【QAあり】第一稀元素、EV・半導体など「戦略分野」に資源集中 ジルコニウムという稀な元素とともに、「100年企業」へ

投稿:2024/12/25 11:00

DAIICHI KIGENSO KAGAKU

國部洋氏(以下、國部):みなさま、こんにちは。第一稀元素化学工業株式会社代表取締役社長執行役員の國部です。本日は当社の統合報告書説明会にご参加いただきまして、ありがとうございます。

当社の社名は「第一稀元素化学工業」と、非常に漢字が多く長いです。そのため私たちは、当社のことを「稀元素」、もしくはローマ字の「DAIICHI KIGENSO KAGAKU」の頭文字をとって「DKK」と呼んでいます。本日はご説明の中でも「DKK」という言葉を使いますので、よろしくお願いします。

統合報告書のポイント

國部:2024年9月末に発行した統合報告書の要点についてご説明します。DKKは、今後も株主や投資家のみなさまからいただいた貴重なご意見を真摯に受け止め、統合報告書を充実させていきたいと考えています。この機会に、みなさまから忌憚なきご意見をいただけると幸いです。

今回の統合報告書の中でみなさまに知っていただきたいことは、スライドに記載の3点です。1つ目は「DKKを知る」として、当社の強みなどをお話しします。2つ目は「価値創造ストーリー」で、当社がどのように価値を創造していくのかについてお話しします。3つ目は「ステークホルダーエンゲージメント」で、ステークホルダーのみなさまと、どのような関係を作っていくのかについてお話しします。

1. DKKを知る〈ジルコニウムとは〉

國部:DKKはどのような会社なのか、強みは何かについてお話しするには、この言葉をまずご説明する必要があります。それは「ジルコニウム」という言葉です。なぜなら、DKKはジルコニウムのトップメーカーであるからです。

私はあまり覚えていないのですが、理科の授業でジルコニウムについて習った方もいるかもしれません。ジルコニウムは、原子番号40番の元素です。

1. DKKを知る〈ジルコニウムとは〉

國部:みなさまも「水兵リーベ」という語呂合わせの中で20番までは言えると思いますが、ジルコニウムは、スライド5段目の黄色い部分である40番目に位置します。そのため、あまり表舞台には出ない元素ではありますが、私たちの生活に密接に関係しています。

1. DKKを知る〈ジルコニウムとは〉

國部:ジルコニウムがどのようなところで使われているかをご説明します。パソコンやスマートフォンには多くの電子部品が使われていますが、その電子部品の中において、ジルコニウムは「添加剤」として使われています。

また自動車においては、排気ガスを浄化するためにマフラーというものが付いており、そのマフラーの中にジルコニウムが多く使われています。この分野におけるDKKのシェアは、なんと世界で40パーセントを占めています。

電気自動車にも使われています。電気自動車の核となる二次電池の材料として、ジルコニウムはなくてはならない機能を果たしており、安全に繰り返し充電できる機能に貢献しています。その他にも、エアバッグのセンサーやブレーキの材料など、ジルコニウムは非常に多くの自動車部品に使われています。

さらには歯科材料として、歯医者で入れてもらう義歯や詰め物の材料にもジルコニウムは使われています。

スライドにはありませんが、家庭用品としてはセラミックスのキッチンナイフが挙げられます。ナイフの刃の部分がジルコニウムになります。使用例を挙げればきりがないほど、ジルコニウムはみなさまにとって身近な元素なのです。

なぜこれほど多彩な分野でジルコニウムが使われているかというと、ジルコニウムがたくさんの優れた特性を出す元素だからです。

1. DKKを知る〈ジルコニウムとは〉

國部:ジルコニウムは、混ぜ方や化学反応のさせ方、焼き方やつぶし方などの作り方を変えることで、実にさまざまな特性を発揮します。

スライド左側の「機械特性」とは、大変硬く、しかも釣竿のようにしなる特性を出します。その右隣の「生体適合性」にはハートマークが付いているように、人体に無害であるという特性です。一番右側の「耐熱性」と「耐薬品性」は、非常に熱に強く、酸やアルカリなどの薬品にも強いという特性を出します。

スライドには他の特性も記載していますが、同じ元素でここまでさまざまな特性を発揮する元素を、私はあまり知りません。ジルコニウムに出会えたことを非常にうれしく思っていますし、これからどのような新しい可能性を見せてくれるのかを考えるだけでわくわくします。ジルコニウムは稀で、魅力的で、夢のある元素だと思っています。

1. DKKを知る〈 「価値あるもの」 を生み出す開発力〉

國部:スライドには当社製品の写真を掲載しています。本日は実物もお持ちしましたが、写真のとおり、多くの製品は粉末状になっています。この粉末をお客さまのほうで焼き固めたり、他の素材と混ぜたりして、それぞれの会社の製品としてお使いいただいています。

つまり、DKKは素材を提供するメーカーだということです。当社の製品は形を変えてしまうため、みなさまが直接目にすることはほとんどないと思います。しかし、身近なところで当社製品は活躍しているとご理解いただけるとありがたいです。

1. DKKを知る〈 「価値あるもの」 を生み出す開発力〉

國部:スライドには、DKKが提供している価値を3つ表しています。DKKの強みは何といっても、これらの価値あるものを生み出す開発力です。価値とは、単にスペックが高いということだけではありません。それだけではお客さまに選び続けられない時代だと思っています。

私は、3つの価値を高いレベルで兼ね備えていることが重要であると考えており、それが「機能価値」「環境価値」「社会価値」です。

1. DKKを知る〈 「価値あるもの」 を生み出す開発力〉

國部:機能価値についてご説明します。その名のとおり、素材そのものの機能や性能面の価値です。とても硬いことを意味する「高強度」や釣竿のようにしなる「高靭性」など、ジルコニウムの特性を活かした優れた価値を提供しています。

1. DKKを知る〈 「価値あるもの」 を生み出す開発力〉

國部:環境価値とは、環境面における付加価値のことです。DKKの製品には、焼き固める際の温度を従来に比べて低くすることができるものがあります。これは、お客さまが部品などを製造する際のCO2排出量の低減につながります。

1. DKKを知る〈 「価値あるもの」 を生み出す開発力〉

國部:社会価値とは、製品スペックには直接関係しない調達方法などの事業活動や、当社製品が社会にとって良いものかを示します。資源を利用する企業として、天然資源の枯渇を防止し採掘に関わる環境や人権を守る責任があることは、言うまでもありません。

それは当然として、他の例を1つ挙げると、従来ジルコニウム系のセラミックス用材料を作る際は、レアアースなどの希少な物質も一緒に使っていました。今でもまったく使っていないわけではありませんが、レアアースは中国など調達できる国が限られています。

原料を特定の国に依存していては、安定したもの作りができません。そこで当社は、レアアースを使わずに、日本でもたくさん取れるカルシウムに原料を置き換える技術を開発しました。昨今はこの「レアアースフリー」という価値も、お客さまから非常に注目されている「価値」であると考えています。

1. DKKを知る〈バリューチェーン〉

國部:スライドには、ジルコニウムの原料からお客さまへ製品をお届けするまでのバリューチェーンを表しています。このバリューチェーン自体も、自信を持ってお伝えしたいDKKの強みの1つです。

スライド左側の写真は、ジルコンサンドと呼ばれる鉱石です。当社はこちらをベトナムで調達し、中間原料の状態にまで加工します。本日は2つとも実物を持ってきていますが、どちらも粉のため違いがあまりわからないかもしれません。

その後、中間原料を日本に運んで製品化します。スライドにも記載のとおり、日本では研究開発も行っています。本日は日本でできた製品を2つだけお持ちしていますが、微妙に色が違います。この製品を、当社の物流子会社や販売子会社を通じて世界のお客さまにお届けしています。

このように当社は、原料調達から製品をお客さまへお届けするところまでをグループで完結できています。ジルコニウムに関して一貫した対応ができるメーカーは、世界には当社以外にありません。これこそが、DKKが誇る「価値ある製品」を生み出すためのバリューチェーンであると考えています。

DKKは、このようなことができる世界唯一の企業だとご認識いただければと思います。

荒井沙織氏(以下、荒井):製品は全部粉状なのでしょうか?

國部:本日お持ちしたのは粉ですが、液体の製品もあります。ただしメインは粉ですので、本日はそちらをお持ちしました。

世界の主な競合ジルコニウム化合物メーカーとの比較

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社は原料調達から製品化まで行っているとのことですが、ライバル企業は日本や世界にあるのでしょうか?

國部:ジルコニウムはいろいろな用途や分野がありますが、その分野ごとのライバル企業は日本にも世界にも存在します。スライドの表のうち一番下の行が当社になりますが、例えば海外のA社は幅広く行っているものの、規模はそれほど大きくありません。

それ以外のB社、C社、D社、E社は世界的に有名でかなり大きなメーカーの1部門です。そのような意味で見ても、当社は広い分野でジルコニウム製品を供給していると言えます。

坂本:非常にジルコニウムに特化された会社だということですね。

國部:おっしゃるとおりです。

1. DKKを知る〈国内拠点〉

國部:スライドは国内の拠点を表しています。本社と研究開発センター、物流子会社の本社は大阪にあり、営業部門は本社以外ですと東京にも営業所があります。

ここからがお話ししたい点です。当社は島根県と福井県に量産工場を持っており、これらの工場は高度に自動化された生産設備を有しています。それにより、同じ製造ラインを使って、多くの製品を作り分けることができるのです。これは当社が持つ本当に大きな強みです。

この強みについて詳しくご説明します。2つの量産工場では、自動車の排ガス浄化触媒用の製品と、電動車に使われる二次電池用の製品を同じラインで作ることができます。今は一時的に電動車の伸びが落ちていますが、長い目で見ると、内燃機関であるガソリン車のほうが落ちていくと思います。

つまり、内燃機関が減少して触媒需要が減少したとしても、そのラインを使用して増加する電動車に使われる二次電池用の製品を生産できるということです。個別用途向けの専用ラインを持っていると、それぞれの分野の需要変動に稼働率が大きく左右されますが、当社はその問題を回避できるという大きな強みを持っています。

さらに、この特徴は当社のリスク対策にも効果を発揮します。万が一、自然災害などにより1つの工場でもの作りができなくなったとしても、他の工場でカバーできます。安定的な製品供給はメーカーにとって非常に重要ですが、それが当社にはすでに備わっています。いわゆる「BCP」、事業継続性の面からも信頼いただける企業であると自負しています。

ここまで、DKKのご紹介をしてきました。ジルコニウムの魅力や無限の可能性、DKKの価値を生み出す開発力やもの作り面での強みについて、少しでもご理解いただけたらありがたいです。

2.価値創造ストーリー〈価値創造とプロセス図〉

國部:これまでにご説明してきたDKKの強みを活かし、どのように価値を生み出していくかというストーリーについてご説明します。スライドの図は「オクトパスモデル」と呼ばれるものです。特にご注目いただきたいのが、オレンジ色の枠で囲んでいる部分です。

2.価値創造ストーリー〈価値創造とプロセス図〉

國部:当社を取り巻くリスクやチャンスを踏まえ、数々の資本をどの分野に積極的に投資するかが重要になります。DKKは今後、特に社会的重要性が高まり成長が期待できる分野を「戦略分野」と定め、積極的に資源を投入します。

2.価値創造ストーリー〈価値創造とプロセス図〉

國部:戦略分野とは、スライド中央に記載の3分野です。半導体の製造工程に使われる材料や電子部品用の添加剤を指す「半導体・エレクトロニクス」、リチウムイオンバッテリーや燃料電池材料などを指す「エネルギー」、医療機器・義歯・人工骨などの生体材料を指す「ヘルスケア」となります。

2. 価値創造ストーリー 〈価値創造プロセス図〉

國部:当社は、これらの分野において社会課題の解決に貢献していきます。ジルコニウムは、より高性能な半導体の開発、より長寿命な二次電池バッテリーの開発、より人間の歯の色に近い義歯の開発などに新しい技術を提供し、価値を提供できると考えています。DKKは製品の供給を通して、より快適で豊かな社会作りに貢献していきます。

なお、こちらのオクトパスモデルは要約であり、全体像は統合報告書に記載しています。併せてご覧いただければと思います。

2. 価値創造ストーリー 〈ベトナム事業〉

國部:価値創造ストーリーを語る上で欠かせない、当社のベトナム事業をご紹介します。当社では、中間原料の安定調達を目的として、2012年にベトナムで子会社を設立しました。

「中間原料の自社工場」とスライドに記載していますが、従来は中間原料の調達を中国一国に依存していました。世界中のジルコニウムメーカーが同じ状況だということを踏まえると、これが大きなリスクであることは容易に想像できるのではないかと思います。

そこで、当社は自社工場をベトナムに設立し、自社での中間原料の製造に着手しました。中国外でジルコニウムの中間原料を量産しているのは、世界で当社だけです。

2. 価値創造ストーリー 〈ベトナム事業〉

國部:当社は、ベトナムで産出される原鉱石を用いて中間原料を生産しています。今までは採掘された原鉱石がそのままの形で輸出されていましたが、現在はベトナム国内で中間原料に加工しています。

これは付加価値を高めていることになり、ベトナムにとっても重要な社会価値を生み出していると考えています。

2. 価値創造ストーリー 〈ベトナム事業〉

國部:製造に使用する熱は、籾殻を燃料とするバイオマスボイラーから供給しています。

2. 価値創造ストーリー 〈ベトナム事業〉

國部:スライドに「原料・薬品のリサイクル」と記載のとおり、できるだけ環境負荷が少ない工程や設備の導入によって環境価値の創出にも貢献しています。ベトナム工場は、当社のバリューチェーンにおいて重要な部分を構成する拠点であり、価値を創造するにあたり非常に大きな意味を持っていると考えています。

ジルコニウム原鉱石の産出国

坂本:なぜベトナムで事業を行っているのかについて教えてください。

國部:当社が中間原料の製造工場を作るにあたっては、先ほどご説明した原鉱石が採れるところがよいと考え、いろいろな候補地が出ました。スライドの地図上にマークがついているところで主に産出されており、オーストラリアやアメリカの他、アフリカ各国でも産出されています。

調査、検討をした結果、立地やコスト、オペレーションのしやすさなどを総合的に勘案し、ベトナムで事業を行うのがよいだろうということでベトナムを選択しました。

坂本:御社はベトナムで原料を調達されていると思いますが、御社で製品化されるジルコニウムのうち、ベトナムでの調達割合はどのくらいでしょうか?

國部:当社の計画としては、来年の半ば頃までに、半分をベトナムの子会社から調達できる体制にします。残り半分は中国からです。そのようにする理由は、やはり一国に寄せることがリスクであると考えているためです。

坂本:コストの問題だけではなく「調達を分散する」という点も大事にされているのですね。

國部:おっしゃるとおりです。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:ステークホルダーエンゲージメントについてご説明します。DKKは、株主や投資家をはじめとするステークホルダーのみなさまとの対話を大切にしており、みなさまとともに企業価値の向上に取り組んでいます。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:それぞれのステークホルダーごとの関わりについてご説明します。まずは株主・投資家のみなさまとの対話です。

昨今、特に投資家のみなさまからいただくことが多いのは、株価に関する心配のお言葉です。当社はジルコニウムの世界トップメーカーであり、業界内でも非常に恵まれたポジションを得ているにもかかわらず、その優位性を現時点で株価に反映させることができていません。

これは、当社の状況を投資家のみなさまに正しく示せていないことも1つの原因だと考えています。そのため今後は、投資家のみなさまに直接お会いする機会を今まで以上に増やし、当社の成長戦略への理解を深めていただくとともに、不安の解消に努めていきたいと思っています。

その場でいただいたご意見は経営者として真摯に受け止め、経営に活かしていきます。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:スライドには、これまでの対話で得た貴重なご意見を踏まえ、経営に取り入れた事例を3点記載しています。

まずは、事業セグメントの見直しです。こちらでは、成長の原資を稼ぐ自動車排ガス浄化触媒分野と今後の成長を牽引する戦略分野を区別し、成長の様子を理解しやすくしました。その他には、CO2排出量削減目標の公表や、取締役会の多様性確保などがあります。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:顧客との対話についてです。DKKでは毎年、主要な販売先を対象に満足度アンケートを実施し、昨年度は27社にご協力いただきました。そこでいただいたご要望には真摯にお答えしていますが、こうしたことも、当社を信頼して長くお取引いただくために重要なことであると考えています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:これまでのアンケートの中で特にご要望が多かったのは、供給リードタイムの短縮です。

当社は海外との取引が多いため、国内で製造した製品を輸出し、お手元に届けるまでに時間がかかります。そこで近年は、アメリカ、中国、タイに販売子会社を設立して一定の在庫を現地に確保することで、可能な限り短い納期でお客さまへ製品を届ける試みを行っています。

昨今は物流事情の混乱が非常に多くなっています。そのような意味で、サービス力の向上につながっているのではないかと考えています。

続いてご要望が多かったのが、地政学リスクへの対応です。当社においては、原料の調達先を特定の国、特に中国に依存するリスクを指しています。こちらは先ほどご紹介したとおり、ベトナム事業によってジルコニウム原料の調達ルートを複数化しており、リスクの低減が図れています。

当社のこれらの取り組みについては、顧客から高く評価いただいています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:取引先との対話についてです。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:当社は、サプライチェーンの取引先や協力会社のみなさまとの連携・共存共栄のため、「パートナーシップ構築」を宣言しています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:具体的な取り組みとしては、安心して働けるように、化学物質を取り扱う方々が受ける特殊検診などの安全衛生に関わる費用をサポートしています。

カーボンニュートラルに関しては、取引先のCO2排出量の算定サポートやCO2削減のためのアイデア共有などに取り組んでいます。

取引先と連携し、使用済みの消耗品や資源のリサイクルなども行っています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:従業員との対話についてです。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:当社には「世に価値あるものを供給し続けるには、価値ある人生を送るものの手によらねばならぬ。価値ある人生を送るためには、その大半を過ごす職場を価値あるものに創り上げていかねばなるまい」という経営理念があります。

「価値あるもの」とは当社の製品を指し、それらを供給し続けるためには、従業員が自らの成長を実感しながら生き生きと働き、価値ある人生を送る必要があります。そのためには、職場を価値あるものにしていかなければいけないという考えです。

人を大切にすることが創業当時からのDKKの考え方であり、私自身も常に意識して経営を行っています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:職場作りにおける具体的な取り組みの1つが「DE&Iの実現」です。これはダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(受容)の頭文字を取った言葉です。さまざまな考え方や特性を持った多様な従業員を受け入れ、公平な機会提供のもとで、互いに尊重しながら成長できる環境作りを目指すという考え方になります。

DKKでは「DE&Iの実現」への第一歩として、女性活躍の推進に焦点を当てた取り組みを行っています。スライドには記載していませんが、実例をご紹介します。

当社には約50名の女性正社員がいますが、昨年度はその全員と女性社外取締役が対話を行いました。その結果、「女性のロールモデルが当社にいない」「制度や環境を良くしていくためには、いろいろな人の意見を取り入れなければいけない」などの意見があり、女性社外取締役経由で情報をいただきました。

これらは非常に当たり前のことですが、まだまだできていなかったと感じており、そのような活動も当社にとって非常に大事だと考えています。従業員がDKKを信頼し、より愛着や働きがいを感じてもらえるように、これからも価値ある職場作りを続けていきたいと考えています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:地球環境との対話についてです。DKKは、地域温暖化や環境汚染などの地球環境を取り巻くさまざまな問題を深く受け止め、事業活動から生じる環境負荷の低減に積極的に取り組んでいます。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:実際の取り組みを2つご紹介します。

1つ目は、製造工程で使用する化学物質の処理に関する取り組みです。当社の製造工程では最初に大量の水を使いますが、それに加えて、原料として例えばアンモニアなどの薬品を使います。しかし、アンモニアが溶け込んだままの排水をそのまま捨てることはできません。

そのため、スライドの写真のような「アンモニアストリッピング装置」というものでアンモニアを除去し、安全できれいな水を事業所外に放流しています。除去したアンモニアは回収して再び生産に使用するため、資源のリサイクルにもつながっています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:2つ目は、燃料電池による事業所の電力供給です。燃料電池とは、水素と酸素の化学反応で発生した電気を取り出す発電システムで、発電に伴う排出物は水蒸気だけと非常にクリーンです。

スライドの写真は、福井事業所に設置している燃料電池です。ここで取り出した電力は、通常時は事業所の電力として使いますが、非常時には環境・安全関連設備に優先的に電力供給することにしています。

なお、この燃料電池の中核部品には当社の材料が使われています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:地域社会との対話についてです。スライドに記載のとおり、連携と協調を重視しています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:具体的な取り組みを2つご紹介します。

1つ目は、地域社会との関わりです。スライド左側の写真は、当社のマスコットキャラクターがプリントされたシャツを着て、事業所の周りを清掃している様子です。また、右側の写真のとおり、小・中学校からの工場見学を積極的に受け入れています。

地域社会との関係を抜きにして、事業を存続することはできません。小さなことではありますが、今後もこのような取り組みを続けていきたいと思っています。

3. ステークホルダーエンゲージメント

國部:2つ目は、地域活性化への支援です。DKKは、事業所を置く島根県江津市に対して、企業版ふるさと納税を活用した寄付を行っています。スライド左側の写真は、江津市の市長から寄付への感謝状をいただいた時のものです。寄付金は、江津市のプロモーション活動や子育て支援に使われています。

つい先日発表されましたが、江津市の取り組みが企業版ふるさと納税の好事例であるとして、内閣府から表彰を受けました。当社が江津市に事業所を設立して、まもなく30年になります。長くお世話になった地域に少しでも恩返しができればと考えています。

福井の事業所においては、北陸三大祭りの1つである三国祭や北陸最大の三国花火大会への協賛を行っています。スライド右側の写真は、花火大会のものです。

DKK 統合報告書

國部:統合報告書の内容をもとに、当社の強みやどのような考えで事業を運営しているかについてお伝えしてきましたが、短い時間のためなかなか全体をご説明できていません。

本日のお話に興味を持っていただけましたら、ぜひ統合報告書をご覧いただければ幸いです。今後も、DKKは報告書の内容の充実に努めていきたいと考えています。

VISION

國部:最後に、当社のビジョンについてお話しします。あらためてお伝えしますが、当社はジルコニウムという稀な元素の世界トップメーカーです。当社の製品は、世界中のさまざまな分野で形を変えて使われています。

加えて、今後は地球環境保全や次世代エネルギーなど、より社会的重要度が高まる分野での活用が期待されています。こうした分野への製品供給を通して、当社はこれからも社会課題の解決に貢献していきます。そして永続的に成長を続け、世界中に必要とされる企業グループであり続けたいです。

『稀な元素とともに、「100年企業」へ』というビジョンは、そうした当社の意思の表れです。ぜひ今後も、当社の活躍にご期待いただけますと幸いです。

質疑応答:株主還元などの財務戦略について

荒井:「株主還元などを含めた財務戦略についてお聞きしたいです」というご質問です。

國部:本来ならば、この統合報告書に財務戦略や株主投資家への配当方針を盛り込むべきでした。しかし、財務戦略や株主投資家のみなさまへの配当方針を含め、もう少し全ステークホルダー向けに方針を丁寧に練り上げたいと考え、次回の統合報告書に反映する予定としました。そのため、今回の1回目の報告書にはこれらを含めていません。

現時点でお示しできる内容は、株主還元の推移についてです。当社は配当性向30パーセントを目安としていますが、去年は比較的高めの数値になりました。この配当性向はあくまで目安であり、安定配当を重視しています。

DOEの推移を見ると、一定の水準である状況をご理解いただけるかと思います。この配当方針や財務戦略については、今後あらためて取りまとめ、次の統合報告書に反映していきたいと考えています。

財務戦略として、現在は当社の貸借対照表が重くなっていることや、利益に対する資本状況が課題になっています。これらの課題に対し、在庫の圧縮や有形固定資産以外の無形資産から収益を上げる取り組みを強化していきます。そのようなことも、プレスリリースや統合報告書に織り込んでいきたいと考えています。

質疑応答:価値創造に向けた具体的な取り組みについて

荒井:「価値創造にあたり、今期から取り組まれている具体的な事例があればお聞きしたいです」というご質問です。

國部:現在、当社は新規事業の創出を強化しています。先ほど「価値創造ストーリー」の中で「開発力が非常に重要である」とお伝えしましたが、それらの開発とは異なる取り組みなども行うことで価値を創造しようとしています。

このスライドは新規事業全体を示していますが、例えば10月には、原子力開発機構発のスタートアップ企業である株式会社エマルションフローテクノロジーズと提携しました。彼らの持っている溶媒を抽出・分離する技術と当社の鉱石分解で得たノウハウを合わせて、今後の資源リサイクルを加速できないかということで、共同研究のMOUを結んでいます。

その取り組みは非常に展開が豊富で、可能性が大きいと考えています。スライドの図でご説明すると、当社は今まで灰色の製品開発・技術開発を中心に「1次製品」と呼ばれるお客さまに使っていただくものを供給してきました。

先ほどご説明した無形資産の高収益化にもつながりますが、当社が持っている原料調達やプラントの運営ノウハウなどを価値にすると考えた時に、エマルションフローテクノロジーズの優れた分離技術と組み合わせることで、新たな価値を生み出せると考えています。

例えば、当社が前後の工程を設計し、設備の販売や据え付け、オペレーションまでを一貫して手掛けられれば、社会課題の解決にも貢献できるのではないかと考えています。現在は、鋭意協議を進めているところです。

質疑応答:ジルコニウムにおけるDKKの優位性について

坂本:「ジルコニウムに付加価値をつけていろいろなものを販売しているとのことですが、どのあたりが他社との差別化になりますか? 一貫した体制を想定しているというお話もありましたが、取引先とのつながりなどを含めて御社の優位性を教えください」というご質問です。

國部:当社はジルコニウムに69年間取り組んできたため、そこで得た非常に豊富なノウハウがあります。粉末制御技術に強みがあるため、お客さまのニーズに合ったものをスピーディに対応できます。

さらに、そこで築いたお客さまとの強いつながりがあります。それを活かして次の開発も非常にスムーズに行うことができ、自動車排ガス浄化触媒で関係を築いたお客さまが電池材料を手掛けられる場合、トップが同じ方の場合はスムーズに製品を供給できます。

長い間いろいろな方に助けていただき成長できたことを次に活かせているという部分が、他社との違いだろうと考えています。

質疑応答:取引先の満足度と改善点について

坂本:「取引先の満足度はどのくらいなのでしょうか? 改善できる点などがあれば教えてください」というご質問です。

國部:先ほど、顧客との対話についてのご説明の中で「満足度アンケートを行っている」とお話ししましたが、やはりコスト面でのご意見をいただくことはあります。そちらについては、お客さまと一緒にできる限りのコスト削減に取り組んでいます。

それ以外では、供給リードタイムの短縮や地政学リスクへの対応について、多くのお客さまからご了解をいただいています。ただし「もっと安いとさらに良い」とは言われています。

質疑応答:ジルコニウムの提供方法について

坂本:ジルコニウムは色もさまざまですが、おそらく用途もさまざまだと思います。御社は、お客さまが使う直前までカスタマイズして供給する場合と、原料だけをそのまま渡す場合と、どちらが主流でしょうか?

國部:供給して終わりではありますが、当社としては、お客さまのところでどのように使われるかをよく理解した上で、使い勝手が良いものにしています。お客さまの使い勝手が良ければ、お客さまのコストが下がりますので、そのような改良を長く続けながら供給を行っています。

坂本:やはり、ある程度のニーズを把握して対応することでうまく回っているのですね。

荒井:現物を眺めながら、精米時の割合と同じような感じで捉えられるのではと思いましたが、いかがでしょうか?

國部:近いかもしれません。

質疑応答:株価およびROE低下対策について

荒井:「株価対策で考えていることはありますか?」というご質問です。

坂本:併せて、ROEの低下についても質問が来ています。こちらについては、資本が厚くなると収益性が下がる部分があると思います。株主還元も含めて広い質問になってしまいますが、お考えを聞かせていただけるとありがたいです。

國部:現在の株価が下がっている要因は、資本収益性が低いことです。この状況は非常に重く受け止めています。ROE低下の要因はいくつかありますが、例えば、先ほどご説明したベトナム事業は、収益性を大きく押し上げるのではなく、安定的な原料調達に向けた取り組みになります。

坂本:おそらく、今も中国から輸入する割合が多いと思います。これを続けて加工・販売するほうが、ベトナムで作るよりも利益率が高かったのではないかとも思います。製造施設に対する利益の評価は難しく、製造コストをどのように製品で按分するかという問題もありますが、原料をそのまま加工して出したほうが利益率は高かったのではないでしょうか?

國部:中国から買って加工するほうが、利益率は高かったと思います。しかし、中国のサプライヤーは、当社の分野にもどんどん進出してきています。つまり、競合からものを買うことになるため、中国の地政学的リスクとは別に、安定して事業を行う上では看過できない状態です。そのため当社としてはどうしても、半分は自分たちで加工できるようにしなければいけません。

さらに、自分で行うからには収益性を上げなければいけません。ベトナム事業をやっているからこそ、排水に含まれる有価元素を抽出したり、鉱石に近いところの取り組みができたりします。そのようにトータルの収益性を上げる取り組みをして初めて、お預かりした資本を着実にリターンに変えているとご理解いただけると思っています。

そのような取り組みが、当社にとって非常に重要なところだと思っています。ただし、それもすぐにできるものではありません。今のところは、半導体関連や二次電池など、より収益性の高いところにスピーディに新製品を投入して利益率を上げていきます。

これらの取り組みにより、配当を含めて着実かつ安定的にリターンを提示していくことを絶対に実現しなければならないと考えています。

質疑応答:配当方針と指標について

坂本:先ほどDOEと配当性向について触れられました。お話しできる範囲でかまわないのですが、将来のイメージとして、今後どちらを基準に配当を出していくお考えでしょうか?

國部:安定配当という考えが強いことは理解していただけたと思います。スライドのグラフにあるとおり、2025年3月期の1株当たり中間配当は12円を実施しました。期末配当は14円を予定しており、年間26円となり2024年3月期と同水準のため、配当性向はまだかなり高い水準だと考えています。安定を重視して、よりわかりやすい指標を早めに出したいと思います。

坂本:DOEになるのではないかとイメージしました。

國部:合わせ技なども検討しています。

坂本:もし自社株買いなどをお考えであれば、その時にイメージなどを教えていただければと思います。

國部氏からのご挨拶

國部:本日のご説明を通して、DKKの中身をわかっていただけたらうれしいです。投資家のみなさまには株価が一番響くだろうと思いますので、ますますやるべきことをきっちりやって、株価が上がるように努力していきたいと思っています。

そのためには、価値ある職場を作り、従業員とともに良い会社を作ることがベースだと思っています。今後も、当社の活躍にご期待いただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。

配信元: ログミーファイナンス

関連銘柄

銘柄 株価 前日比
690.0
(10:09)
+14.0
(+2.07%)