*15:31JST ギグワークス Research Memo(1):2023年10月期は日本直販の子会社化等により過去最高売上高を達成
■要約
ギグワークス<2375>は、10万人を超える登録ギグワーカー(登録スタッフ)の空いた時間やスキルに合わせて、IT関連の機器サポートやコンタクトセンターなどの多様な業務をマッチングするビジネスモデルで成長する企業である。毎月1,000社以上の企業からのオンデマンド性が高い業務(単発短期業務)に即時対応できることが同社の強みとなっている。2019年8月に「スリープログループ株式会社」から「ギグワークス株式会社」に商号変更し、次代に向けてギアチェンジをした。同社の最大の経営資源はヒトであり、女性の活躍や健康経営において先進的で内外からの評価も高い。東京証券取引所(以下、東証)2部に市場変更した2015年からはM&Aを積極化し、事業規模を急速に拡大しており、2022年7月には日本直販(株)及び(株)悠遊生活を子会社化した(同年10月に合併。以下、日本直販)。同年4月の東証市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、将来的にはさらに上を目指している。
1. ビジネスモデル
同社のビジネスモデルは、“IT関連の仕事を中心としたマッチングプラットフォーム”に特長がある。同社は“パソコン家庭教師”から出発した経緯もありIT関連(設置、トラブル対応、システム開発など)を得意とするが、現在はIT関連以外(販売、コールセンター、調査など)も増え、依頼を受ける仕事は多岐にわたる。IT関連での事例としては、パソコン(以下、PC)やタブレットのキッティング、アンテナ基地局設置、バス停工事(IoT対応)などがある。大手通信会社や大手SI(システムインテグレーション)会社、外資系PC会社など大企業からの依頼が多く、継続的なパイプを持つ。特に全国規模での短期集中(単発短期・即時対応)の依頼は同社でなければ受け手がいない場合が多く、同社の存在価値を高めている。2021年には、ギグワーカー(働き手)とクライアント企業(発注者)の間で、仕事の受発注が直接できるプラットフォーム「GiGWorks Basic」を本格稼働し、利用者が拡大している。創業以来、累計で6,255社、743万件を超えるのマッチングを行い、2023年10月期は年間5,689名が稼働した。
2. 業績動向
2023年10月期の連結業績は、売上高が前期比15.3%増の26,432百万円、営業利益が同74.9%減の111百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が718百万円(前期は232百万円の利益)となった。売上面では、デジタルマーケティング事業(通販等)のM&Aにより過去最高売上高を更新した。利益面では、オンデマンドエコノミー事業での特需案件終了やIT機器フィールドサービスの低調、デジタルマーケティング事業への事業投資等により減益となった。
2024年10月期の連結業績は、売上高が前期比7.7%減の24,400百万円、営業利益が同84.6%増の205百万円と、収益を着実に改善する予想である。主力のオンデマンドエコノミー事業では、販売支援業務やIT機器の設置設定業務などのフィールドサービスは、引き続き厳しい状況が継続する見通しである。これらの需要落ち込みをコンタクトセンター、システムソリューション、シェアオフィスなどの成長分野で補えるかが鍵となる。利益面では、IT機器フィールドサービスの回復やデジタルマーケティング事業のさらなるコスト効率化に一定の期間がかかると想定し、保守的な事業計画となったと見られる。弊社では、IT分野やサービス業の人材不足は顕在化しており、同社にとっての外部環境は好転の兆しがあると見ている。デジタルマーケティング事業での秋元康氏との新規取り組み、Web3領域の新事業などの成長と業績への寄与に注目したい。
3. 成長戦略・トピック
Web3ギグワーカーの働く選択肢の拡張例として、写真撮影でトークンを稼ぐSnap to Earn「SNPIT(スナップイット)」が好調にスタートを切った。「SNPIT」は、スマートフォンカメラを活用した画期的なGame-Fi※1体験を提供する、全く新しいSnap to Earnサービスである。ユーザーは、カメラNFTを活用して撮影を行い、それにより独自のトークン※2を獲得できる。さらに、トークンを用いてカメラの性能向上やバトルを行うことができる。将来的な発展形態としては、自動販売機・公園の遊具などの写真撮影の依頼を受け、報酬として通貨を獲得できるプラットフォームである。2023年9月には「SNPIT」のストラテジックアドバイザーに秋元康氏が就任し、同氏ならではの企画とプロモーションを進行させることで普及を図る。同年9月から10月にかけて、「SNPIT」ではNFTの販売を行い、1万個が完売するほどの人気を博した。
※1 ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた造語。ゲームにDeFi(分散型金融)の要素を掛け合わせたブロックチェーンゲーム全般を指す
※2 従来の硬貨や紙幣の代わりに使うデジタルマネー
4. 株主還元策
同社は、重点分野への積極的な投資等により確固たる競争力を早期に築くことを重要な課題と認識しつつ、同時に株主に対する利益還元についても重要な経営の課題として認識している。2023年10月期は特別損失の計上等により親会社株主に帰属する当期純損失を計上したが、年4円(前期は8円)の配当を実施した。2024年10月期の配当は年5円(前期比1円増配)、配当性向116.0%を予想する。同社は株主還元の1つの指標としてDOE(純資産配当率)を重視している。過去のDOE実績は、4.1%(2021年10月期)、4.0%(2022年10月期)、2.3%(2023年10月期)と一定水準を維持している。DOEは配当性向×ROEに分解することができ、DOEを維持・向上する政策は、2023年10月期のようにROEが下がった局面においても配当が維持され、株主還元の視点では業績下振れの影響が緩和されたと言えるだろう。
■Key Points
・2023年10月期は日本直配の子会社化等により過去最高売上高を達成。特需案件終了やIT機器フィールドサービスの低調、デジタルマーケティングへの事業投資等により減益
・2024年10月期の売上高は24,400百万円、営業利益は205百万円を予想。対面型フィールドサービスの需要落ち込みを成長分野で補えるかが鍵
・Web3技術を活用し新しい働き方を創造する戦略を推進。秋元康氏が総合プロデューサーとして日本直販に参加
・2023年10月期は損失計上も、年4円配当を実施。DOEを重視する政策により、業績下振れ時も配当を継続
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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ギグワークス<2375>は、10万人を超える登録ギグワーカー(登録スタッフ)の空いた時間やスキルに合わせて、IT関連の機器サポートやコンタクトセンターなどの多様な業務をマッチングするビジネスモデルで成長する企業である。毎月1,000社以上の企業からのオンデマンド性が高い業務(単発短期業務)に即時対応できることが同社の強みとなっている。2019年8月に「スリープログループ株式会社」から「ギグワークス株式会社」に商号変更し、次代に向けてギアチェンジをした。同社の最大の経営資源はヒトであり、女性の活躍や健康経営において先進的で内外からの評価も高い。東京証券取引所(以下、東証)2部に市場変更した2015年からはM&Aを積極化し、事業規模を急速に拡大しており、2022年7月には日本直販(株)及び(株)悠遊生活を子会社化した(同年10月に合併。以下、日本直販)。同年4月の東証市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、将来的にはさらに上を目指している。
1. ビジネスモデル
同社のビジネスモデルは、“IT関連の仕事を中心としたマッチングプラットフォーム”に特長がある。同社は“パソコン家庭教師”から出発した経緯もありIT関連(設置、トラブル対応、システム開発など)を得意とするが、現在はIT関連以外(販売、コールセンター、調査など)も増え、依頼を受ける仕事は多岐にわたる。IT関連での事例としては、パソコン(以下、PC)やタブレットのキッティング、アンテナ基地局設置、バス停工事(IoT対応)などがある。大手通信会社や大手SI(システムインテグレーション)会社、外資系PC会社など大企業からの依頼が多く、継続的なパイプを持つ。特に全国規模での短期集中(単発短期・即時対応)の依頼は同社でなければ受け手がいない場合が多く、同社の存在価値を高めている。2021年には、ギグワーカー(働き手)とクライアント企業(発注者)の間で、仕事の受発注が直接できるプラットフォーム「GiGWorks Basic」を本格稼働し、利用者が拡大している。創業以来、累計で6,255社、743万件を超えるのマッチングを行い、2023年10月期は年間5,689名が稼働した。
2. 業績動向
2023年10月期の連結業績は、売上高が前期比15.3%増の26,432百万円、営業利益が同74.9%減の111百万円、親会社株主に帰属する当期純損失が718百万円(前期は232百万円の利益)となった。売上面では、デジタルマーケティング事業(通販等)のM&Aにより過去最高売上高を更新した。利益面では、オンデマンドエコノミー事業での特需案件終了やIT機器フィールドサービスの低調、デジタルマーケティング事業への事業投資等により減益となった。
2024年10月期の連結業績は、売上高が前期比7.7%減の24,400百万円、営業利益が同84.6%増の205百万円と、収益を着実に改善する予想である。主力のオンデマンドエコノミー事業では、販売支援業務やIT機器の設置設定業務などのフィールドサービスは、引き続き厳しい状況が継続する見通しである。これらの需要落ち込みをコンタクトセンター、システムソリューション、シェアオフィスなどの成長分野で補えるかが鍵となる。利益面では、IT機器フィールドサービスの回復やデジタルマーケティング事業のさらなるコスト効率化に一定の期間がかかると想定し、保守的な事業計画となったと見られる。弊社では、IT分野やサービス業の人材不足は顕在化しており、同社にとっての外部環境は好転の兆しがあると見ている。デジタルマーケティング事業での秋元康氏との新規取り組み、Web3領域の新事業などの成長と業績への寄与に注目したい。
3. 成長戦略・トピック
Web3ギグワーカーの働く選択肢の拡張例として、写真撮影でトークンを稼ぐSnap to Earn「SNPIT(スナップイット)」が好調にスタートを切った。「SNPIT」は、スマートフォンカメラを活用した画期的なGame-Fi※1体験を提供する、全く新しいSnap to Earnサービスである。ユーザーは、カメラNFTを活用して撮影を行い、それにより独自のトークン※2を獲得できる。さらに、トークンを用いてカメラの性能向上やバトルを行うことができる。将来的な発展形態としては、自動販売機・公園の遊具などの写真撮影の依頼を受け、報酬として通貨を獲得できるプラットフォームである。2023年9月には「SNPIT」のストラテジックアドバイザーに秋元康氏が就任し、同氏ならではの企画とプロモーションを進行させることで普及を図る。同年9月から10月にかけて、「SNPIT」ではNFTの販売を行い、1万個が完売するほどの人気を博した。
※1 ゲーム(Game)と金融(Finance)を組み合わせた造語。ゲームにDeFi(分散型金融)の要素を掛け合わせたブロックチェーンゲーム全般を指す
※2 従来の硬貨や紙幣の代わりに使うデジタルマネー
4. 株主還元策
同社は、重点分野への積極的な投資等により確固たる競争力を早期に築くことを重要な課題と認識しつつ、同時に株主に対する利益還元についても重要な経営の課題として認識している。2023年10月期は特別損失の計上等により親会社株主に帰属する当期純損失を計上したが、年4円(前期は8円)の配当を実施した。2024年10月期の配当は年5円(前期比1円増配)、配当性向116.0%を予想する。同社は株主還元の1つの指標としてDOE(純資産配当率)を重視している。過去のDOE実績は、4.1%(2021年10月期)、4.0%(2022年10月期)、2.3%(2023年10月期)と一定水準を維持している。DOEは配当性向×ROEに分解することができ、DOEを維持・向上する政策は、2023年10月期のようにROEが下がった局面においても配当が維持され、株主還元の視点では業績下振れの影響が緩和されたと言えるだろう。
■Key Points
・2023年10月期は日本直配の子会社化等により過去最高売上高を達成。特需案件終了やIT機器フィールドサービスの低調、デジタルマーケティングへの事業投資等により減益
・2024年10月期の売上高は24,400百万円、営業利益は205百万円を予想。対面型フィールドサービスの需要落ち込みを成長分野で補えるかが鍵
・Web3技術を活用し新しい働き方を創造する戦略を推進。秋元康氏が総合プロデューサーとして日本直販に参加
・2023年10月期は損失計上も、年4円配当を実施。DOEを重視する政策により、業績下振れ時も配当を継続
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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