*14:21JST 日本ヒューム Research Memo(1):安全・安心、豊かな環境づくりに貢献するコンクリート二次製品の総合メーカー
■要約
日本ヒューム<5262>は、2025年に会社創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカーである。わが国の衛生環境改善に資するヒューム管(鉄筋コンクリート管)を日本国内で初めて製造し、現在でもトップシェアを有している。豊かな人間環境づくりを企業理念として、建設市場の人手不足を補うプレキャスト製品や、社会インフラ老朽化に対応する製品・施工方法開発など、社会基盤の整備を通じて豊かな環境づくりに貢献している。
1. 基礎事業、下水関連事業、太陽光発電・不動産事業を展開
同社は、コンクリートパイルの製造・販売・杭打工事などを行う基礎事業、ヒューム管などコンクリート製下水道関連製品の製造・販売、コンクリート製道路関連製品の製造・販売、下水道関連工事などを行う下水道関連事業、太陽光発電や不動産賃貸・管理・開発などを行う太陽光発電・不動産事業、下水道関連工事用機材のレンタル事業を行うその他事業を展開しており、利益面の柱は下水道関連事業である。時代のニーズに合った製品や工法を開発する技術力が強みで、カーボンニュートラルに向けた脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」など、次世代に向けた新技術・新製品の開発を強化している。ヒューム管とコンクリートパイル(杭)の両方で上位市場シェアを獲得しているのは同社のみで、同社の技術力や品質力の高さを示している。
2. 2024年3月期第2四半期は前年同期の反動で減益も、下水道関連事業の出荷・工事は下期に集中
2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比3.5%減の14,340百万円、営業利益が同37.7%減の287百万円、経常利益が同20.9%減の1,114百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同3.2%減の1,150百万円と、減収減益であった。基礎事業は売価改善などが寄与して増益であったが、下水道関連事業が前期上期に出荷・工事が集中した反動により減益となった。営業外収益では持分法による投資利益が減少し、特別利益では固定資産売却益と投資有価証券売却益を計上した。なお、前年同期比では減収減益と低調だが、当期は特に下水道関連事業において大型案件の出荷・工事が下期に集中する見込みであり、第2四半期の数値は参考として見ておきたい。
3. 2024年3月期は小幅な増収増益の予想を据え置いたが、上振れの可能性
2024年3月期の連結業績予想は期初計画を据え置き、売上高が前期比1.3%増の32,300百万円、営業利益が同5.2%増の1,300百万円、経常利益が同2.3%増の2,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.5%増の1,650百万円としている。基礎事業、下水道関連事業とも堅調に推移し小幅な増収増益の予想としている。上期の進捗率は売上高が44.4%、営業利益が22.1%、経常利益が51.8%、親会社株主に帰属する当期純利益が69.7%である。営業利益の進捗率が低水準だが、下期は基礎事業で大型下水処理施設や製造業の大型工場向けなどの出荷・工事を予定しており、下水道関連事業では大型案件を中心に官庁土木工事向けの出荷・工事が増加する見込みである。さらに売価改善の進展、高付加価値製品の拡販、原材料価格の落ち着きなどによって利益率の改善が見込まれることから、2024年3月期の会社予想は上振れの可能性が高いと弊社では見ている。
4. 中期経営計画「23-27計画R」
同社は2023年5月に、2024年3月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画「23-27計画R」を策定した。この5ヶ年を200年企業に向けた成長軌道を創るための改革の期間と位置付け、ミッションとして「継承と新化」を掲げた。経営目標値には、2026年3月期の売上高365億円、営業利益17億円、経常利益25.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益18.8億円、ROE4.5~5.0%、2028年3月期の売上高400億円、営業利益22億円、経常利益30.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益22.7億円、ROE5.0%以上を掲げた。計画期間の前半は将来に向けた研究開発や設備投資を強化し成長の土台を作り、後半は利益水準を回復するとともに、さらなる成長軌道に乗せる方針だ。主力事業は従来の基礎事業及び下水道関連事業における既存ヒューム管分野で、戦略事業は下水道関連事業における新しいプレキャスト製品群(一般的な意味でのプレキャスト製品と異なる)及びその他事業(新規事業など)と位置付けている。
5. 意欲的な中期経営計画と株主還元策の強化を評価
コンクリート二次製品を含む建設関連業界は市場成熟感が強いため、投資家の収益向上への期待感はさほど大きくないと考えられる。しかし、同社の中期経営計画「23-27計画R」では、高付加価値のプレキャスト製品群を新たな成長ドライバーと位置付けており、脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」のプレキャスト事業化などサステナビリティ経営も意識した新たな事業展開に向けた意欲が窺える。弊社では意欲的な中期経営計画「23-27計画R」を評価するとともに、株主還元策を強化(増配、自己株式取得の実施、株主優待制度の新設)している点も評価している。今後の収益拡大基調を確認するために「23-27計画R」の進捗状況に注目したい。
■Key Points
・2025年に創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカー
・利益面は下水道関連事業が柱で、次世代に向けた新技術・新製品開発を強化
・2024年3月期第2四半期は前年同期の反動で減益も、下水道関連事業の出荷・工事は下期に集中
・2024年3月期は小幅な増収増益の予想を据え置いたが、上振れの可能性は高い
・ミッションとして「継承と新化」を掲げる中期経営計画「23-27計画R」を策定
・意欲的な中期経営計画と株主還元策の強化を評価
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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日本ヒューム<5262>は、2025年に会社創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカーである。わが国の衛生環境改善に資するヒューム管(鉄筋コンクリート管)を日本国内で初めて製造し、現在でもトップシェアを有している。豊かな人間環境づくりを企業理念として、建設市場の人手不足を補うプレキャスト製品や、社会インフラ老朽化に対応する製品・施工方法開発など、社会基盤の整備を通じて豊かな環境づくりに貢献している。
1. 基礎事業、下水関連事業、太陽光発電・不動産事業を展開
同社は、コンクリートパイルの製造・販売・杭打工事などを行う基礎事業、ヒューム管などコンクリート製下水道関連製品の製造・販売、コンクリート製道路関連製品の製造・販売、下水道関連工事などを行う下水道関連事業、太陽光発電や不動産賃貸・管理・開発などを行う太陽光発電・不動産事業、下水道関連工事用機材のレンタル事業を行うその他事業を展開しており、利益面の柱は下水道関連事業である。時代のニーズに合った製品や工法を開発する技術力が強みで、カーボンニュートラルに向けた脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」など、次世代に向けた新技術・新製品の開発を強化している。ヒューム管とコンクリートパイル(杭)の両方で上位市場シェアを獲得しているのは同社のみで、同社の技術力や品質力の高さを示している。
2. 2024年3月期第2四半期は前年同期の反動で減益も、下水道関連事業の出荷・工事は下期に集中
2024年3月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比3.5%減の14,340百万円、営業利益が同37.7%減の287百万円、経常利益が同20.9%減の1,114百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同3.2%減の1,150百万円と、減収減益であった。基礎事業は売価改善などが寄与して増益であったが、下水道関連事業が前期上期に出荷・工事が集中した反動により減益となった。営業外収益では持分法による投資利益が減少し、特別利益では固定資産売却益と投資有価証券売却益を計上した。なお、前年同期比では減収減益と低調だが、当期は特に下水道関連事業において大型案件の出荷・工事が下期に集中する見込みであり、第2四半期の数値は参考として見ておきたい。
3. 2024年3月期は小幅な増収増益の予想を据え置いたが、上振れの可能性
2024年3月期の連結業績予想は期初計画を据え置き、売上高が前期比1.3%増の32,300百万円、営業利益が同5.2%増の1,300百万円、経常利益が同2.3%増の2,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.5%増の1,650百万円としている。基礎事業、下水道関連事業とも堅調に推移し小幅な増収増益の予想としている。上期の進捗率は売上高が44.4%、営業利益が22.1%、経常利益が51.8%、親会社株主に帰属する当期純利益が69.7%である。営業利益の進捗率が低水準だが、下期は基礎事業で大型下水処理施設や製造業の大型工場向けなどの出荷・工事を予定しており、下水道関連事業では大型案件を中心に官庁土木工事向けの出荷・工事が増加する見込みである。さらに売価改善の進展、高付加価値製品の拡販、原材料価格の落ち着きなどによって利益率の改善が見込まれることから、2024年3月期の会社予想は上振れの可能性が高いと弊社では見ている。
4. 中期経営計画「23-27計画R」
同社は2023年5月に、2024年3月期を初年度とする5ヶ年の中期経営計画「23-27計画R」を策定した。この5ヶ年を200年企業に向けた成長軌道を創るための改革の期間と位置付け、ミッションとして「継承と新化」を掲げた。経営目標値には、2026年3月期の売上高365億円、営業利益17億円、経常利益25.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益18.8億円、ROE4.5~5.0%、2028年3月期の売上高400億円、営業利益22億円、経常利益30.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益22.7億円、ROE5.0%以上を掲げた。計画期間の前半は将来に向けた研究開発や設備投資を強化し成長の土台を作り、後半は利益水準を回復するとともに、さらなる成長軌道に乗せる方針だ。主力事業は従来の基礎事業及び下水道関連事業における既存ヒューム管分野で、戦略事業は下水道関連事業における新しいプレキャスト製品群(一般的な意味でのプレキャスト製品と異なる)及びその他事業(新規事業など)と位置付けている。
5. 意欲的な中期経営計画と株主還元策の強化を評価
コンクリート二次製品を含む建設関連業界は市場成熟感が強いため、投資家の収益向上への期待感はさほど大きくないと考えられる。しかし、同社の中期経営計画「23-27計画R」では、高付加価値のプレキャスト製品群を新たな成長ドライバーと位置付けており、脱炭素型・長寿命化対応コンクリート「e-CON(R)」のプレキャスト事業化などサステナビリティ経営も意識した新たな事業展開に向けた意欲が窺える。弊社では意欲的な中期経営計画「23-27計画R」を評価するとともに、株主還元策を強化(増配、自己株式取得の実施、株主優待制度の新設)している点も評価している。今後の収益拡大基調を確認するために「23-27計画R」の進捗状況に注目したい。
■Key Points
・2025年に創立100周年を迎えるコンクリート二次製品の総合メーカー
・利益面は下水道関連事業が柱で、次世代に向けた新技術・新製品開発を強化
・2024年3月期第2四半期は前年同期の反動で減益も、下水道関連事業の出荷・工事は下期に集中
・2024年3月期は小幅な増収増益の予想を据え置いたが、上振れの可能性は高い
・ミッションとして「継承と新化」を掲げる中期経営計画「23-27計画R」を策定
・意欲的な中期経営計画と株主還元策の強化を評価
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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