ドラフト Research Memo(3):日本のオフィス環境に革命をもたらしたデザインファーム(1)

配信元:フィスコ
投稿:2024/03/19 16:33
*16:33JST ドラフト Research Memo(3):日本のオフィス環境に革命をもたらしたデザインファーム(1) ■事業概要

1. 事業内容
ドラフト<5070>は、日本のオフィス環境に革命をもたらしたデザインファームである。従来の経済合理性を重視した詰め込み型のオフィスから、人が快適に長時間過ごせる居心地の良い空間への転換を目指している。同社は、働く人々のモチベーションとエンゲージメントを高め、付加価値を生むオフィス空間のデザインに注力している。その活動は、インテリアデザインにも及び、ホテルや商業空間、コワーキングスペースなど、ライフスタイルに関わる様々な領域で新たなインテリアデザインの可能性を追求している。多数のデザイン賞を受賞し、データ活用や専門技術の向上により、ショッピング体験やフレキシブルな働き方を支える空間を創出している。

さらに、同社のデザインは建築と都市計画にも広がり、人の視点を重視したヒューマンスケールの建築、3D技術を応用した建物全体のリデザイン、サステナビリティや次世代の課題への挑戦を通じて、都市全体のデザインの範囲を広げている。同社は、インテリアや建築デザインだけに留まらず、プロダクトデザイン、ウェブサイトの設計、ブランディング戦略に至るまで、社会に関わるあらゆる領域をデザインしている。常に新たなデザインの可能性に挑み、社会をより良い場所に変えていくことを目指す総合デザインファームである。

同社の指揮を執る山下氏は、個人の作家性に拘束されることなく、時代とともにデザインを進化させ、新しい価値を創造し続けている。2022年に設立された「山下泰樹建築デザイン研究所」は、革新的なデザイン開発と注目のランドマーク設計に力を入れ、得られた知識とノウハウを業務プロジェクトに活用し、事業のさらなる拡大を図っている。この組織は、知識の体系化と継承に重きを置き、デザインプロセスの継続的な改善を通じて、約70%をデザインスタッフが占めるチームの能力を高めている。習得したデザイン技術をもとにチームを構成し、新しいプロジェクトに挑むことで、組織内に新たな知識が蓄積され、企業成長を加速させている。また、同社は独自の3Dテクノロジーと研究開発にも力を入れており、建築設計とそのプロセスの効率化を目指して、データサイエンスを駆使した新しい設計手法を探求している。フィリピンとセルビアに設立した子会社(D-RAWRITE INC.、D-RAWRITE d.o.o. Beograd)を通じて、3Dイメージパースの製作を内製化し、高品質なビジュアル化によってクライアントとの認識の齟齬を減らし、プロジェクトのスムーズな進行と受注獲得に貢献している。

2. 対象領域別事業
2023年12月期から、同社グループは、事業領域において「商業施設・都市計画・環境設計・その他」の区分を「ディスプレイデザイン・建築デザイン・その他」、「オフィス」の区分を「オフィスデザイン・プロジェクトマネジメント・その他」へ変更した。変更理由として3つ挙げている。「商業施設」のデザインを一般に認識される言葉として「ディスプレイ(デザイン)」を、「都市設計」に関しては「建築デザイン」というより具体的な表現を用いた。また、「オフィス」については、「オフィス」自体がデザインの対象範囲を示唆する言葉であるため、同社が受注する一般企業向け空間デザインの業務内容を具体的に示す形で「オフィスデザイン」と表現した。

(1) オフィスデザイン・プロジェクトマネジメント・その他
同社グループの顧客先は、不動産関連企業、一般企業、オリジナルプロダクトなどの販売代理店である。同社グループのブランドは、以前よりITをはじめとするデザインに対する感度が高い新興企業からの知名度が高いが、近年では長い歴史を持つ企業からの問い合わせも増加傾向にある。直近では、二次元コード・バーコード決済サービスを提供するPayPayカード(株)や兼松<8020>のオフィス空間を手掛けている。兼松のオフィスは、第36回日経ニューオフィス賞において最高賞となる経済産業大臣賞を受賞し、加えて、英国インテリアデザイン協会が主催する「SBID International Design Awards 2023」の2,000m2以上のオフィスデザイン部門において、アジアにおける最優秀賞を受賞し、国内外で高い評価を受けている。

a) アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)
同社グループの提案するオフィス空間のデザインには、ABWの設計思想が取り入れられている。ABWは、オランダのVeldhoen+Companyにより提唱された働き方の概念で、仕事内容に合わせて自由に場所を選び、より生産性の高い働き方を実現する設計思想である。ABWでは、「高集中」「コワーク」「TV電話」「リチャージ」など10タイプの働き方を定義し、それぞれに最適な環境づくりを目指す。同社グループのオリジナルプロダクトは、「対話」「高集中」「アイデア出し」などの働き方に対応している。

働き方改革の労働生産性向上に向けた取り組みにより、定型業務などのルーティンワークがPRAやAIに代替され、職種や業種に関わらずクリエイティブな作業に適したワークプレイスが求められるようになる。同社グループでは創業期から、クリエイティブなオフィス・空間の在り方を提案し続けており、今後は時流に対応したオフィス・空間として、より一層受け入れられるものと予測される。

b) プロダクトブランド「201°」(NIHYAKU-ICHI-DO)
同社グループはデザインに調和しつつ、ABWといった新しい働き方に対応したオリジナルプロダクト「201°」の企画・販売を2017年から行っている。人の平均的な視野と言われる200度に1度の視点を加えることで、もっと自由な視点から物づくりをしたいという考えに基づき展開している。簡単に集中スペースを創り出せるブースや、カジュアルな打ち合わせに最適なミーティングベンチを含む全18種類を発売している。どんな空間にも馴染むベーシックな色合いと、素材の質感やディテールの繊細さにこだわりがある。2018年に、米国を代表するデザイン雑誌『Interior Design』が主催する国際的なデザイン賞である「The Best of Year Award 2018」において、同ブランドの集中ブース「COOM」がプロダクト部門デスクカテゴリーにおいて最優秀賞を受賞した。

c) 「DAFT about DRAFT」
同社グループは、ファッションのように自由で繊細な発想で、長く人生をともにできるプロダクトを生み出す新しいブランド「DAFT about DRAFT」を2022年4月にローンチした。山下泰樹氏がディレクターを務め、オリジナルデザインのファニチャーや海外からのセレクトブランド商品といった暮らしに彩りを添えるアイテムを展開している。

2022年8月には東京・表参道にフラッグシップストアをオープンした。フラッグシップストアの目的は大きく2つある。1つは、クライアントに実際に家具に触れてもらうことで同社グループのプロジェクトへの使用につなげ、収益率の向上を図るためである。もう1つの目的は、表参道という好立地を生かして一般顧客との接点を設けることでブランディングを強化し、知名度を高めることである。

2023年4月には、イタリア・ミラノで開催される家具とインテリアの世界的見本市「第61回ミラノサローネ国際家具見本市」へ出展した。この見本市に出展するには、主催者側の厳しい審査基準をクリアする必要があり、同ブランド設立後1年足らずで出展できたことは異例とされる。主催者側の期待感も窺える。同社グループはこの出展をきっかけに、さらにブランディング強化を狙っている。

d) 海外受賞
上記以外にも、Wantedlyのオフィスが米国の国際デザインアワード協会が主催する国際的なデザインアワード「IDA Design Awards 2015」においてHonorable Mentionを受賞した。同オフィスは、米国Herman Millerが主催するアジア太平洋地域の優れたオフィスを表彰する「Liveable Office Award 2016」においてスモール&ミディアムビジネス部門の最優秀賞を受賞した。2017年には、米国ニューヨークで毎年開催されるデザイン分野を網羅するコンペティション「Spark Awards」にて、同社グループが設計したディップ<2379>本社オフィスがブロンズ賞を受賞した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)

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配信元: フィスコ

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