明日の株式相場に向けて=トランプ相場はインフレと共に
きょう(4日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比332円高の4万913円と5日続伸。今週は1989年12月以来約34年半ぶりの史上最高値更新を視野に置くTOPIXの動向にマーケットの関心が高かった。その結果は、首尾よく週初から上値指向を続けノンストップで達成した。ついでにというと語弊があるが、3月下旬にひと足先に34年ぶりの最高値更新を果たしていた日経平均株価も、TOPIXと足並みを揃え最高値街道に再突入する形となった。
7月はETFの分配金捻出のための売りが出て全体相場の上値を押さえるという見方が強かった。昨年もこのETF絡みの売り圧力が喧伝され7月上旬から中旬にかけて日経平均、TOPIXともに下値模索の展開を強いられ週足で大陰線を引いた。ところが今年は真逆の展開となっている。7月のETF分配金捻出に伴う売りは、毎年恒例ともいえる需給イベントだが、今回も7月第2週前半(来週前半)に1兆数千億円規模の売りが東京市場にのしかかるという観測があった。市場では「これ(ETF絡みの売り)を見込んで前週あたりからショートポジションを積み上げる向きが急増、結果的に売り方は強制的な買い戻しを迫られ、TOPIXの34年ぶり最高値を演出する格好となった」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。
6月は後半に入ってから前半の不調が嘘に思えるような急速な上昇トレンドを形成したが、これが7月初旬に入ってからの下げ余地を大きくするであろうという穿(うが)った見方につながった面もある。「海外ヘッジファンドの買い戻しが6月いっぱいで終了するという思惑も働いた。それもあって玄人筋ほど売りから入りやすく、結果的に踏み上げ相場の肥やしになってしまった」(中堅証券ストラテジスト)と指摘する。
米大統領選を前にした最初のテレビ討論で、こんなに早くバイデン氏がコーナーポストに追い詰められるような形になるとは誰も想定していなかったはずだが、マーケットがもう一つ見誤ったのは、トランプ大統領返り咲きの可能性が高まったことで株式市場全体がここまでリスクオンに振れるという現実であったと思われる。「もしトラ」という言葉自体に元来肯定的な響きはない。もしもトランプ氏が大統領選に勝利した場合、株式市場はリスクに遭遇するというニュアンスであり、これは2016年のヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の大統領選の際に生まれたスラングである。しかし、当時はトランプ氏が大統領に就任すると米国株は急上昇トレンドに突入した。空売りのアンワインドが一気に進み全体相場を押し上げる構図となった。しかし、今回は過去の実績から、「もしトラ」は必ずしも株式市場にとってネガティブではないという学習効果が働いている。
そうしたなか、トランプ氏が掲げる政策でもっともマーケットの視線を引き付けているのは他国への追加関税だ。とりわけ中国からの輸入品には一律60%超の関税をかけ、その他の国や地域からの輸入品に10%の関税をかける案を提示している。これは、物価上昇圧力となってモノのインフレを再燃させる。一方、大型減税の拡充(減税の恒久化と法人税率の一段の引き下げ)では、財政出動に伴う過剰流動性の創出がインフレ圧力の顕在化につながる。更にトランプ氏は不法移民の取り締まり強化で数百万人単位を強制送還させる案を掲げており、これは労働者需給を逼迫させサービス分野のインフレを巻き起こす。
つまり、トランプ大統領はインフレの足音とともに再登場する絵図が浮かぶ。原油市況や非鉄市況がここにきて静かに上昇傾向を見せ始めているのはそのシナリオに沿ったものだ。しかも、日本は折からの円安に歯止めがかからない状況で、これはかなりのインフレ環境に晒されることになる。一方でタカ派になり切れない日銀。これを横目に今の株高は「インフレ対策で株を買う」というロジックが底流しているようにも見える。
あすのスケジュールでは、5月の家計調査、6月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示される。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。午後取引時間中には消費活動指数、5月の景気動向指数(速報値)などが発表される。また、この日は安川電機<6506.T>の3~5月期決算発表がありマーケットの関心を集めそうだ。海外では5月のユーロ圏小売売上高のほか、6月の米雇用統計への注目度が高い。このほか、ウィリアムズNY連銀総裁がインドで講演を行う予定にある。(銀)
出所:MINKABU PRESS
7月はETFの分配金捻出のための売りが出て全体相場の上値を押さえるという見方が強かった。昨年もこのETF絡みの売り圧力が喧伝され7月上旬から中旬にかけて日経平均、TOPIXともに下値模索の展開を強いられ週足で大陰線を引いた。ところが今年は真逆の展開となっている。7月のETF分配金捻出に伴う売りは、毎年恒例ともいえる需給イベントだが、今回も7月第2週前半(来週前半)に1兆数千億円規模の売りが東京市場にのしかかるという観測があった。市場では「これ(ETF絡みの売り)を見込んで前週あたりからショートポジションを積み上げる向きが急増、結果的に売り方は強制的な買い戻しを迫られ、TOPIXの34年ぶり最高値を演出する格好となった」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。
6月は後半に入ってから前半の不調が嘘に思えるような急速な上昇トレンドを形成したが、これが7月初旬に入ってからの下げ余地を大きくするであろうという穿(うが)った見方につながった面もある。「海外ヘッジファンドの買い戻しが6月いっぱいで終了するという思惑も働いた。それもあって玄人筋ほど売りから入りやすく、結果的に踏み上げ相場の肥やしになってしまった」(中堅証券ストラテジスト)と指摘する。
米大統領選を前にした最初のテレビ討論で、こんなに早くバイデン氏がコーナーポストに追い詰められるような形になるとは誰も想定していなかったはずだが、マーケットがもう一つ見誤ったのは、トランプ大統領返り咲きの可能性が高まったことで株式市場全体がここまでリスクオンに振れるという現実であったと思われる。「もしトラ」という言葉自体に元来肯定的な響きはない。もしもトランプ氏が大統領選に勝利した場合、株式市場はリスクに遭遇するというニュアンスであり、これは2016年のヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の大統領選の際に生まれたスラングである。しかし、当時はトランプ氏が大統領に就任すると米国株は急上昇トレンドに突入した。空売りのアンワインドが一気に進み全体相場を押し上げる構図となった。しかし、今回は過去の実績から、「もしトラ」は必ずしも株式市場にとってネガティブではないという学習効果が働いている。
そうしたなか、トランプ氏が掲げる政策でもっともマーケットの視線を引き付けているのは他国への追加関税だ。とりわけ中国からの輸入品には一律60%超の関税をかけ、その他の国や地域からの輸入品に10%の関税をかける案を提示している。これは、物価上昇圧力となってモノのインフレを再燃させる。一方、大型減税の拡充(減税の恒久化と法人税率の一段の引き下げ)では、財政出動に伴う過剰流動性の創出がインフレ圧力の顕在化につながる。更にトランプ氏は不法移民の取り締まり強化で数百万人単位を強制送還させる案を掲げており、これは労働者需給を逼迫させサービス分野のインフレを巻き起こす。
つまり、トランプ大統領はインフレの足音とともに再登場する絵図が浮かぶ。原油市況や非鉄市況がここにきて静かに上昇傾向を見せ始めているのはそのシナリオに沿ったものだ。しかも、日本は折からの円安に歯止めがかからない状況で、これはかなりのインフレ環境に晒されることになる。一方でタカ派になり切れない日銀。これを横目に今の株高は「インフレ対策で株を買う」というロジックが底流しているようにも見える。
あすのスケジュールでは、5月の家計調査、6月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示される。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。午後取引時間中には消費活動指数、5月の景気動向指数(速報値)などが発表される。また、この日は安川電機<6506.T>の3~5月期決算発表がありマーケットの関心を集めそうだ。海外では5月のユーロ圏小売売上高のほか、6月の米雇用統計への注目度が高い。このほか、ウィリアムズNY連銀総裁がインドで講演を行う予定にある。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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