明日の株式相場に向けて=ブラックマンデー超え、大暴落の正体
週明け5日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比4451円安の3万1458円と続急落。前週末に歴代2位の下げ幅となる2216円安で3万6000円割れまで一気に水準を切り下げたが、きょうはそれに拍車をかけた大波乱で一時は4600円を超える大暴落、終値でも1987年10月下旬に起こったブラックマンデーの下げ幅を上回り、史上最大の下げ幅を記録した。日経平均は前週末に歴代2位の下げ幅を記録したばかり。その時は下落率では大したことはないという意見もあったのだが、そこには時価総額の喪失という観点が抜けている。逆資産効果を考えればやはり大したことはあるのだ。そして、きょうの下げは下落率でも12.4%とブラックマンデーに肉薄するもので、2024年8月5日は、まさしく株式市場の長い歴史に刻まれる1日となった。
「政治の世界には上り坂と下り坂、そしてもう一つ『まさか』がある」というのは小泉純一郎元首相の2007年当時の語録。そして、証券界では翌年08年の9月にリーマン・ショックが起き、その「まさか」に遭遇することになる。問答無用のリスクアセットの叩き売りで、業界全体を激しく揺るがしたのは、まだ鮮明な負の記憶として残っている。
そして、24年8月に再びその「まさか」に直面する形となった。振り返ってリーマン・ショック時は、07年からサブプライム問題による金融システム不安が燻ぶっており、その延長線上にあった爆弾に引火(リーマン・ブラザーズの経営破綻)したもので、変な言い方をすれば暴落が起こった直後に、その背景が何であるかを誰もが瞬間的に悟っていた。
しかし、今回の暴落は、米リセッション懸念がどこからともなく急浮上したということではないし、日銀ショックとして槍玉に挙げられている植田日銀総裁のタカ派への宗旨替えも、そこまで常識を逸脱したとは言い難い部分はある。前倒し的な追加利上げは勇み足にせよ、“遅かれ早かれ”であることはマーケットも熟知していたからだ。少なくとも植田日銀総裁が蛮勇をふるったことでショック安があっても、どこかでバランスを取り戻し売り物を吸収し、結局、再浮上するパターンが繰り返されてもおかしくはなかった。
オオカミが来たと喧伝しながら売りを仕掛ける手法に、マーケットは当初は動揺していたのだが、最終的には踏み上げ相場が繰り返されたことで、いつしか高を括るようになった。ただ、心の奥底で「本当にオオカミが来ること」を恐れていたフシがある。皆が買うから買わないとパフォーマンスで引けを取るという思考プロセスが「持たざるリスク」を浮き彫りとし、その代表例が生成AI相場の申し子であるエヌビディア<NVDA>の大相場だ。しかし、7月中旬以降はどこかで逃げを打たなければいけないという思惑が大きくなり、その兆候は既にエヌビディア株の変調を通じ、全体相場にも伝播していた。これは米国株市場のみならず日本株市場や、半導体王国である台湾株市場のリスクオフにも反映されている。日本の場合は、日銀による世界から周回遅れの金融引き締めが、出会い頭のバッドタイミングとなった。円高の投機筋の仕掛けと相まって大暴落を引き起こした。
したがって、今回の暴落の正体は生成AIに対する過度な幻想の剥落ではないかと考えられる。局地的な活況が米経済の強さとして誤認された部分があったのかもしれない。生成AIの商業的ベースでの飛躍にはもう少し時間がかかるという現実を突きつけられ、先端半導体などへの投資意欲にブレーキがかかり、これが、経済減速の波動と共鳴してしまった。日本はおまけに日銀ショックとそれに付随する苛烈な円高の洗礼に見舞われ、18年ぶり高水準に積み上がった信用買い残が火薬庫となった形だ。現状は、追い証絡みの投げで相場の自律神経が機能しなくなっているが、売買代金を見る限りとりあえずセリングクライマックスとなった可能性はある。ただし、完全な底値をつけるのは今しばらくの時を要するかと思われる。まだ、今は主力株もしくは日経レバの打診買いにとどめておくところだろう。
あすのスケジュールでは、6月の家計調査、6月の毎月勤労統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に7月の輸入車販売、7月の車名別新車販売、7月の軽自動車販売などが発表される。また、債券市場では10年物国債の入札が行われる。主要企業の決算発表では、ダイキン工業<6367.T>、三菱重工業<7011.T>、ソフトバンク<9434.T>などが注目される。海外では、豪中銀の政策金利発表、6月のユーロ圏小売売上高、6月の米貿易収支、米3年物国債の入札など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
「政治の世界には上り坂と下り坂、そしてもう一つ『まさか』がある」というのは小泉純一郎元首相の2007年当時の語録。そして、証券界では翌年08年の9月にリーマン・ショックが起き、その「まさか」に遭遇することになる。問答無用のリスクアセットの叩き売りで、業界全体を激しく揺るがしたのは、まだ鮮明な負の記憶として残っている。
そして、24年8月に再びその「まさか」に直面する形となった。振り返ってリーマン・ショック時は、07年からサブプライム問題による金融システム不安が燻ぶっており、その延長線上にあった爆弾に引火(リーマン・ブラザーズの経営破綻)したもので、変な言い方をすれば暴落が起こった直後に、その背景が何であるかを誰もが瞬間的に悟っていた。
しかし、今回の暴落は、米リセッション懸念がどこからともなく急浮上したということではないし、日銀ショックとして槍玉に挙げられている植田日銀総裁のタカ派への宗旨替えも、そこまで常識を逸脱したとは言い難い部分はある。前倒し的な追加利上げは勇み足にせよ、“遅かれ早かれ”であることはマーケットも熟知していたからだ。少なくとも植田日銀総裁が蛮勇をふるったことでショック安があっても、どこかでバランスを取り戻し売り物を吸収し、結局、再浮上するパターンが繰り返されてもおかしくはなかった。
オオカミが来たと喧伝しながら売りを仕掛ける手法に、マーケットは当初は動揺していたのだが、最終的には踏み上げ相場が繰り返されたことで、いつしか高を括るようになった。ただ、心の奥底で「本当にオオカミが来ること」を恐れていたフシがある。皆が買うから買わないとパフォーマンスで引けを取るという思考プロセスが「持たざるリスク」を浮き彫りとし、その代表例が生成AI相場の申し子であるエヌビディア<NVDA>の大相場だ。しかし、7月中旬以降はどこかで逃げを打たなければいけないという思惑が大きくなり、その兆候は既にエヌビディア株の変調を通じ、全体相場にも伝播していた。これは米国株市場のみならず日本株市場や、半導体王国である台湾株市場のリスクオフにも反映されている。日本の場合は、日銀による世界から周回遅れの金融引き締めが、出会い頭のバッドタイミングとなった。円高の投機筋の仕掛けと相まって大暴落を引き起こした。
したがって、今回の暴落の正体は生成AIに対する過度な幻想の剥落ではないかと考えられる。局地的な活況が米経済の強さとして誤認された部分があったのかもしれない。生成AIの商業的ベースでの飛躍にはもう少し時間がかかるという現実を突きつけられ、先端半導体などへの投資意欲にブレーキがかかり、これが、経済減速の波動と共鳴してしまった。日本はおまけに日銀ショックとそれに付随する苛烈な円高の洗礼に見舞われ、18年ぶり高水準に積み上がった信用買い残が火薬庫となった形だ。現状は、追い証絡みの投げで相場の自律神経が機能しなくなっているが、売買代金を見る限りとりあえずセリングクライマックスとなった可能性はある。ただし、完全な底値をつけるのは今しばらくの時を要するかと思われる。まだ、今は主力株もしくは日経レバの打診買いにとどめておくところだろう。
あすのスケジュールでは、6月の家計調査、6月の毎月勤労統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に7月の輸入車販売、7月の車名別新車販売、7月の軽自動車販売などが発表される。また、債券市場では10年物国債の入札が行われる。主要企業の決算発表では、ダイキン工業<6367.T>、三菱重工業<7011.T>、ソフトバンク<9434.T>などが注目される。海外では、豪中銀の政策金利発表、6月のユーロ圏小売売上高、6月の米貿易収支、米3年物国債の入札など。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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