメンタム株の急騰で投機色を帯びた個人投資家資金が、息を吹き返していることが大きい」(市場関係者)という。

 3日時点で東証マザーズ指数は指数算出以来初の11連騰を記録、この間に同指数の上昇率は30%を超えた。この新興市場人気が、東証1部の同業銘柄に波及、エイチーム<3662>などのLINE関連株の集中物色につながった。

 一方、出来高流動性を伴い、足もと売り物が枯れている低位株にも新たなターゲットとして視線が向くのは自然な流れといえる。東証1部で値動きの大きさを求めるのであれば、人気時の瞬発力の高さと値ごろ感で低位株に勝るものはない。

 にわかに動意含みの展開となっているのがフルキャストホールディングス<4848>だ。前日、寄り後に入った大口買いが号砲となって人気に火がつき、後場に入り商いを急増させ大引けは38円高の372円と11%を超える上昇をみせた。景況感改善で企業の人材ニーズが高まり、アルバイト需要が拡大するというシナリオはあるものの、「明らかに買い仕掛けの利いた値運び」(中堅投資顧問)との見方が強い。

さらに、スパークス・グループ<8739>にも物色の矛先が向いている。同社株は5月12日に168円まで売り込まれ年初来安値を更新したが、そこからの切り返しが鮮烈だ。前3月期は最終損益が16億3700万円の黒字転換を果たしており業績は改善傾向、今期見通しについて会社側は開示していないものの、市場コンセンサスでは増益が支配的である。

 目先上昇一服場面にあるが明豊エンタープライズ<8927>も面白い存在。マンション分譲・賃貸を主力とする企業だが、事業再生ADRで再建途上。株価は底値を這う動きにあったが、動意鮮明で13週・26週移動平均線を一気に上回る強い足をみせている。

 このほか、昨年特定筋の介入が取り沙汰されたが伸びきれず“仕掛かり品”となっているサカイオーベックス<3408>や、新生銀行系の信販大手でテクニカル的にも底入れから5日・25日移動平均線がゴールデンクロス前夜となっているアプラスフィナンシャル<8589>などをマークする動きもある。

 オールドカンパニーでは専門商社への業態転換で14年3月期に15年ぶり復配を果たした兼松<8020>や、ATMでトップシェアを誇り、中国でのATM需要取り込みが期待されているOKI<6703>などが意外性を内包している。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想