日本証券金融、通期の営業利益は前期比+56.2%、貸借取引とセキュリティ・ファイナンスが牽引 ROE5%目標を2年前倒しで達成

投稿:2024/06/27 15:00

1.エグゼクティブ・サマリー(連結)

岡田豊氏:執行役専務の岡田です。2024年3月期決算についてご説明します。

エグゼクティブ・サマリーをご覧ください。当社連結業績は、営業利益は前期比56.2パーセント増の99億2,800万円、経常利益は45.0パーセント増の110億2,400万円、当期純利益は34.6パーセント増の80億3,000万円となりました。

いずれも増益となった要因は、貸借取引が融資・貸株ともに増加したことに加え、債券レポ・現先取引や株券レポ取引等を中心に、セキュリティ・ファイナンス業務が引き続き好調であったことによるものです。

これにより、ROEは連結ベースで5.73パーセントとなりました。当社は2021年に「中期的な経営方針」を策定し、2025年度までのROE5パーセント達成を目標に掲げ、さまざまな経営努力を積み重ねてきましたが、これを2年前倒しで達成しました。

2.2024年3月期 通期 決算サマリー(連結・個別)

ここでは、スライド左側に当社グループ連結業績、右側にグループ各社の単体業績のサマリーを掲載しています。まずは、左側の表をご覧ください。

連結業績についてです。当社では、貸借取引業務において株式を貸し出す際、参加者から入札を行ってその株式を調達することがあります。この場合、当社が貸出先から得る品貸料は、その同額を品借料として借入先に支払い、営業費用として計上します。

したがって、品貸料の増減は営業収益の増減に影響しますが、これらは差し引きされるため、利益には影響しません。

品貸料と品借料を除いたベースでグループ連結を見ると、営業収益は前期比12.4パーセント増の425億円、営業費用は4.6パーセント増の251億6,000万円となり、差し引きで営業利益は増加となりました。

特別損益は前期比97.2パーセント減の1,800万円となっていますが、こちらは前期に計上した退職金制度の変更に伴う特別利益が剥落したものです。

3.2024年3月期 通期 日証金(単体)決算サマリー

当社単体の業績について、主なポイントを貸借取引の品貸料、品借料を除いたベースでご説明します。

まず、営業収益は前期比で13.7パーセント増の385億6,100万円、業務粗利益を示す営業総利益は31.2パーセント増の135億9,400万円となりました。

営業総利益の内訳を見ると、貸借取引業務およびセキュリティ・ファイナンス業務が大幅な増益となりました。また、その他に分類している有価証券運用は、前期に実施したポートフォリオ改善が一巡し、前期比34.4パーセント増の19億2,700万円となりました。各業務別の状況については、後ほどご説明します。

営業利益は前期比70.2パーセント増の74億7,300万円、経常利益は2.0パーセント減の100億7,000万円となりました。

営業利益が増益となっている一方で、経常利益が減益となっている要因ですが、前期にグループ内の効率的な資本配分を実現するために子会社から配当を受けましたが、当期はこちらが剥落し、連結子会社2社からの配当金額が前期比で31億3,400万円減少したことによるものです。ただし、これらは連結消去されるため、連結業績への影響はありません。

当期純利益は、前期比15.2パーセント減の78億8,500万円となりました。こちらは経常利益が減益となったことに加え、前期に計上した退職金制度変更に伴う特別利益6億7,100万円が剥落したことが要因です。

4.決算のポイント ①貸借取引残高の状況

業務別の状況についてご説明します。まず、貸借取引の状況です。

スライド下部のグラフでは、2022年度と2023年度の融資残高および貸株残高の月ごとの平均残高の推移を示しています。左側の青色のグラフが融資残高、右側の赤色のグラフが貸株残高です。それぞれ薄い色が2022年度、濃い色が2023年度を示しています。

2023年度は、株式市況の活況や金利情勢の変化に伴って資金需要の増加が見られ、第4四半期の融資残高は3,000億円を超える水準で推移し、通期の平均残高は前期比322億円増の2,869億円となりました。

貸株残高についても前年同期を上回る水準で推移し、通期の平均残高は前期比634億円増の2,524億円と、大幅な増加となりました。このため、貸付金利息、貸株料ともに増収となっています。

なお、貸借融資金利については公表方法を見直し、2024年4月より、金利変更の有無にかかわらず毎月20日に公表する方法に変更しています。なお、4月24日申し込み分より、初回の金利の見直しを行い、融資金利を0.18パーセント引き上げ、0.78パーセントとしています。

5.決算のポイント ②セキュリティ・ファイナンス業務の状況

セキュリティ・ファイナンス業務の状況についてご説明します。

2023年度にスタートした第7次中期経営計画では、「セキュリティ・ファイナンス業務の拡充強化」を戦略の1つとして掲げています。当社がこれまで貸借取引等を出発点にして培ってきた資金取引や有価証券取引に関するノウハウを有効に活用し、収益機会の拡大に取り組んでいます。

2023年度通期のセキュリティ・ファイナンス業務の状況は、全体として決済リスク管理や国際金融規制対応の観点からの担保需要の拡大などから、スライドの表の最下部に記載のとおり、営業総利益は前期比34.2パーセント増の78億5,300万円と、大幅な増益となりました。

個別で見ると、表の下から2行目の債券レポ・現先取引では、国債需給のタイトな状況が続く中、引き続き担保需要等を中心とした日本国債の運用調達ニーズを柔軟に取り込んだことが奏功したため好調に推移し、営業総利益は前期比42.2パーセント増の47億3,700万円と、大幅な増益となりました。

その他、株券レポ取引等のセキュリティ・ファイナンス業務についても、株式市況の活況や資金需要の増加、金利情勢の変化等を受け、すべて増益となっています。

6.決算のポイント ③有価証券運用の状況(日証金単体)

有価証券運用の状況についてご説明します。当社の有価証券運用は、従来、キャリー収益を積み上げ安定的に収益を上げていくスタンスで臨んでいます。

当社単体での有価証券等の運用収支は、海外金利の上昇などの環境変化を受け、前期に実施したポートフォリオ改善が一巡し、運用収支は増益となっています。

7.2024年3月期 通期 日証金信託銀行 決算サマリー

当社の100パーセント子会社である、日証金信託銀行の決算概況です。

日証金信託銀行においては、顧客分別金信託などの管理型信託サービスに注力しています。2023年度は特にアセットバックローン信託が牽引し、信託報酬は前期比13.1パーセント増の15億8,100万円となりました。

一方、資金運用残高の圧縮により金利収入が減少したことから、経常収益全体では33億5,400万円と前期を若干下回っていますが、支払利息などの経常費用も減少したため、経常利益については前期比31パーセント増の18億5,500万円となりました。

この結果、当期純利益は前期比32パーセント増の12億8,700万円となりました。

8.2025年3月期 業績試算値

2025年3月期の業績試算値についてご説明します。試算の前提とした貸借取引の平均残高は、最近の市場動向などをもとに、融資3,300億円、貸株1,800億円と想定しています。

セキュリティ・ファイナンス業務については、前年度までで大きく残高を伸ばしており、前年度ほどの大きな伸びは見込んでいませんが、有価証券運用収支の改善と合わせて、全体として中期経営計画目標の連結経常利益100億円超に沿った試算としています。

なお、第1四半期中に実施予定の日本ビルディング保有の不動産の売却に伴い、特別利益の計上を見込んでいます。これらの前提のもとで、業績試算値は営業利益を93億円、経常利益を110億円とし、当期純利益は2024年3月期比で4億6,900万円増の85億円としました。私からのご説明は以上です。

1.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組み等

櫛田誠希氏:代表執行役社長の櫛田です。最近の当社の取り組みについてご説明します。当社は2021年11月に「中期的な経営方針」を定め、そのもとで第6次中期経営計画を進めてきました。

今年からは第7次中期経営計画に基づいて、コーポレートガバナンスの強化と、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指すという2つの経営改革の取り組みを進めてきたところです。

これまでの取り組みの結果、2023年度のROEは5.73パーセントで、目標を2年前倒しで達成することができました。株価もここ数年は上昇基調で、PBRも1倍近辺、TSRもTOPIXを優位に上回る水準で推移してきています。

前提としての資本コストの考え方については、当社の株主資本コストは客観的な長期時系列データ、あるいは複数の方法によって4パーセント台半ばと計測し、取り組んできました。足元の市場環境はいくぶん変化しつつありますが、このような変化を踏まえても基本認識は変わらないというのが当社の今の考え方です。

証券金融会社として免許を受けて貸借取引業務を行っている会社のため、法令上財務の健全性維持が求められるとともに、業務範囲にも制約が設けられています。そのため当社は財務上のリスク、あるいは事業戦略リスクが他社に比べてある程度低いと考えています。

このような事業のリスク特性はリスクプレミアムに反映されると考えており、当社の資本コストの水準として4パーセント台半ばというのは自然なものという認識です。

2年前倒しで「中期的な経営方針」に掲げた目標を達成したわけですが、昨年、当社の収益見通しの試算値として、ROE5パーセントを達成できるのではないかと公表しました。

取締役会においては、当社のこれまでの経営努力が一定の成果を上げて、節目を迎えてきていることもあり、今後の当社経営に関する考え方はあらためて整理して公表したほうが良いのではないかという議論になりました。

まず2023年11月に策定・公表した、「当社が目指す経営の長期的な展望」を整理し、それに基づいて、具体的な事業戦略に基づく中期経営計画や株主還元報酬を策定します。このように2段階で考えるのが適当ではないかと議論をした上で、1つは当社が目指す経営の長期的展望というかたちで示し、そのもとで第7次中期経営計画の経営目標を修正し、合わせて株主還元方針を新たに策定しました。

1.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組み等

当社が目指す経営の長期的展望として、今後の当社の経営に関する考え方を整理して示しています。

当社が目指す将来像は「高い財務の健全性維持のもとで持続的な成長・企業価値の向上を実現する、機動性・柔軟性に富んだ特色あるユニークな企業を目指す」というものです。当社の立ち位置自体がかなりユニークで、その中で特色を活かしながら、持続的成長と企業価値の実現を図っていくという将来像をあらためて確認しました。

この長期的展望を示すにあたって、今般、コーポレートメッセージを制定しました。「Be unique. Be a pioneer. 唯一をつくる、開拓者であれ。」というメッセージです。

我が国唯一の証券金融会社として、不断に変化する環境の中で金融テクノロジーの進化を積極的に取り入れながら、市場参加者のニーズに機動的かつ柔軟に対応し、市場あるいは当社の未来を変えていく、開拓していくのです。当社のありたい姿を、この短い言葉で表現しました。

もちろん、当社がこのような方向であることを含めて対外的に示す意味もあります。それと同時に、あるいはそれ以上に、ROE5パーセント達成が見えてきた中で、社内的なメッセージとして、今後このような姿勢で経営に当たっていきたいと社外にも共有するため、このようなコーポレートメッセージを策定しました。

長期的な方向性については、今後も資本コストを意識しながら、着実な収益基盤の強化と資本効率の安定的かつ着実な向上に努めていきます。具体的には、ROEは8パーセントの水準を意識しながら、今後も着実な向上に向けて取り組んでいくとしました。

株主還元については、第7次中期経営計画の期間においては、まだ2年目で残り2年ありますが、総還元性向100パーセントを継続し、それ以降も株主還元の充実に努めていきます。

PBRについては、このような経営の努力のもとで1倍超の市場評価の定着を目指します。ガバナンス面についても、取締役会あるいは各種委員会の実効性の一層の向上や、情報開示のさらなる充実、厚みのある人的資本の形成に注力します。サステナビリティ課題にも取り組み、コーポレートガバナンスの強化に努めていきます。

このような方向性のもと、現在、実施中である第7次中期経営計画の経営目標として、ROEについては安定的に5パーセントを上回る水準を維持するとともに、さらなる向上を目指します。連結経常利益については安定的に100億円超を維持するとともに、さらなる向上を目指しています。

株主還元についても、長期的な展望を踏まえて、新たに第7次中期経営計画期間中の株主還元方針を策定しました。2023年度から2025年度までの期間において、配当と機動的な自己株式取得により、累計で総還元性向100パーセントを目指す方針を継続します。

配当については、2024年度から2025年度までの間、配当性向70パーセントを目安に積極的な配当を実施します。これは結果的に従来より高い配当性向となりますが、当社のこのような経営の考え方や取り組みをご理解いただいた上で、長期的に保有していただける株主をできるだけ増やしたいという考えから、配当性向70パーセントを目安にする方針としました。

1.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組み等

今後の取り組みとしては、第7次中期経営計画が残り2年間ある中で、計画に盛り込んだ戦略の実施に努めていきます。さらなる収益力強化を図るために、組織力、あるいは組織基盤の強化を一段と進めたいと考えています。

具体的には、経営目標の実現に向けた収益基盤の強化として、セキュリティ・ファイナンスの強化を引き続きしっかり行っていくということが柱になります。また、業務を支える内部管理体制の強化に引き続き注力し、とりわけ人材力の基盤強化に努めたいと考えています。

また、当社のさまざまな取り組みをステークホルダーのみなさまに広くご理解いただくために、情報開示の充実には一層努めていきます。

スライドの図の下部、人材力の基盤強化について一部補足しますが、ここではコーポレートメッセージの発信も含め、さらなる意識改革、行動変容を進めていくという意味が込められています。人的資本ポリシーの中では、当社が経営として進めるべき環境整備を示した上で、社員には今後どのような人材像を期待しているかということを明確にしました。

すぐに目に見える効果は期待できないかもしれませんが、このような人材力の基盤強化には、今後しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

情報開示については2022年度から統合報告書を作成し、これまでの株主のみなさまからの意見も踏まえて、その内容を充実させてきました。現在はホームページの再構築にも取り組んでおり、今後もみなさまのご意見をうかがいながら情報開示を充実させるとともに、みなさま方にとってわかりやすい情報発信の場となるよう努めていきます。

2.セキュリティ・ファイナンス業務における主な取組み

収益力強化の軸となる、セキュリティ・ファイナンス業務における主な取り組みについてご説明します。これまで市場および市場参加者のニーズに沿うかたちで取扱有価証券、あるいは取引先を広げてきました。当社としてはそのような中で増えてくる取引のリスク管理をしっかりと行います。

そのようなことに努める中で、みなさまご承知のように、市場環境の変化が見られます。欧米を主体として起こった市場環境の変化が、日銀による政策変更などからもわかるように、日本においても同様に起こってきています。

そのような中で幸いなことに、市場参加者のニーズの変化、あるいは多くの投資家からの日本株式市場への注目度が高まっています。このような環境の中で、当社としては、当社の強み、すなわち機動性・柔軟性を活かして対応していきます。

また、10年くらい前から継続してはいますが、当社の強みを活かした業務展開として海外ネットワークを充実させてきています。そのようなことに取り組む中で、当社の中立性、信頼性の高さ、厳格な事務処理能力といった強みをさらに強化しながら、セキュリティ・ファイナンス業務については一段と注力していきたいと考えています。

3.株主との対話の状況

最近の株主との対話の状況です。プライム市場上場企業として、コーポレートガバナンス・コードを踏まえて、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、前向きに対応して株主との対話の状況を開示しています。昨年度は、個別面談は27回、説明会も3回、全体で計30回実施しています。

昨年度は人的資本ポリシーや経営の長期的展望等の施策も策定・公表しており、こちらについてもご説明しました。経営戦略のここ数年の取り組みについては、多くの株主のみなさまから一定の評価をいただいています。

なお、一部の株主の方からは「人的資本ポリシー等の取り組みを今後どのように企業価値につなげていくのか?」「そのようなストーリーについてもう少し開示してもらえるとありがたい」というような声もありますので、できるだけ投資家のみなさまの理解に資するような説明に努めていきたいと考えています。

ガバナンス強化の取り組みに関しても一定の評価をいただいていますが、一部の株主の方からは「執行役・執行役員の担当職務がわかりにくい」というご指摘も受けましたので、2024年度の執行役・執行役員の選任にあたって、各執行役の担当職務をあらためて定義して、プレスリリースにおいて開示したところです。

情報開示においては、経営の長期的展望、統合報告書等の情報開示の充実に向けた取り組みを評価いただいている面もありますが、こちらもさらに注力していきたいと考えています。

4.2024年度の株主還元

2024年度の株主還元について一言付言します。先ほどもお伝えしたように、2023年度以降、2025年度までの間については、累計で総還元性向100パーセントを目指す方針を継続するとして、2024年度、2025年度については、配当性向70パーセントを目安に積極的な配当を実施する方針です。

先般、2024年度通期の業績試算値を公表しましたが、スライドの図で示しているように、2024年度の1株当たり配当金はこのような試算値のもとでの予想値となっています。

配当予想については岡田専務からお伝えしたとおりですが、現在のところ、特別利益に該当する特別配当6円を加えた年間70円を予定しています。自己株式取得は26億円です。これは配当に7割、残りは自己株式取得で、還元性向100パーセントを維持するという考え方です。私からのご説明は以上です。

配信元: ログミーファイナンス

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