「窓上限で達成感、買い一巡後は伸び悩む展開か」

著者:黒岩泰
投稿:2012/07/30 08:37

「窓上限で達成感、買い一巡後は伸び悩む展開か」

 先週末の米国株式相場は大幅高。ダウ工業株30種平均は187.73ドル高の13075.66、ナスダック総合指数は64.84ポイント高の2958.09となった。ECBや独仏首脳が金融危機打開に向けて強い口調で救済策実行を示唆したことで、リスク後退の動きが鮮明。金融株が牽引役となり、主要株価は軒並み高となった。また、シカゴ日経平均先物(円建て)は8685円。大証終値と比べて125円高の水準で取引を終了している。したがって本日の東京株式相場は、欧米株高を受けて買い先行の展開を想定。先週末に引き続き上値を試すものと思われる。

 日経平均の日足チャートでは、上方の窓(8606.23円-8662.72円)埋めが焦点となりそうだ。寄り付き時点でこの窓上限に達するため、買い一巡後、すぐに達成感が出ることになりそうだ。そして本日の寄り付きで空ける窓と、先週末に空けた下方の窓(8448.54円-8522.74円)が強烈に株価を引っ張ることになる。寄り付き直後は下落しやすい需給となり、伸び悩む形となるだろう。

 ただ、マーケットの中銀に対する緩和期待が高いのは事実である。8/1には米FOMC、8/2にはECB理事会、そして8/9には日銀金融政策決定会合の結果が発表される。市場コンセンサスではFOMCは何らかの金融緩和策、ECBも南欧諸国救済のための何らかの手立てを行う可能性が高く、日銀も“外圧”から緩和姿勢を余儀なくさせられるだろう。「世界的な金融緩和=株高」というイメージが湧きやすく、株価は上値志向を強めやすい。

 その一方で、これらの金融緩和策は“単なる延命措置”という厳しい見方もある。根っこにあるスペインやイタリアの財政収支が改善しないなか、いくら国債を買い取ったり、マーケットに資金を供給しても、“焼け石に水”というわけだ。放蕩息子に対して、いくら資金援助をしても無駄なのと一緒ということである。だから投資家はその辺を勘違いしてはならない。ECBが本格救済に乗り出さないのは、できないのではなく、したくないのである。息子がいったん破綻し、実家に戻ることを期待しているのである。家計が一緒になれば、浪費グセも“管理できる”ということである。

 日経平均は今日も強含みの動きとなりそうだ。ただ、寄り付き時点で上値の限界値に到達することで、上昇余地はそれほどないだろう。そのうち徐々に軸が下向きに傾き始め、いずれは“元の木阿弥”となる。下方に残した窓(8448.54円-8522.74円)を埋めることになり、勢い余ってさらに2つの窓(8303.35円-8306.93円、8199.67円-8238.95円)を埋めることになるだろう。そう、つまり先週末からの上昇は、下落するための上昇だったのである。走り幅跳びや走り高跳びのときに助走をするように、バックして勢いをつけているだけである。バックしたまま観客席に飛び込むアホな選手はいないということだ。

 だから、投資家は基本的には“戻り売り”の姿勢で臨まなければならない。日経平均で価格帯別出来高のヤマである8580円を上回ると需給面で若干上昇しやすくなるのは事実だが、軸が再び下向きに戻ったときには大きなリターンが期待できるのだ。助走が大きければ大きいほどその跳躍に期待がかかるというものであり、ここで売りの手を緩める必要はないのである。売り方が注意しなければならないのは、選手が本格的に観客席に向かっていったときであり、このサインを決して見逃してはならない。買い一巡後、さらに上伸するとか、変な動きが出てきたときには要注意だ。その場合は、“跳躍”を諦め、売りポジションを縮小する必要がある。勇気ある撤退も必要ということだ。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想