『不動産株の反転』は相場転換のサイン?

著者:小野山功
投稿:2014/05/16 10:11

ファンダメンタルズは極めて良好

米株式市場では13日、S&P500種株価指数が一時 1900の大台に乗せ、史上最高値を連日で更新。欧州でもおよそ6年ぶりの高値水準を付けるなど、欧米では株高の様相を呈しています。

一方、日本株はどうでしょう。今年に入って、日経平均株価が上昇した月は“ゼロ”と低迷が続いています。戦後の株式市場で、4ヶ月続けて株価が下落したのは、1990年と92年のわずか2回しかないということです。そして、5月も下落が続くようであれば、これは史上初。今月いよいよ、不名誉な記録更新となってしまうのでしょうか?

今週で、3月期決算企業の決算発表が出そろいます。これまでに決算を発表した企業は、前期(14年3月期)の着地は好調だったものの、今期(15年3月期)の見通しを保守的に出す企業が多く、発表後に売られるケースが目立っています。

ただ、強気の見通しが好感された業種があります。13日(火)、14日(水)と業種別値上がり率でトップとなった不動産です。決算発表を受けて、不動産株の見方が変わりつつあるのではないかと感じています。

消費増税前の駆け込み需要の反動で、今年は新築マンションの販売が落ち込むとの予想などから、不動産株は年初から軟調な推移を強いられてきました。

一方で、12日に発表された三井不動産〈8801〉の決算発表で、15年3月期の純利益が前期比17%増の900億円になりそうだと発表。7年ぶりに最高益を更新する見通しを示したことで、見直し買いが入り、14日に4.4%高と急反発しました。

決算発表への警戒感があった不動産大手5社のうち、ふたを開けてみれば、増益見通しを発表した企業が3社と半数以上で、買い安心感が広がりました。

大手不動産が強気の見通しを発表する背景には、事業環境の好転があります。

オフィス仲介の三鬼商事がまとめた4月末時点の東京都心5区のオフィス空室率は、6.64%(-0.06)と、2009年3月以来、およそ5年ぶりの低水準を記録しています。改善は10カ月連続で、景気回復によるオフィスの拡張などで、需要は改善傾向にあるといえます。

また、オフィス平均賃料(都心5区)は一坪あたり1万6455円と、前月より0.80%上昇。足元のファンダメンタルズは極めて良好です。

また来週、21日(水)に日銀の金融政策決定会合が開かれる予定です。不動産業は借入金が巨額ですので、金利の影響を受けやすく、追加緩和を期待した買いが入ることもありますが、今回はそういった思惑ではなく、実需の買いが入っているという印象を受けています。

昨年の「アベノミクス相場」を牽引したのは、不動産株です。金融緩和という援助を受けずに、不動産株の上昇が21日以降も続くようであれば、相場の本格反転を期待しても良いのではないではないかと、期待を込めて・・・。

小野山 功

※掲載されております情報には、一部、推測の域を出ない情報も含まれます。また、情報の正確性について一切の保証は致し兼ねますので、ご注意下さいませ。
小野山功
株式会社SQIジャパン 金融コンサルタント
配信元: 達人の予想