*13:41JST テノックス Research Memo(1):次期中期経営計画では企業価値の向上を実現へ
■要約
1. 国内有数の技術力と信頼を誇る基礎工事のパイオニア
テノックス<1905>は、杭工事や地盤改良工事など基礎工事に特化した建設事業を行っている。基礎工事は、住宅やマンション、工場、道路・鉄道高架橋などの構造物を目に見えない地下で支えており、「品質が良くて当たり前」という施工への信頼が大きな前提となる。近年は、大地震への備えや、頻発する大型台風・集中豪雨といった自然災害に対する防災意識の高まりなどから、一般の人にも注目される業界になってきた。なかでも同社は、業界のパイオニアとして、中低層建築物向けに広く浸透しているテノコラム工法や、高速道路などの土木工事に用いられるガンテツパイル工法を開発するなど、国内有数の技術力と信頼を誇る。同社の売上高の大半がこうした国内の基礎工事だが、子会社で土木建築コンサルティング全般等事業や海外事業も展開している。
2. 強みに裏付けられた「折り込む力」はビジネスモデルの特長
同社は、鋼管杭工事や深層地盤改良工事を得意としているだけでなく、コンクリート杭工事や浅層地盤改良工事、既存杭の引抜き工事などへと事業領域を拡大しており、工法の豊富なラインアップに強みがある。また、施工状況をリアルタイムに確認できる施工管理装置や、子会社が擁する工事技能者集団・各種機材による安定した施工品質も強みである。構造物で最重要とされる基礎工事大手として、設計業者や総合建設業者(ゼネコン)と直接的なつながりを持ち、自社で施工も行うという一貫体制にも強みがある。こうした強みを背景に、同社の技術提案が設計に反映されるケースが多く、ゼネコンからの発注も増えているようだ。これを「折り込む力」と呼び、同社のビジネスモデル上の大きな特長となっている。
3. 2024年3月期は上期の低進捗を挽回し、2ケタ増収増益を予想
2024年3月期第2四半期の業績は、売上高9,729百万円(前年同期比14.3%増)、営業利益215百万円(同8.2%減)と増収減益となった。前期に引き続き北海道新幹線延伸事業や関西インフラ関連、半導体工場や物流施設などの大型物件が寄与し、2ケタ増収となったが、鋼材価格の高騰に加え不採算工事が発生したことなどにより減益となった。2024年3月期の業績については、売上高21,200百万円(前期比15.7%増)、営業利益810百万円(同24.0%増)と2ケタ増収増益を予想している。通期計画に対する各利益の進捗率は、上期はやや低かったが、下期偏重型の収益構造であることに加え、上期に引き続き北海道新幹線延伸事業など大型物件の売上が予定されていること、営業力強化による挽回策を打っていることなどから、同社は期初予想の達成を見込んでいる。
4. 次期中期経営計画では、企業価値向上に向けてROE引き上げ施策を実行へ
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)やウクライナ情勢の影響が長期化したことにより、原材料高や円安など想定外の外部環境変化が生じた。このため、2024年3月期は期初予想を達成したとしても、中期経営計画の目標値には達しない見込みとなった。これに対して同社は、次期中期経営計画(2024年度~2026年度)において、ROE8%以上、売上高240億円以上、経常利益15億円以上といった定量目標の達成を目指す考えだ。基本戦略による利益の増加、将来のキャッシュ・フローを生み出す成長分野への投資拡大、資産の有効活用、安定した株主還元策という4つの施策を講じる計画だが、特にROE8%の達成に再チャレンジすることで、企業価値を向上させる考えである。足元で業績が回復傾向に入ってきたこともあり、目標達成が期待される。
■Key Points
・技術力と信頼を誇る基礎工事のパイオニア。「折り込む力」はビジネスモデルの特長
・2024年3月期は大型工事や下期挽回策で上期低進捗をカバー、2期連続2ケタ増収増益へ
・現中期経営計画は未達も、次期中期経営計画でROEを引き上げ、企業価値向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 国内有数の技術力と信頼を誇る基礎工事のパイオニア
テノックス<1905>は、杭工事や地盤改良工事など基礎工事に特化した建設事業を行っている。基礎工事は、住宅やマンション、工場、道路・鉄道高架橋などの構造物を目に見えない地下で支えており、「品質が良くて当たり前」という施工への信頼が大きな前提となる。近年は、大地震への備えや、頻発する大型台風・集中豪雨といった自然災害に対する防災意識の高まりなどから、一般の人にも注目される業界になってきた。なかでも同社は、業界のパイオニアとして、中低層建築物向けに広く浸透しているテノコラム工法や、高速道路などの土木工事に用いられるガンテツパイル工法を開発するなど、国内有数の技術力と信頼を誇る。同社の売上高の大半がこうした国内の基礎工事だが、子会社で土木建築コンサルティング全般等事業や海外事業も展開している。
2. 強みに裏付けられた「折り込む力」はビジネスモデルの特長
同社は、鋼管杭工事や深層地盤改良工事を得意としているだけでなく、コンクリート杭工事や浅層地盤改良工事、既存杭の引抜き工事などへと事業領域を拡大しており、工法の豊富なラインアップに強みがある。また、施工状況をリアルタイムに確認できる施工管理装置や、子会社が擁する工事技能者集団・各種機材による安定した施工品質も強みである。構造物で最重要とされる基礎工事大手として、設計業者や総合建設業者(ゼネコン)と直接的なつながりを持ち、自社で施工も行うという一貫体制にも強みがある。こうした強みを背景に、同社の技術提案が設計に反映されるケースが多く、ゼネコンからの発注も増えているようだ。これを「折り込む力」と呼び、同社のビジネスモデル上の大きな特長となっている。
3. 2024年3月期は上期の低進捗を挽回し、2ケタ増収増益を予想
2024年3月期第2四半期の業績は、売上高9,729百万円(前年同期比14.3%増)、営業利益215百万円(同8.2%減)と増収減益となった。前期に引き続き北海道新幹線延伸事業や関西インフラ関連、半導体工場や物流施設などの大型物件が寄与し、2ケタ増収となったが、鋼材価格の高騰に加え不採算工事が発生したことなどにより減益となった。2024年3月期の業績については、売上高21,200百万円(前期比15.7%増)、営業利益810百万円(同24.0%増)と2ケタ増収増益を予想している。通期計画に対する各利益の進捗率は、上期はやや低かったが、下期偏重型の収益構造であることに加え、上期に引き続き北海道新幹線延伸事業など大型物件の売上が予定されていること、営業力強化による挽回策を打っていることなどから、同社は期初予想の達成を見込んでいる。
4. 次期中期経営計画では、企業価値向上に向けてROE引き上げ施策を実行へ
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)やウクライナ情勢の影響が長期化したことにより、原材料高や円安など想定外の外部環境変化が生じた。このため、2024年3月期は期初予想を達成したとしても、中期経営計画の目標値には達しない見込みとなった。これに対して同社は、次期中期経営計画(2024年度~2026年度)において、ROE8%以上、売上高240億円以上、経常利益15億円以上といった定量目標の達成を目指す考えだ。基本戦略による利益の増加、将来のキャッシュ・フローを生み出す成長分野への投資拡大、資産の有効活用、安定した株主還元策という4つの施策を講じる計画だが、特にROE8%の達成に再チャレンジすることで、企業価値を向上させる考えである。足元で業績が回復傾向に入ってきたこともあり、目標達成が期待される。
■Key Points
・技術力と信頼を誇る基礎工事のパイオニア。「折り込む力」はビジネスモデルの特長
・2024年3月期は大型工事や下期挽回策で上期低進捗をカバー、2期連続2ケタ増収増益へ
・現中期経営計画は未達も、次期中期経営計画でROEを引き上げ、企業価値向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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