豪ドル
ECB(欧州中銀)は6月に、BOC(カナダ中銀)は6月と7月に、BOE(英中銀)は8月に利下げを実施しました。米FRBは9月17-18日のFOMCで利下げを行うと考えられます。
多くの中銀が利下げ方向にある中で、RBA(豪中銀)は政策金利を据え置きつつも「必要なら利上げを行う」との姿勢です。こうしたRBAと他の主要中銀(日銀を除く)との金融政策スタンスの違いは、豪ドルにとってプラスと考えられます。
今後、日銀が追加利上げを行うとしても、RBAの金融政策スタンスに変化がなければ、RBAと日銀との政策金利差はそれほど縮小しないと考えられます。豪ドル/円は底堅い展開になるかもしれません。
豪ドル/米ドルについては、米FRBの金融政策も重要です。FRBが9月のFOMCで実際に利下げを行い、さらに11月以降のFOMCで追加利下げを行う可能性を示せば、豪ドル/米ドルは上値を試す展開になる可能性があります。
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【豪ドル/NZドル】
RBAは利上げを行う可能性を示しました。一方で、RBNZ(NZ中銀)は8月の会合で利下げを実施し、今後も利下げを継続することを示唆しました(詳細は後述)。RBAとRBNZの金融政策面から見れば、豪ドル/NZドルには上昇圧力が加わりやすいと考えられます。
ただ、豪景気は減速しており、豪州の7月失業率は4.2%と、22年1月以来の高い水準となりました。RBAは政策金利を当面据え置くと考えられるものの、次の一手は利上げではなく利下げになる可能性の方が高そうです。将来的にRBAの利下げが現実味を帯びれば、豪ドル/NZドルは軟調に転じると見られます。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は8月14日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を5.50%から5.25%へと引き下げました。
RBNZが利下げに踏み切った背景には、NZのインフレ鈍化や景気の弱さがあるようです。RBNZの声明では「NZのCPI上昇率は目標である1~3%に戻りつつある」と指摘されました。そして、議事要旨では「国内の経済活動の弱まりが、より顕著かつ広範囲に及んでいる」、「RBNZの想定よりも急速にNZ経済が縮小していることをさまざまな指標が示唆しており、生産と雇用への下振れリスクが、より顕著になっている」などの認識が示されました。
四半期に一度のRBNZの金融政策報告では、政策金利は24年10-12月期に四半期平均4.92%、25年10-12月期に同3.85%になるとの見通しが示され、今後も利下げを継続することが示唆されました。
日銀は今後追加利上げを行う姿勢を示しています。RBNZと日銀の金融政策面から見れば、NZドル/円は上値が重い展開になりそうです。
NZドル/米ドルについては、米FRBも利下げを行えば、金融政策の方向性に差がないことから、それほど下落しない可能性があります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は6月・7月と2会合連続で利下げを実施し、マックレムBOC総裁は7月会合後の会見で追加利下げの可能性に言及しました。市場では、24年末までにさらに3回(1回を0.25%と仮定)の利下げが行われるとの見方が有力です。
日銀は今後追加利上げを行う姿勢を示しています。BOCと日銀の金融政策の方向性から見れば、カナダドル/円は下値を試す展開になるかもしれません。
米ドル/カナダドルについては、明確な方向感が出にくいと考えられます。米FRBとBOCはいずれも、利下げ方向と見られるからです。
原油価格(米WTI原油先物など)が大きく変動すれば、原油価格の動向も為替相場の材料になる可能性があります。原油安はカナダドルにとってマイナスです。
トルコリラ
TCMB(トルコ中銀)は8月20日の政策会合で政策金利を50.00%に据え置くことを決定。TCMBの声明では、「月次のインフレ(率)の基調的なトレンドが大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が(TCMBの)予測範囲に収束するまで、金融引き締めスタンスを維持する」、「インフレの大幅かつ持続的な悪化が見込まれる場合には、金融政策を(さらに)引き締める」との方針が改めて示されました。
TCMBの政策金利水準の高さやタカ派的な金融政策スタンスは本来、トルコリラにとってプラスと考えられます。それにもかかわらず、トルコリラは上値が重い展開になっている主な要因として、トルコの実質金利(政策金利からCPI上昇率を引いたもの)が大幅なマイナスであることが挙げられます(8/23時点でマイナス11.78%)。トルコのCPI上昇率が鈍化するなどして実質金利がプラスに転じる、少なくともマイナス幅が持続的に縮小していかなければ、トルコリラは引き続き上値が重い展開になりそうです。
23年6月に経済チームが刷新されて以降、エルドアン大統領がTCMBの金融政策について発言することは少なくなったものの、エルドアン大統領の言動に注意は必要です。エルドアン大統領が再び金融政策に干渉するようなら、トルコリラには下押し圧力が加わりそうです。
南アフリカランド
SARB(南アフリカ中銀)は23年5月に利上げして以降、今年7月まで7会合連続で政策金利を8.25%に据え置きました(8月は政策会合なし)。5月の会合時は6人の政策メンバー全員が据え置きに賛成しましたが、7月の会合では2人が0.25%利下げすることを支持しました。また、南アフリカの7月CPI(消費者物価指数)は前年比4.6%と、上昇率は6月の5.1%から鈍化し、SARBのインフレ目標(3~6%)の中間値である4.5%に接近しました。SARBは9月19日の会合で利下げしそうです。実際に利下げが行われて、クガニャゴ総裁の会見で11月以降の会合でさらに利下げする可能性が示されれば、南アフリカランド/円は軟調に推移しそうです。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は8月8日の政策会合で0.25%の利下げを行うことを決定。政策金利を11.00%から10.75%へと引き下げました。
メキシコの8月CPI(消費者物価指数)は前年比5.57%と、上昇率は7月の4.98%から加速しました。それにもかかわらずBOMが利下げに踏み切ったのは、コアCPI上昇率の鈍化を重視したようです。BOMの声明では「7月CPI上昇率が加速したのは、非コア部門(農畜産物など)が大幅に上昇したためだ」、「コアインフレ率(コアCPI上昇率)の方がインフレの傾向をより反映する」などの認識が示されました。そして、「コアインフレ率の軌道、およびコアインフレ率は引き続き鈍化するとの予測」などを踏まえ、利下げすることが適切だと判断したと説明されました。
BOMの声明は「政策金利の調整(さらなる利下げ)について議論できる可能性がある」と表明しましたBOMの追加利下げはメキシコペソにとってマイナスであるものの、利下げペースが緩やかならばBOMの政策金利の水準が主要国の中銀と比べてかなり高い状況に大きな変化はなさそうです。その場合、金融政策面からメキシコペソはサポートされやすいかもしれません。
米国とメキシコの政治情勢には注意が必要です。9月に始まるメキシコ議会で与党連合が司法制度改革などの憲法改正を推進することを市場は懸念しています。憲法改正をめぐる市場の懸念が後退すれば、メキシコペソにとってプラスになりそうです。メキシコにとって隣国であり最大の貿易相手である米国の大統領選の結果もメキシコペソの動向に影響を与えると考えられます。
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